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インタビュー

馴染みあるモチーフを繊細な作品に。趣味の切り絵と介護職を両立するきなこさんインタビュー

SNSの使い方が多様化するにつれ、自分で描いたイラストや撮影した写真などを発表する方が増えています。作品のクオリティの高さやジャンルの幅広さも徐々に増しているようです。

今回取材したきなこさんもそんな中の一人で、趣味で切り絵アートを始め、SNSで公開して順調にフォロワーを増やしています。

きなこさんの切り絵の特徴は、誰もが馴染みのある食品パッケージや芸能人の顔、人気キャラクターなどをモチーフにしていること。

さらに、向こうが透けて見える切り絵の特性を生かし、風景などの写真を背景にして一つの作品としているところも魅力です。

繊細な切り絵アートの創作を通じて感じていることや、本業の介護のお仕事についても伺ってみました。

●プロフィール
きなこ
・介護福祉士として福祉施設に勤務する傍ら、2021年から切り絵アートをSNSで公開しはじめる
・様々なモチーフを巧みなカットで表現した作品が注目され、2022年4月現在、Instagramのフォロワー数は1.7万人と人気アカウントに

きっかけは職場での飾りつけ作りだった


本業の介護福祉士の傍ら、趣味として切り絵アートを作っているきなこさん。
SNSで公開するようになったのは昨年からということですが、それ以前にも切り絵には親しんでいたのでしょうか。

勤めている福祉施設で飾りつけを作る機会があって、ふと切り絵をやってみようかなと思って作ったことがあったんです。

切り絵を作ったのはその時が初めてでしたが、昔から図工の工作や絵などは得意な方でした。

先生に指示されたものをさっさと作って、残りの時間で勝手に自分が作りたいものを作ったりするような子供でした。作ったものを見た先生や同級生から「すごいね」と言われることもありましたね。

職場での飾りつけ作りをきっかけに、趣味として作った切り絵をSNSで公開するようになりました。

SNSを始めた時、最初に作ったのはカップ麺の「どん兵衛」。切り絵にしてみたら面白そうだなと思ったんです。

和風なテイストのデザインが切り絵に向いてそうだったのと、誰でも見たことがあるものだから、見た人が喜ぶかもしれないと考えて。実際にやってみると麺の写真のところを切るのがすごく難しかったんですが。

モチーフのリクエストをもらうことも多い

食品パッケージや芸能人など、誰でも見たことのあるモチーフが採用されていることもきなこさんの作品の魅力の一つだと思います。
切り絵のモチーフの選び方や制作時間についても聞いてみました。


当初は一つの制作に大体2時間くらいかかっていましたが、現在は慣れてきて30分程度でできるようになりました。

作業に慣れてきたというだけでなく、切りやすいものとそうでないものを見分けられるようになってきたのも大きいですね。最近は切りやすそうなモチーフをチョイスするようにしています。

モチーフやテーマについては、最初はどん兵衛をきっかけに色々な食品パッケージの切り絵を作っていたのですが、切りたくても難しくて切れないものが出てきました。

また、見てくれた人からのリクエストもあり、食品パッケージから人物の切り絵に移行していきました。

その時々でテーマを設け、例えばアイウエオ順で「明日はアから始まる名前の人を作ります」と言ってフォロワーさんからそれに当てはまるリクエストを募ったり、ある時は都道府県別にテーマを設けてリクエストを募ったり。

もちろん、自分で思いつくこともありますが、そんな風にテーマを作って募集する企画のようなことをやったりもしていました。

最近はそういったテーマは考えてないんですが、今なんとなく続けているのはジブリのキャラをインスタのアイコンに使えそうな切り絵にすることです。

リクエストに答えて、その方の苗字も入れたものを作っています。それを実際にアイコンとして使用してくれたりしているようですね。


リクエストはこちらから募ることもあれば、フォロワーさんからコメントやDMでいただくこともあります。

現在はリクエストが増えてきたため、答え切れていない状態になっていて申し訳ないんですが…。

最近はリクエストに答えて切るのが中心になってきていますが、自分で急に思いついて切りたくなったものを切ることもあります。

写真の趣味と切り絵作りが重なった

向こうが透ける切り絵ならではの特性をうまく生かされているなと思ったのが、背景写真との組み合わせ。
綺麗な空の写真だったり、家の中や電車など日常の風景の中にジブリなどのキャラクターがまるでそこにいるかのように組み合わされていて、とってもセンスを感じます。


