食品メーカーは、規模も事業内容もさまざまです。営業職の仕事内容も企業や製品によって異なるので、転職するときは求人情報をきちんと見極めましょう。
ここでは、食品メーカーの営業職の代表的な仕事内容を紹介するとともに、仕事のやりがいや苦労する点などを解説します。
食品メーカーとは?
食品メーカーという言葉をニュースなどで聞いたことはあっても、実際にどのような仕事をしているメーカーなのか、よく理解できていない人も多いでしょう。食品メーカーへの就職・転職を考えているのであれば、具体的な仕事内容をしっかり把握しておく必要があります。
ここでは、食品メーカーの主な事業内容について解説します。
材料を調達して加工食品をつくる
食品メーカーとは、人間が生きていくうえで必要な食品を作り出す企業のことです。食品は生鮮食品と加工食品の大きく2つに分けられます。生鮮食品とは野菜や果物、精肉や鮮魚などのことです。
加工食品は、食料品を加工した商品のことを指します。具体的には調味料やパン、お菓子や冷凍食品などです。国内外から材料を調達して加工食品をつくり、スーパーなどの小売店に売るのが食品メーカーです。
事業内容や規模は企業によって異なる
一口に食品メーカーといっても、事業の内容や規模は企業によって異なります。アサヒグループホールディングスや味の素グループなど、売上1兆円を超える大規模な食品メーカーもあれば、数人で食品を作っている家内工業的なメーカーも存在します。
麺や醤油など1つのカテゴリーに特化したメーカーから、さまざまなカテゴリーを扱う総合的なメーカーまで、取り扱い食品も企業によってさまざまです。
食品は市場の規模がとても大きいため、地域性のある商材も存在します。全国的な知名度は低くても、特定の地域で勢いのある食品メーカーも多数あるのです。
食品メーカーにおける営業職の仕事内容
食品メーカーの営業は、自社商品を卸売店や量販店などに売り込んだり、飲食店に販売したりすることが仕事です。 食品業界には複数の流通経路があるため、商品を販売する流通経路によって営業の仕事も異なります。
ここでは、食品メーカーの営業職が行う主な3つの仕事内容について紹介します。自分がどの仕事に向いているのか考えてみましょう。
卸売店への営業
卸売店への営業は、食品を取り扱う卸売業者の仕入れ担当者を回って、自社商品の発注をしてもらう仕事です。営業職は担当者との信頼関係を構築して、自社商品の発注を促していきます。卸問屋はメーカーから商品を仕入れて、その商品を小売店に対して販売します。
担当者との良好な関係を築いて発注してもらうためには、商品の陳列を手伝ったりサンプルを使った商品説明をしたり、展示会や試食会などを開催するなど、さまざまな営業努力が必要です。多種多様な手法で競合と差別化を図りながら、営業が仕事に取り組みます。
飲食店への営業
飲食店への営業では、レストランや居酒屋などの飲食店に直接食品を販売します。一口に飲食店といっても、複数の店舗を全国展開している飲食チェーン店もあれば、個人で経営している小規模な飲食店まで、その規模はさまざまです。
大規模な飲食店をターゲットにする場合はビジネスライクな付き合いもできますが、小規模な飲食店をターゲットにする場合は、オーナーと信頼関係を構築できるかどうかが重要なポイントになります。
いずれの場合も地道で丁寧な交渉が必要ですが、毎日顔を出すうちにプライベートで一緒に食事に行くほど懇意になることもあるようです。
量販店への営業
量販店向けの営業では、顧客の目につきやすい場所に自社商品を置いてもらえるように、食品を取り扱う量販店に交渉するのが仕事です。
スーパーやコンビニなどの量販店向けの営業では、店側ではなく顧客目線でのアプローチが必要です。量販店側も、顧客に売れない商品をわざわざ仕入れません。自社の製品が顧客に売れる商品だと認識してもらうためにどうアプローチしていくかが、営業の腕の見せ所といえるでしょう。
もっと売れるようにするための棚割りの提案や、特価での販売交渉、店頭ポップや旗竿などの利用促進をするなど、営業は量販店に対してさまざまな働きかけをしていきます。
また、量販店などは土日も稼働していることが多いため、営業も休日出勤をして商談に対応する場合もあるでしょう。
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食品メーカーの営業職の平均年収
