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インタビュー

「コーヒーが好き」その想いがなによりの原動力/NAKAYAMA COFFEE ROASTERY(中山珈琲焙煎所)・中山修也

昨今は老舗の喫茶店から気軽に立ち寄れるコーヒースタンドまでさまざまなタイプの店が営業しており、コーヒー需要の高さが窺えます。自宅でもコーヒーを愛飲する方は多く「おいしいコーヒーの淹れ方を知りたい」「手軽に楽しめるコーヒー豆が欲しい」とこだわっている方も年々増えている印象です。

そんなコーヒーブームに先駆け、京都府木津川市に2010年にオープンした「NAKAYAMA COFFEE ROASTERY(中山珈琲焙煎所)」。店舗では焙煎士が選定した香り豊かなコーヒー豆の購入や、挽き立ての豆で淹れたコーヒーなどをお楽しみいただけます。

「コーヒー好きが転じてこの仕事を始めた」と語ってくださったのはNAKAYAMA COFFEE ROASTERY経営者の中山修也さん。本インタビューでは店舗設立までの経緯や、自宅でもおいしいコーヒーを淹れるコツなどを教えていただきました。

■プロフィール
中山 修也(ナカヤマ シュウヤ/1980年生)
・大阪府生まれ、京都育ち
・上宮高校、追手門大学卒業
・20代半ばまでアルバイトをしながら音楽活動を続ける
・京都の染工場にて3年ほど勤務
・2009年 京都府木津川市に「NAKAYAMA COFFEE ROASTERY」開業

夢を追い、駆け抜けた20代

|大学卒業後はしばらく音楽活動をされていたんですね。

高校生くらいの頃から地元の友だちとラップをやっていて、本気で「これで食べていくぞ」という気持ちで続けていました。クラブイベントや音楽イベントに参加したり、イベントの 企画をしてみたり。20代半ばまで10年近くやっていましたが、全然売れなくて食べられませんでしたね。

|その後、染工場に就職されたそうですが、きっかけはありましたか?

音楽活動をしているなかで「どうやらこれで生きていくのは難しいな」と仲間全員が思い始めている雰囲気があって、それぞれの道に進み始めました。

僕もアルバイトしていたパチンコ屋が潰れてしまって、そろそろきちんと就職するべきかなと思うようになり、京都にある服の生地を染める工場に就職しました。

ファッションが好きだったのでアパレルの仕事ができるのかなと期待して就職したんですが、実際は全然そんなことはなく、長靴を履いてゴム手袋をはめてといった感じで思いっきり工場作業でした(笑)

|理想と現実とのギャップがあるなかで、何年ほどお勤めになったのですか?

2~3年ほど働かせてもらいました。缶詰め状態で朝から夜まで働いて、残業も多くてとてもハードでしたね。

見つけたコーヒーの楽しさ、0からのスタート


|2009年に「NAKAYAMA COFFEE ROASTERY」を立ち上げられています。音楽活動や工場ともまた違った業種ですが、なぜコーヒーの焙煎所を始められたのですか?

正直、工場勤務でずっと働き続けることは想像できなくて「どこかで辞めないと」とは思っていました。28歳くらいの頃に「もう少し違う仕事をしたい」と強く思ったのですが、今更就職活動をしてもキャリアも全然ないからどこも望めないだろうな、と。

それだったらなにか好きなことで食べていけたらいいなと思い、自分には何ができるのかを模索していました。そんな時にちょうどその頃付き合っていた彼女にコーヒーを淹れる道具をセットで貰ったんです。

もともとコーヒーは好きでしたが豆から挽いたことはなくて、ちょっと面倒そうだなと思いながらも道具を使って淹れてみたらすごく美味しくて。自分でもこんなものが作れるんだって感動して、そこからいろんなコーヒー豆を買って淹れてみることにどんどんハマって、その楽しさに「あ、これだな」と。

|とは言え、好きなことを趣味にするのと仕事にするのではわけが違うと思いますが、不安はありませんでしたか?

めちゃくちゃ不安でした(笑)でも、音楽を諦めて気持ちがかなり落ち込んでいたんですが、コーヒー豆を触っているときはテンションが上がったんです。好きなことなのでやりがいもあると思ったので、仕事にしようと決意しました。

ただ、いきなりお店を構えるには家賃などを払っていける見込みが全くなかったので、実家のキッチンで焙煎をして、近所の野菜の直売所に頼み込んで、軒下にテーブルを出して販売させてもらう形で始めました。

|当時のお客様の反応はどうでしたか?

まず声が小さいと怒られました(笑)コーヒーは自信がないから1杯150円くらいで販売していて、とてもじゃないけど商売とはいえないような感じでしたけど、それでも自分が作ったものを「美味しい」と言ってもらえると感動しました。

僕はカフェがやりたいというよりもコーヒー豆を焙煎する「コーヒー豆屋さん」になりたいという気持ちが強かったのですが、当時は自分で焙煎した豆からコーヒーを抽出して売るというのはけっこう珍しかったんですよ。

注文を聞いてから豆を挽いて淹れるというスタイルは「そこからやるの?」と驚いてもらえることも多くありました。せっかちなお客さまは「時間がかかるな~」と怒ることもありましたが、そんな反応も面白かったですね。

赤字続きの日々…それでも続けられたワケ


|直売店からどのように活動範囲を広げていったのですか?