確かに、切り絵を風景と重ねてる人はあんまりいないと思います。きっかけとしては、葉っぱの切り絵を空と重ねて撮っている人を見つけて、それを真似するところから始まりました。そこから派生して電車の中にキャラがいるなどのアイデアも出てきたんです。

背景に使う風景などの写真は自分で撮ったり、またはネットで拾った写真を加工して使うこともあります。

実際の景色をバックに切り絵を持って撮ることもあるんですが、風で切り絵が揺れてしまうので撮りにくいんですね。なので、撮影した写真に切り絵を重ねて撮影することが多いです。

以前から写真を撮ることも好きで、一眼レフを持っています。切り絵を撮る時はカメラは軽い方がいいのでiPhoneで撮ることが多いんですが、写真好きの趣味が切り絵の趣味と重なったので、写真をやっていて良かったなと思っています。

以前から職場で入居者の方を撮ることが多かったのですが、風景なども撮っていました。前に撮った風景画像が最近作った切り絵と偶然マッチすることもあるし、こういう背景を使いたいと思ってそのために撮りに行くこともあります。

手先に集中することで気分転換になる

キャラクターや人物など難しそうなモチーフをたくさん作品にされていますが、作り方はどのように行われているのでしょうか。

最初は紙に線を書いて切るやり方でしたが、現在は素材をプリントしたものを黒い紙と重ねてホチキスで止めて切っていくやり方に変わりました。


この方法は自分で思いついたのですが、これなら誰でもできます。制作時間が大幅に短縮されたのはこのやり方を始めたこともかなり影響していると思います。

道具については、最初は普通のカッターを使っていたんですが、趣味として切り絵をやっていこうと思ったタイミングでデザインナイフという切り絵用の道具を使うようになりました。専用の道具なので、カッターとは切れ味や使いやすさが全く違いますね。

切り絵は手先を使って集中する作業なので、モヤモヤがある時などにもすごく気分転換になります。

達成感がありますし、フォロワーの方から褒めてもらえるのも嬉しくてやりがいを感じています。簡単に始められるので、興味のある方は気軽にやってみて欲しいですね。

意外と夜勤明けの時とか、疲れてる時にやると不思議と集中力が出てきたりして元気になるんですよ。夜勤中からアイデアを考えていて、帰宅するなりやってみたりしています。

失敗することもよくあって、そういう時はグチャグチャに丸めて捨てちゃったり(笑)。

祖父と祖母に可愛がられた幼少期

忙しい日々の中で切り絵が良い気分転換になっていると語ってくれました。そんなきなこさんの本業についても気になりますよね。
なぜ介護の仕事をされているのかなど、きっかけからお聞かせいただきました。


幼少期は体が弱かったので病院に行く機会が多く、小さい頃はぼんやりと看護師になりたいと思っていました。

中学生の頃に腕を骨折して入院したことがあったのですが、同じ病院に入院していたおばあさんのことが印象に残っていて。

その方はおそらく認知症で、毎晩夜中になると看護師さんに「孫が迎えに来るから帰るんだ」と言っているのを聞いて、他人ながら、おばあちゃん子だった自分は切ない気持ちになりました。

きっと介護士さんならこんな時に相手を納得させるような対応ができるんだろうなと思い、そこから介護士の仕事に興味を持つようになったんです。

祖父、祖母と一緒に暮らしていて、兄弟の中でも特に可愛がってもらっていたので、おじいちゃん子、おばあちゃん子だったんです。その環境も大きく影響していると思います。

入院をきっかけに介護士への興味を漠然と持っていたある時、知人の繋がりで福祉施設にボランティアに行く機会がありました。1時間、そこに入居している認知症の方とコミュニケーションを取るように言われたのですが、何もできず落ち込んでしまって。

