オープンからわずか1年で月商600万円。ヒルナンデスやNHKなど大手メディアで話題になった“マグロ焼肉”がコンセプトの「マグロスタンダード」をはじめ、東京都内で4店舗の飲食店を展開する株式会社Pay it Forward。
その経営ポリシーの根幹には、SDGsの文脈で注目を集める“CSV経営”があります。CSV経営とは、社会課題の解決に向けて、経済的価値と社会的価値をともに創造する経営のこと。2023年3月には、若手飲食店経営者で構成される団体「外食SX」が主催する「CSV AWARD 2023」にて最優秀賞を受賞しています。
CSV経営の先で掲げる株式会社Pay it Forwardのビジョンは“飲食業界のニュースタンダード”を創ること。「週休3日制」や「飲食人の新たなキャリアの選択肢」など、これまでの飲食業界にはなかった画期的な取り組みも合わせて見ていきましょう。
廃棄率ほぼゼロの飲食店!?CSV経営でフードロス削減に貢献
飲食業界が貢献できる社会的価値にはどのようなものがあるのか。同社では、CSV経営に取り組むなか、“フードロス”の削減に注力しています。
飲食店では珍しい廃棄率ほぼゼロという異例の数字を叩き出すのは、門前仲町・錦糸町の2エリアで展開するマグロ焼肉のお店「マグロスタンダード」。
マグロは捨てる部分が少なく、焼肉のように焼き網で焼いて食べる提供法により、色んな部位を漏れなく提供することが可能に。また味は良くても色の劣化が早いマグロ独自の問題も同時に解決できます。
焼肉スタイル以外にも、マグロ闇盛り刺し(※内蔵3種盛り)やマグロ黒胡椒揚げなど多彩な創作メニューを開発することで、廃棄率ほぼゼロを実現しながら、利益率も向上しました。
元々、代表の宮﨑さんの実家では家業でマグロの卸業を営んでいます。また、前職で炉端焼きの経験があるため、江東橋では炉端焼きの店「マグロと炉端 成る」も展開。そのほか、武蔵小杉では「魚市場鈴治」という魚屋を運営。店内のグリル付き卸問屋直売所として、地産地消を促すとともにフードロス対策にも貢献しています。
WEBで応募する1次・2次産業の“お困りごと”を起点とした店舗展開の軌跡
同社の1店舗目となる「マグロと炉端 成る」をオープンしたのは、コロナ禍の真っ只中。InstagramをメインとしたSNS集客が功を奏し、順調に売上を伸ばしていくなか、坪月商30万円超えたのち、最高月商970万円も記録しています。
しかし、店舗経営を続けるなか、売上とは別の問題が見えてきました。
それは、取引先の漁業・農業関係者、その卸業者など飲食業界を支える1次・2次産業の事業者が、コロナ禍で危機に立たされている状況です。実家のマグロ卸業も、売上が8割減まで落ち込んだとのこと。
この危機的状況を目の当たりにした代表・宮﨑さんは、取引先に対して毎日のように「困っていることはないか」と地道なヒアリングを続けました。すると、「飲食店の営業時間が短くなったことで、翌日に賞味期限を迎える商品が増えた」、「カット野菜をつくる際に出る端材の処分がもったいなくて…」など、食べるのに問題はない食材が廃棄されている実態を知り、即座に買い取ることに。
これらのアクションもCSV経営に基づくもの。そして、次の2店舗目ではフードロス削減を目指して廃棄率を下げると同時に、取引先であるパートナーの困りごとを解決できるメニューを開発しようと、業界初となるマグロ焼肉の飲食店「マグロスタンダード」をオープンしました。
多彩なマグロ料理やサブメニューには、端材で出るネギの頭をマグロ焼肉の薬味に使用するなど困りごとを解決できるメニューを続々と考案。50品ほどのメニューの半分以上が取引先の困りごとから誕生しています。
これらの取り組みは、フードロス削減や1次・2次産業の事業者の利益創出につながると同時に、同社にとっても原価を下げて仕入れられるメリットも。さらに、これらの取り組みをお客様へ伝えることで、料理と一緒に食を通じたサステイナブルな体験を提供しています。自社、取引先、社会の三法良しの体制を構築することで、CSV経営の真価を発揮しているのです。
WEBで応募する従業員と取引先が喜ぶ“飲食業界のニュースタンダード”を創る
CSV経営の先に掲げる同社のビジョンは「飲食業界のニュースタンダードを創る」。
代表の宮﨑さんの想いを聞くと、「飲食店のイメージといえば、『労働時間が長い・休みがない・給料が少ない』の三重苦。このままでは、働き手が減るのも当たり前でしょう。
従業員に負担がかかる原因は、売上の10%ほどしか残らない飲食業の利益構造にあると考えています。そこで当社では、原価率25%を基準とした店舗経営を目指しています」。
実際に、新業態の話題性、高付加価値による自由な価格設定、低価格での仕入れなど、独自の取り組みで高水準の利益率を実現する同社。
その結果、月給26万円〜50万円と業界内でも高い給与を維持しながら、月11日休みの完全週休2日制を採用できています。2024年には月12日休み、週休3日制の導入も進めているところ。
さらに、従来は「独立」か「経営幹部」の2つの道しかなかった、飲食人のキャリアプランに新たな選択肢を創出する企みも。例えば、過去に会社で受注した飲食店のプロデュース案件では、料理が得意な従業員にレシピ考案を依頼しながら、売上の半額を担当者へ支払ったという。
このように従業員はスキルを磨き、会社は店舗運営業務以外でバリューを発揮できる機会を生み出すことで、各々が自由なキャリアを目指しながら今以上の収入が得られる環境づくりを大切にしています。
1人ひとりがもっと自分らしく働けるように、希望者にはプロのコーチングレッスンの機会を与えたり、週に1度は全社員で話せる時間を設けたりするほか、面談、勉強会、他店舗の視察など従業員の目標設定やスキルアップにつながる豊富な研修制度も導入済み。これだけ自由な社風だから、もちろん副業も自由です。
「今後は店舗展開と同時にFC展開も進めながら、飲食業界で注目される人物になることで、影響力を高めていきたいです。より働きやすい環境をつくるために、DX化も図りながら人材不足などの社会課題にもチャレンジします。全ての基準は、同社が目指すCSV経営に則っているかどうか。次に目指すフェーズは、CSV経営の推進により、1次・2次・3次産業それぞれの関係性を曖昧にすることで、共創・共生できるエコシステムの構築を目指したいですね」。
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