マルシェやマーケットのようなイベントに積極的に応募・参加して、いろんなところに出ていくようにしました。そうすることで、僕のスタイルが珍しいこともあり、次の主催のときも呼んでもらえたりして毎週末出られるようになりました。

そこで注文を頂いたり、雑貨店から問い合わせがきたりと、ちょっとずつそういうのが増えていった感じです。主な活動をマーケット応募にしたのは、店舗を持つよりも資金面でのリスクが低かったので。マルシェやマーケットは必要なのは参加費ぐらいで、リスクがそこまでないので挑戦しやすかったです。

とは言え、ずっと平日は何もやることがないような状態だったので3年ほどは赤字でしたけど…。

|なるほど。そこからお店を構えるようになった経緯を教えてください。

はじめは実家のキッチンで焙煎をしていたんですけど、焙煎すると煙が出るんです。コーヒーの販売を始めて2年ぐらいのときにちょっと忙しくなってきてたらキッチンが煙だらけになって、父がすごく煙たそうな顔をしていたので「これはまずいな」と(笑)

近くで家賃が安かったところを作業場として借りました。それが今のお店の始まりです。 いずれお店にできたら良いなとはふんわりと思っていたんですけど、しばらくは作業場として使用して、3年ほど経ったころにお店としてオープンしました。

|音楽も長く続けていらっしゃいましたが、何かを始めるとそのことに打ち込むタイプなんでしょうか?

そうかもしれないですね。多分、なにかを作るのが好きなんです。音楽だったら曲を作ることもライブの構成を考えるのも楽しかったし、出店していたときはどんな道具を持って行って、どんなメニューにしようかと考えるのも楽しかったです。単純に焙煎するのが楽しかったですし、やりがいは「好きだ」っていう気持ちだけしかなかった気がします。

|始めの頃の苦労がうかがえます。現在はSNSなどで拝見してもすごく人気のお店ですよね!今はお2人で経営されているとか。

はい、妻と2人でお店に立っています。結婚したのは5年ほど前、お店を構えて何年か経ってからです。妻は当時大阪に勤めていましたが、ここからは通勤が大変ということで仕事を辞めお店の仕事を手伝ってもらうようになりました。

妻はコーヒーのポップを作るなど、デザイン的なこともできるのですごくありがたいですね。何より2人というのは心強いですし、とても助かっています。


いかに手間をかけるかで、コーヒーは変わる

|お店にあるコーヒー豆の種類はどれくらいですか?

常に8~10種類くらいは用意するようにしています。仕入先は日本の会社ですが、そこの方たちは原産国に買い付けに行くんです。以前、僕も同行させてもらって産地訪問をしました。ブラジルやグアテマラ、ホンジュラス、インドネシアに連れて行ってもらいました。

|実際に目にされて、どうでしたか?

写真でしか見たことのない景色だったのでとても感動しました。実際に栽培している方に会って、どんなロケーションで育てているのかがわかるのは新鮮でした。

ブラジルの田舎の奥地などはあまり観光でも行かない場所ですし、行ってみると「この農園をもっと応援したい」という気持ちにもなれました。

|中山さんがコーヒー豆を仕入れる際のこだわりを教えてください。

今ってすごく高いコーヒーもあるんですが、僕は「日常的においしいコーヒーを飲んでほしい」という思いがあるので、手ごろに買える美味しい豆を選ぶことにこだわっています。もちろん、たまには特別なコーヒーも飲みたいという方もいらっしゃると思うので、贅沢なコーヒーも数種類用意する、そんなラインナップを心がけています。

価格は平均して100gで600円くらいです。ご自宅で豆から挽く方はまだあまり多くありませんが、コーヒーはお金よりも、いかに手間をかけるかでおいしさがけっこう変わってくるんですよ。


|コーヒーを淹れる際のコツやポイントはありますか?

たとえば、コーヒー粉にいきなりお湯をドバドバ注ぐと薄くなるので、最初はちょっと湿らすような感じで少しだけお湯をかけて30秒間ほど蒸らします。

お湯の温度も高すぎず低すぎずの85度くらいが良くて、コーヒー粉に対するお湯の量をきちんと測ることが大事です。これを意識するだけでも毎日のコーヒーの味が変わると思います。

ただ、注ぎ方うんぬんよりも“飲む直前に豆から粉にする”ということが最も重要なポイントです。

豆は挽くことで空気に触れる面が多くなり、香りがより早く飛んでしまいます。コーヒーは、実は味よりも香りで楽しむ部分も多いので、香りの強さが大事だといえます。

一歩踏み出せば、進むしかない


|今後の展望を教えてください。

今はコーヒー豆屋として豆の販売に特化していますが、ゆくゆくはカフェのようなお店にしていきたいと思っています。

席数も沢山あって、ドリンクの作り方にもこだわって、お客さんがゆっくりコーヒーを飲んでいる、そんな景色を見てみたいです。5年以内には実現できるように頑張ります!

|好きなことを仕事にされて大変なこともあると思いますが、すごく楽しまれているように思います。そんな中山さんから最後にハレダス読者へメッセージをお願いします。

僕は今の仕事をもっと早く始めたらよかったと感じることが多いです。なので、何かをしたい、してみたいという思いがある方は早めに行動に移してほしいなと思います。

その一歩目を踏み出すのがけっこう大変だったりして、みんなそこで悩むことが多いですが、踏み出せばそこからはもう行くしかないと思えるものです。

やりたいことがあれば勇気を出して挑戦してみてください。

|ありがとうございました。

中山珈琲焙煎所ホームページ:NAKAYAMA COFFEE ROASTERY

大阪・中崎町の「ハレダスcafe」は中山珈琲焙煎所のコーヒー豆を使用しています。仕事・勉強のおともに香り豊かな美味しいコーヒーをお楽しみください。

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Written by

永野 栄里子

永野 栄里子

大学・大学院にて日本語学を専攻。日本語学校での非常勤講師を経て、2018年よりライター業を開始。さまざまなメディアで記事を手がけながら「田舎の在宅ママライター」として新たな働き方を確立すべく、日々育児に仕事に奮闘中。

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