プラント設備の製作から工事、メンテナンスなどを一貫して施工する株式会社ソルテック工業。実はこの会社は、従業員数120名のうち60名が日本語非ネイティブの外国人従業員です。
とくに多いのが、ベトナム出身の従業員。ベトナム法人があるので現地採用も積極的に行い、人材育成に努めています。
そんなベトナム出身の人材のひとりが、日本で働きはじめてまもなく2年になるレ ヴー フンさん。今回は、レ ヴー フンさんと人材事業の責任者である佐々木優輔さんに、社内の様子や多様な国籍の人たちと働くことなどについてインタビューしました。
LE VU PHUNG(レ ヴー フン) 技術・設計グループ
・1994年9月9日 / VIETNAM, BINH DINH出身
・2017年1月ホーチミン工科大学卒業
・ホーチミンの台湾系建設会社に勤めたあと日本語学校入学
・2019年1月日本語学校卒業
・2019年10月株式会社ソルテック工業入社
・TOEICスコア660、日本語能力試験N2認定
佐々木優輔(ささき ゆうすけ) 新規事業グループ
・1985年5月16日生 / 広島県出身
・2008年帝塚山学院大学卒業
・卒業後、複数の企業に勤務
・2019年7月株式会社ソルテック工業入社
「若いうちに外国で働きたくて、日本にきました」(フンさん)
技術・設計グループのレ ヴー フンさんはベトナム出身です。まずは、なぜベトナムから日本の企業に就職することにしたかについてお話を伺いました。
フンさん
最初は、ホーチミンで台湾の建築会社で働いていました。だけど、若いうちに外国で働きたくなったので、その会社を辞めて日本語学校に通いました。
もともと、日本はきれいな国というか、小さなことでもきちんとやる意識を持つ人が多い国という印象を持っていました。あと、絵を描くことが好きでよく日本のアニメやマンガを観ていました。それで、日本で働きたいと思ったんです。
日本語学校に通った1年間、フンさんは猛勉強をしたそうです。朝5時に起きて勉強をして、学校の授業が8時間。帰ってからまた勉強をして寝るのは23時。かなりハードなスケジュールで日本語を学びました。
その努力の結果、日本語能力試験N2を取得。日常会話には問題なくでき、日常会話よりもう少し幅広い範囲の会話もできるレベルです。
フンさん
それで、ホーチミンにある日本の企業を調べました。ベトナムに会社があって、ベトナム人が多い会社なら働きやすいかな、と思って。ソルテックはホーチミンに会社があって、安心でした。
佐々木さん
日本語学校からの紹介で、フンさんを面接しました。うちは日本人社員が全然ベトナム語ができないので、日本語ができる人というのは必須条件なんですよ。
採用後、ビザがおりるまではホーチミンにある当社のベトナム法人でアルバイトとして設計をしてもらいました。ビザが下りて日本に来たのは2019年の10月ですね。
フンさん
もうすぐ2年です。
実際に日本に来て、何か驚いたことや予想していなかったことはありましたか?と尋ねると、意外な答えがありました。
フンさん
静かだなと思いました。ベトナムの人は、たとえば車を運転しているときもよくクラクション鳴らしたりするので、大きな音がしょっちゅうしています。あとは……みんなすぐ「すみません」って言うなあ、と思いました(笑)
コロナ禍前は京都などに遊びに行ったこともあるそうですが、コロナ禍の今は自宅で好きな絵のオンライン講座を受けるなどして楽しんでいるそうです。その絵を何枚か見せていただきましたが、プロのようなレベルで驚きました。
「外国人社員にとって日本語は第二言語。伝わっているかを確認することが大事」(佐々木さん)
ソルテック工業にはフンさん以外にも多くの外国人社員が働いています。その人たちのことや、社内の様子についてお話を伺いました。
佐々木さん
ベトナム以外だと、韓国、中国、タイ、インド出身のスタッフがいます。今全社員が120名いるのですが、うち60名が外国籍です。一番多いのはベトナム出身の人で52名、ついで韓国出身が5名、中国、タイ、インドが1名ずつです。
フンさんのように外国で働いてみたいと気軽にやってきた人もいれば、小学校の頃から日本語を勉強して日本に来たくてしょうがなかった人、10年以上働いている人もいますよ。
出身国はアジア圏ばかりとはいえ、それぞれのお国柄や文化的・歴史的バックボーンはまったく違います。こういった多様なスタッフが一緒に働くにあたって、何か気をつけていること、工夫していることなどはあるのでしょうか。フンさんと佐々木さん双方に伺いました。
