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インタビュー

稽古場と子育ての場の融合「ダンス保育園!!」新しい環境を作りだす/篠崎芽美

子どもが生まれ、ダンサーを辞めざるを得ない大人が多いのはご存知でしょうか。

親になっても持続可能な創造活動ができる仕組みとして稽古場と子育ての場を融合した「ダンス保育園!!」に参加している篠崎芽美さん。

仕事と子育て、二つのものを同じ空間で取り組む。篠崎さんのインタビューを通して、今より先の自分自身が子育てしながら働く新しいイメージを想像してみましょう。

■プロフィール
篠崎芽美(シノザキ メミ/1981年4月18日生/千葉県出身)
高校在学中に「珍しいキノコ舞踊団」(*1)の公演に参加。日大芸術学部の西洋舞踊コース卒業後、再び同カンパニーに参加し、2017年の退団までに国内外で発表された全作品に出演。 二児の母となった現在はダンスを踊る傍ら、親子や子ども向けダンスワークショップを各地で行う。2016年より「ダンス保育園!!」の発足に参画。2018年よりワークショップとパフォーマンスの融合イベント「ヒョーゲンのメメメ」を主催。

(*1)珍しいキノコ舞踊団…ダンスカンパニー。様々な角度からダンスを捉え、劇場に限らず、屋外やギャラリーでの公演も積極的に行っていた。

「ダンス保育園!!」子育て中もアートに関わり続けたい人をサポート


子育てしながらもアーティストとしての活動を続けていますが、芽美さんの今までのダンス経歴を教えてください。

幼少期や学生時代は、バレエやジャズダンスなど何か一本、専門的なダンスを経験してきたわけではありません。さまざまなダンスに触れてきました。

高校生のとき「珍しいキノコ舞踊団」(以下キノコ)のオーディションを受けました。キノコではダンスを専門的に貫いた方が多かったので、キノコの環境でダンスを学んだと思っています。

妊娠中も産後もそして2人の育児をしている今もずっとダンスをし続けています。「妊娠しました」「子どもができました」それなら今その身体でどういう踊りができるかという発想に切り替わります。

どんな日常もダンスの糧になるので、その時々のバイオリズムに合わせ、何者にもならず、自分のままでいるダンスをキノコ時代から心がけています。

ダンス保育園!!との出会いは何がきっかけでしたか?

子ども向けイベントやワークショップの仕事をキノコ時代に多く引き受けました。「ダンス保育園!!」もキノコ時代に声をかけていただいた仕事の一つです。

当時1〜2歳の長女を育てていました。子育て中の私に、キノコの演出家の伊藤千枝子さんが声をかけてくださって、ダンス保育園!!に携わることとなりました。

ダンス保育園!!とはどういったものなのでしょうか?

ダンス保育園!!のコンセプトは大きくに二つあります。1つめは『活動を続けていきたいアーティストにやり方や場所を提供すること』。もう1つは『劇場・美術館など、文化的なものを見に行く人が、自分に子どもがいるから見に行けない環境や状況に変化をもたらすこと』です。

ダンス保育園!!は、さまざまなアーティストと連携しながら、子育て中のアーティストやアートを鑑賞したい観客を支援する活動です。子どもと大人が一緒に身体表現を楽しめるワークショップや誰でも観覧自由なイベントを展開しています。

私自身は、企画の住吉智恵さん(アートプロデューサー)、空間構成の永山祐子さん(建築家)のオファーを受けてどういった形で演出するかを考えています。実際にパフォーマンスするメンバーの振り付けも担当しています。

ワークショップやパフォーマンスを考えるときは、その場で起きる楽しいことを瞬時に見つけ、目の前にいる親と子どもたちに「お土産」として持ち帰っていただけるように考えています。

ダンス保育園!!を立ち上げた当初は、お母さんたちがリハーサルをしている間に、私たちダンス保育園!!のメンバーが子どもたちを預かる。そして、預かった子どもたちにワークショップを通してアートや芸術に触れられるような機会を与えていました。