求人ボックスによると、営業に限った話ではありませんが、食品メーカーの平均年収は368万円です。
国税庁の民間給与実態調査では、令和2年(2020年)における給与所得者の平均年収は433万円となっており、食品メーカーの給与水準は平均より低いと判断できます。
しかし、大手企業となると話は別です。有価証券報告書によると、味の素グループの平均年収は約1,046万円です。
職種ごとの内訳が出ているわけではなくても、企業にとって利益を生み出す営業職の年収は同程度、もしくはそれ以上と推察できます。
また、サントリーホールディングスの平均年収は約1,140万円で、高年収な企業の一つです。大手二社の年収と求人ボックスの平均年収に乖離が見られるのは、高収入は一部トップクラスの企業だけだからだと考えられます。
食品メーカー営業職のやりがいは?3つのメリット
営業職の仕事は多岐にわたるため、日頃からさまざまな努力をしています。毎日の仕事は忙しいですが、その分、営業職としてのやりがいや達成感を感じられる場面も多いでしょう。仕事の大変さとやりがいは表裏一体であって、苦労した後には喜びや幸福感が待っています。
ここでは、食品メーカーの営業職として働くメリットや、仕事で感じるやりがいなどを紹介します。
1.自社製品が販売されたときにやりがいを感じる
営業にとって大きなやりがいを感じられる瞬間は、担当店舗に自社製品が並んでいるのを見たときです。食品業界は市場規模が大きく他社との競争も激しいため、陳列棚を勝ち取って自社製品が販売されたときの達成感や喜びは、営業職にとって大きなやりがいとなります。
小売店やメーカーなどには、多数の競合他社が営業をかけてきます。激しい競争に勝ち残って自社商品を販売してもらうには、さまざまなハードルを越えなければなりません。苦労が多ければ多いほど、自社商品がスーパーやコンビニに並ぶのを見たときに、大きな達成感が得られるでしょう。
2.イベントが成功したときに達成感を得られる
新商品を発売する際には、営業職が販促イベントを企画して提案することもあります。プロモーションイベントの企画には準備に時間がかかりやすいですが、それだけにイベントが成功して商品の売上が伸びたときは、喜びもひとしおでしょう。
新製品の販売促進につながるイベントは重要な営業手法であり、顧客とのふれあいの場にもなります。企画の内容次第で売上が大きく向上することもあるため、営業職の責任は重大です。消費者の関心を引くイベントを企画するだけでなく、イベントを催す店側にもメリットを感じてもらえるような企画を考えなければなりません。
通常の業務に加えて、手間のかかるイベントの企画まで担当するのは大変です。イベントの開催に向けて苦労した結果、成功して売上が上がったときの達成感ややりがいはこの上ないものとなるでしょう。
3.メディアからの反響を得られる
小売店や飲食店などに対して営業活動をすることも大切ですが、それだけでは販売を促進することはできません。大きな効果を得るためには、多くの人が日頃目にしやすいメディアに取り上げてもらうことが大切です。
自社製品の魅力がテレビや雑誌、インターネットなどの各メディアに注目されれば、販売促進のうえで大きな効果を得られます。メディアからの反響を得ることは営業職にとっても大切なことであり、喜びでもあるのです。
商品の知名度が上がれば、店頭などで商品を目にする機会が増えます。扱っている商品を普段の生活で認識できるようになれば、自分が社会で果たしている役割を確認できるため、大きなやりがいにつながるでしょう。
食品メーカーの営業職はつらい?3つのデメリット
営業職の仕事は楽しいことばかりではありません。ときには「つらい」と感じることもあるでしょう。転職したあとに「イメージしていた仕事と違う」というミスマッチを防ぐためには、営業職のメリットだけでなくデメリットも把握しておくことが大切です。
ここでは、食品メーカーの営業職が苦労しがちなポイントを見ていきましょう。
1.体力を使う仕事がある
営業職の仕事は商品のセールスだけではありません。自社商品の運搬や商品陳列などの体力を使う仕事もあります。メーカーによっては営業が配送業務を兼任することもあるでしょう。
倉庫で商品を積み込んで配達するだけでなく、商品の提案から注文の獲得までひと通りこなさなければならず、体力的にかなり厳しい仕事です。
営業の仕事はノルマに追われるのが厳しいといったイメージを持たれがちですが、食品メーカーの営業の場合、必ずしもノルマが設定されるわけではありません。そのため、精神的な辛さを感じない人もいます。