やっぱり自分に介護士は無理かもと思いました。

でもそこの入居者の方に「頑張ってね」と声をかけられて、「頑張ります」と安易に約束してしまったことから、本当に介護の道を目指すようになりました。

話せない人でも、気持ちは表情で伝わる

ボランティアでの経験をきっかけに介護士を目指し、学校を卒業してからほぼずっと介護の仕事をしているそうです。
今の職場に勤務してからは10年以上になるそうで、長く続けられている理由についても伺いました。

一時期、介護以外の世界も知りたいなと思って、電化製品の異常がないかチェックするという全く異なる仕事をしていたこともありました。

でも、やっぱり今の仕事が好きですね。ベタですけど、相手に喜んでもらえたり、ありがとうと言われたり。自分のやったことがダイレクトに返ってくる仕事なんです。

例え話せない人でも、気持ちは表情で伝わってくる。そこがモチベーションの維持につながっていると思います。

最近では、コロナで外出がしづらい状況が続いているため、桜を見に少し散歩に行っただけでもすごく喜んでもらえたこともありました。高齢の方にとっては来年の桜を見られるか分からないという気持ちがあるからだと思います。

また、介護ではイレギュラーな事態が日常的に起こるんです。

普段喋らない方が突然自分にだけ話しかけてきて、笑ったりして、喋れたんだ!って驚いたり。

びっくりするようなことがよく起きるので、自分としては飽きない仕事ですね。そこも長く続けられている理由の一つかもしれないです。

介護はイメージほど難しくなく、やりがいもある

福祉というと人手不足であったり、体力的にも大変そうな仕事だというイメージがありますが、だからこそ感謝されたりした時に喜びややりがいを感じられるのかなと思いました。
最後に、今後の目標や、介護の世界に興味を持つ方へのメッセージもいただきました。


どんな仕事も大変だと思うので、介護を特別に大変な仕事とは思っていません。ただ、体の不自由な方もいらっしゃり、事故が起きたり、命に関わることもあります。

また、人手不足であることも課題の一つです。それを解消するべく、外国人や高齢の職員を教育することが増えました。

そこは正直大変さを感じますね。日本語が分からない外国人に教える難しさだったり。

一時期、60歳以上を積極採用する時期があったのですが、やっぱり体力的に難しい部分がありました。年齢が入居者とあまり変わらなかったりするので。

かと言って、日本人の若い方の採用にこだわっているとみんな休めなくなってしまいます。

現在は外国人の方たちが戦力として頑張ってくれていて、助かるなと感じるようになってきています。

日々高齢の方と接している中で、自分自身が高齢者になったら、こうなりたいなという目標があるんです。

まず歯は全部なくなりたい。歯がないとフガフガ話す感じで可愛いんです。

あとはスケベな老人にならないこと。何歳でもそういう方はいっぱいいるので(笑)。

そしてできる限り自分のことは自分でできるよう、体力が維持できるように健康管理しないといけないなと思います。

私は元々すごく疲れているということが少なく、タフな方だと思います。

介護は大変そうなイメージですが、今の勤務先はわりと優しい職場で残業とかもそんなに多くないんです。だから趣味と両立できているのかもしれません。

意外とイメージより簡単だと思いますし、やりがいもあります。

興味がある方は難しく考えないでやってみて欲しいですね。指導もちゃんとしていて、怖い人もそんなにいないと思うので(笑)、ぜひ試してもらいたいですね。

また、切り絵についての目標もあります。それはオリジナリティーのあるものを作ることです。

自分の個性を見つけ出せたらいいなと。あとはもっとサイズが大きいものも作ってみたいですね。

他にも植物を育てたり、熱帯魚も好きだったり、色々趣味はあって、一度ハマると熱中するタイプです。

その中で切り絵はこんなに続くとは思っていなかったんですが。SNSも今のようにちゃんとやり出したのは切り絵がきっかけでした。今後も色々な作品に挑戦していきたいです。

きなこさんのリンク集
Instagram:@kinako_1213
Twitter:@kinako1213kirie

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Written by

トヨダヒロミ

トヨダヒロミ

大阪府出身。雑誌や広告を制作する編集プロダクションに約7年勤務したのち、フリーライターに。インフルエンサーなどの新しい肩書きや働き方に関心を寄せている。

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