フンさん
私はとくに、どこの国の人だからとか考えず接しています。あ、だけどこれは、あくまで私の話なので、もしかしたらほかの人は、何か気をつけていることがあるかもしれません。
佐々木さん
僕は最初は国でくくって考えていたんです。だけど、例えばひとことで「ベトナム人」と言ってもすごく几帳面な人もいれば、大雑把な人もいるんですよね。にぎやかに集まることが好きな人もいれば、フンさんみたいにコツコツと絵を描くのが好きな人もいる。だから今は一人ひとりの個性を見ないといけないなと思っています。
さまざまな国から人が集まっているとなると、言葉の壁という問題も出てきます。その問題に対してはどのように対応しているのでしょうか。
佐々木さん
伝えたいことがちゃんと伝わっているかは意識しますね。
社内ではみんな日本語で話すのですが、外国人社員にとって、日本語は第二言語です。きちんと聞き取れて理解し流暢に話せる人もいますが、そうでない人もいます。たとえばフンさんは聞き取りは問題ないけれども、自分から話すときは言葉が出てこないこともある。
だから、ちゃんと伝わったかを確認することが大切なんです。実際確認おろそかにしていて、あとから行き違いに気づくことも多いですよ。
言葉といえば、社会人として働く上で欠かせないのが敬語です。外国人社員にとっても敬語は難しいようで、こんなやりとりもしばしばあるそうです。
佐々木さん
フンさんが、この前「『マジですか』って言いますか?」って聞いてきたんです。ドラマを見ていたらそういう言葉が出てきたと。それで「言うけど、それは上司や年上の人、社外の人なんかに言っちゃダメだよ」って話をしたんですね。こういう、相手によって使い分けなければいけない言葉というのは指摘します。
事務から現場まで。外国人社員はあらゆる場で活躍中
社内でほぼ半数を占める外国人社員の方々。実際にどのようなお仕事をされているのでしょうか。
フンさん
プラントの設備、主にタンクとかその周りのストラクチャー、階段とか、タンク下のサポートとか、そういったものを設計しています。
佐々木さん
フンさんは設計に加えて、設計したものがちゃんとそのとおりにできているかチェックする、品質管理的な仕事もしています。
日本語が流暢な人は人事、営業事務、海外事業や貿易系の事務職ですね。今日いらっしゃったときに最初に受付した男性社員は中国籍の社員ですよ。それから、経理を担当している人もいます。工場で働いているベテランさんもいますし、現場に出て現場監督の補佐をしている人もいますよ。非常に優秀な人で、表彰もされています。
国籍に関係なく、現場や技術系、事務など本人の能力や適性を活かした職種で活躍していることが伺えます。人によっては社外での打ち合わせに参加することや出張に行くこともあるそうです。
佐々木さん
フンさん、以前長野に出張に行ったことあったよね。
フンさん
雪が降っていて、スケッチしようとしたら手が凍えました。寒いのは苦手です(笑)
佐々木さん
フンさんには今度、ひとりでお客さまの設計チームに入ってもらいます。そこでまた、キャリアと経験を積んでほしいなと。
あと、彼の後輩にあたるベトナムの方を数名採用しているので、先輩として指導していってもらえたらと期待しています。
フンさん
将来どうするかは実はまだあまり考えていなくて……日本で働き続けたいか、ベトナムに戻りたいかとかも、まだ考えていません。ただ、今、自分がしたいこと、できることを一生懸命やっていきたいです。
教えて、教えられて。毎日いろいろ刺激がある職場
最後に、フンさんと佐々木さんにこの記事の読者の方に向けてメッセージをいただきました。
フンさん
ここの会社の人は、ベトナム人に慣れているので、とても優しいです。ベトナム人もたくさん働いているし、ベトナムに現地法人もあるし、安心して働きやすいと思います。あとは……大阪は天気とか気温がベトナム(ホーチミン)に近くて住みやすいです(笑)住みやすいというのは大事な条件だと思います。
佐々木さん
僕自身何社か経験して今この会社にいるのですが、やっぱりユニークな会社だなと思います。20代中心の比較的若い外国人社員がたくさんいて、毎日いろんな刺激があるし、学ぶことも多いです。こういう環境が好きで楽しめる人にとっては、とてもおもしろい職場だと思います。
入社後は本人の希望も聞きながらOJTで研修し、業務に慣れていってもらいます。国籍関係なく、能力次第で責任ある仕事も任せていきますので、いろんな方に興味を持って、いただきたいと思っています。