一方で体力勝負の仕事が多いため、もともと体力がない人には大変、辛いと感じてしまうでしょう。
スーパーマーケットを顧客に持っている営業では、店頭の棚への商品陳列や置き場の配置変えなどを日常的に行っています。試食会などのイベントでも商品の運搬を行うことがあり、体力を使う力仕事は多いです。
2.クレームへの対処が必要になる
商品を売った後のクレームに対応するのも営業の仕事です。乳製品や牛乳、豆腐、納豆などの「日配食品」は賞味・消費期限が短いため、他の食品よりもクレームが発生しやすい傾向にあります。日配食品は毎日のように商品を配送するので、欠品のコントロールにも負担がかかります。
メーカーに起因しないクレームも多いですが、それでもクレームがあった場合には、営業職が初動で対処することが基本です。状況確認や聞き取りだけでなく、現物回収から再配送の依頼まで営業職が対応します。卸売店や小売店など、法人顧客からのクレームに対応することも営業の仕事です。
商品を顧客に販売するという本来の仕事ではなく、アフターフォローに手間がかかりやすいのは、デメリットの一つだといえます。
3.売上を常に意識する必要がある
営業職は常に売上を意識しながら仕事をしています。食品を取り巻く社会情勢や食品の置かれている環境など、売上に影響するようなことに常にアンテナを張って、関心を持たなければなりません。
飲食店巡りをしたり、試食会などのイベントで販売促進を図ったりするなど、さまざまな方法を用いて売上を上げる努力を行います。
大変ではありますが、その分、食品の売り上げが向上したときは大きなやりがいを感じられるでしょう。今までの苦労が報われたときの達成感は、頑張った本人しか味わえないものです。
食品メーカーの営業職に向いている人の特徴
転職後のミスマッチを防ぐには、自分が営業職に向いているかどうかを事前に把握しておくことも大事です。仕事への興味があることはもちろん、周りとの関係を大切にして日々の仕事に誠実に取り組む姿勢が求められます。
ここからは、食品メーカーの営業職に向いている人の特徴を3つ紹介します。自分がこの仕事に向いているのかどうか、確かめてみましょう。
食に興味がある人
食について興味ある人なら、消費者の立場になって気持ちを理解できるため、営業活動を効率よく進められます。味や素材、調理方法などにこだわりを持って美味しさを追求する姿勢がある人には、最適な仕事だといえるでしょう。
顧客との取引の付き合いで食事をすることもあるので、食べることが好きな人にもおすすめです。仕事をしながら食品に関する知識も身につくため、仕事に対するモチベーションも保ちやすいです。
食品だけでなく、食品表示や食品衛生などに関する法令なども遵守する必要がありますが、食品に関する幅広い知識は自分自身の財産になります。幅広い知識を得たことによって、さらに自信をもって自社商品の説明ができるようになるでしょう。
業務に真面目に取り組める人
自社商品が店頭に並んで実際に販売されるまでには、多くの苦労が伴います。一朝一夕で得られる成果ではないため、コツコツと日々努力を積み重ねていける人や努力できる人が向いているでしょう。
特に食品業界は安全性に厳しいため、コンプライアンスを遵守できる人、業務に真面目に取り組める人が必要とされています。誠実な人柄を感じさせる人なら、さまざまな顧客に歓迎されるでしょう。
相手の気持ちや要望を察知できる人
食品メーカーにおける営業のメインの仕事は、小売店へのセールスです。自社の商品を購入してもらうには、相手の気持ちや要望を察知しなければなりません。相手が何を求めているかなど、気持ちを汲み取って営業活動を進めることが大切です。
商品を販売するために、ただ売り込むだけでは結果は出ません。現場で求められるのは、営業として相手への気遣いができる人です。
食品メーカーの営業職に転職するポイント
食品メーカーに転職するときは疑問がつきものです。未経験や女性でも転職できるのかどうか、福利厚生や待遇は良いのかどうかなど、不安や心配になることも多いでしょう。
ここでは、食品メーカーの営業職に転職するために注目すべきポイントを解説していきます。事前に不安を解消して、転職活動を有利に進めていきましょう。
未経験・女性でも転職しやすい
食品業界は人手が足りていない企業も多いため、未経験でも転職できる可能性は十分にあります。他業界であってもメーカー営業をしていた経験があるなら、その経験を活かして食品メーカーで活躍することも可能です。
食品メーカーの消費者は女性であることが多いため、比較的女性の感性を活かせる職場でもあります。比較的残業が少ない仕事なので、家庭との両立もしやすいでしょう。
求人情報を見極めることが大切
食品メーカーは企業数が多いため、求人情報を見つけること自体は簡単です。自分にとって働きやすい職場に転職するには、求人の質を見極める作業が必要といえます。
食品メーカーの営業は、あらかじめ営業先が決まっているため、他業界の営業よりも比較的ゆったりと働ける場合が多いです。しかし、求人選びを間違えると営業でも激務になることがあります。食品メーカーが運送会社や商社に物流を委託しているかどうかは、事前にしっかり確認しておきましょう。
また営業の待遇は、会社の事業規模や営業方針によって大きく異なります。商品ブランド力のある大手企業は福利厚生が充実していることが多いですが、零細の食品メーカーは待遇が良くないケースもあるのです。
給料も会社の業績に影響を受けるので、なかには年収が充分とはいえない中小零細企業も存在します。転職してから後悔することがないように、求人内容をよく吟味したうえで判断することが大切です。
食品メーカーへの転職に役立つ資格4選
食品メーカーへの転職に役立つ資格には、認知度が高く、汎用的な知識が身に付く食品表示検定や、食の専門家を目指せるフードアナリストが代表的です。
また、品質管理に特化したQC検定や、貿易実務のスキル向上に役立つ貿易実務検定もあります。
1.食品表示検定
一般社団法人食品表示検定協会が主催する、食品の製造や流通に関する知識が体系的に身に付く資格です。試験はレベルごとに初級・中級・上級と分かれ、上位試験合格者のなかには有名・大手企業で開発や品質保証部に務めている方もいます。
食品表示検定は食品業界の数ある資格のなかでも認知度が高く、就活でのアピールに適しています。栄養成分や原材料などの基礎知識に加え、コンサルタントや品質保証責任者向けの実用的なスキルも学べる資格です。
2.フードアナリスト
一般社団法人フードアナリスト協会が運営する料理の歴史や食文化、法律などを総合的に学べる資格です。
本資格の学習によって網羅できる分野は非常に広く、取得によって食のスペシャリストを目指せます。具体的には、サービス・マーケティング・レストラン運営・インテリア・食を通じたコミュニケーションなどです。
資格取得者の活躍先も、Web・紙媒体のフードライター・企業のマーケティングや商品開発部門・レストランのミステリーショッパー(覆面調査員)など多岐に及びます。
3.QC検定
品質管理検定運営委員会による、品質管理に関する知識を測る資格です。1級から4級まで品質管理のレベルや種類ごとに級が分かれており、多くの方に門戸が開かれた資格だといえるでしょう。
品質保証・製造系のポジションへの転職であれば、食品業界に限らず役立つ可能性がある資格です。2級以上では統計学や数学的な知識やまで求められるため、管理職や部署の責任者レベルなど上級職向けとなっています。
受験資格に制限がないため、実務未経験者や学生の方が気軽に受けられるのも魅力です。
4.貿易実務検定
日本貿易実務検定協会が認定する、貿易実務に関する実力を測る資格です。いまや輸入や輸出で利益を得ているメーカーは少なくないため、転職に大いに役立ちます。とくにメーカーの輸入部門や輸入商社を目指す場合、重宝する資格です。
貿易実務検定は、A級からC級の3ランク制。C級では定型的な業務をこなすための基礎知識、B級は実務中級者としての知識、A級では主に管理職が担当する判断業務に関する知識を取得できます。
物流の知見も得られるため、小売や卸売へ商品を流す際の取引の流れがイメージしやすくなるのもメリットです。
食品メーカーの営業職への転職を成功させよう
食品メーカーの営業は、自社の商品が商品棚に並んだりプロモーションイベントが成功したりしたときに大きなやりがいや達成感がある仕事です。食に関して興味のある人なら、楽しみながら仕事を続けられるでしょう。
食品メーカーと一口いっても、事業内容や事業規模はそれぞれ異なります。営業の仕事もさまざまなので、転職する際は業務内容をしっかりと確認することが大切です。
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