私たちが託児のシステムを担う案もありましたが、活動を開始した5年前は今以上にお母さんから離して子どもを預かるリスクは高かったので断念しました。

今は託児システムが整い利用もしやすくなりましたね。社会的にも託児を利用する感覚は変わってきていると感じます。私たちが託児の要素を取り入れる必要はなくなり、自然とまた違う取り組みに変わってきていると思っています。

問題は時代の変化とともに常に変わっていくので、その動きにダンス保育園!!も対応していきたいです。

稽古場(仕事場)と子育ての場の融合ー親と子どもにとってのメリットー


稽古場(仕事場)に子どもを連れてくる、親にとってのメリットは何だと思いますか?

子どもに対しての視点は多いほど、子どもの良さを伸ばせるのではないでしょうか。同じ稽古場にくるお母さんと「〇〇ちゃんはこういうところがおもしろい」と話す。親や学校の先生、習い事の先生、さらにアーティスト同士である仲間たちで、自分だけでは見つけられない子どもの良さを発見しあえるのはいい機会だと思っています。

子どもを稽古場(仕事場)に連れてくる、子どもにとってのメリットは感じますか?

子どもにとってメリットがあるかどうかは、正直わかりません。稽古場に連れてくることの子どもにとっての利点は子どもにしかわからない。今はまだ憶測でしかないですね。子どもを仕事場に連れてくることが最善な方法であるとは言い切れません。

それぞれのお母さんとそれぞれの子どもに最適な場所が必ずあると思っています。自分たちの親子にとって最適な場所をみんなが選べたらいいと思っています。

「こうしなきゃいけない」に囚われたら自分から環境を作る。それぞれが環境を作っていけば可能性が広がると思います。

「これが正しい」「これが限界」と思い込むことの方が怖い。ずっと迷っていたいなと思っています。何がいいのか考え続けたい。みんなで考える。ダンス保育園!!でも毎回みんなで考えています。

子どもに対して何か意識していることはありますか?

何かに焦って子どもを除外しようとしない。何かおかしいと思ったらその場で修正。子どもを子ども扱いせず、ワンカウントとして、子どもの話をよく聞くこと、よく見てあげること。それをやらなくなったら駄目だと思います。どこにいても考え続けることを大事にしています。

ダンス保育園!!の可能性ー不自由の中の自由を楽しむー


これからのダンス保育園!!の可能性、今後のあり方を聞かせてください。

時代が変わり、最近は特に制限や制約が多いと感じます。できると思って取り組んだことが状況が悪くなり、全部できなくなる。

土台からガラガラと崩されることは多いです。作っては崩され、作っては崩される間に、本当に大事なものだけが残ってくる。本当に大事なものを寄せ集めて、その時そのときにあったものを作り上げていく。繰り返すことで自分たちにとって何が大事なのかが研ぎ澄まされます。

今は大変ですが面白みも感じます。不自由の中にしか自由はない。何でもできるときよりも、不自由な中であれもこれもできると思えることの方が楽しいかもしれません。

時代によって、できることとできないことは増えている。その中でどういうふうに過ごそうかと一生懸命に取り組んでいくことを心がけています。

今後のダンス保育園!!も、その場その場にあるものでできるものを作り出していきたいです。コロナに関係なく、ダンス保育園!!らしく。今までも冬はインフルエンザで誰も来ないとか、イベント当日も来ないこともありますから(笑)

「このシーンどうする?」「誰もいないから、ソロのシーンにしよう!」と臨機応変にあるもので対応してきました。

当日、子どもが泣けば抱っこして踊る。この場面であの子は機嫌を損ねやすいからカバーしよう。私たちは今できることで作り上げる筋力だけはある。だから今の時代には向いてるかもしれないですね。


将来子どもをもつ親になる方へメッセージをお願いします。

環境のせいにしない。選択肢がないと思わずに自分で環境を作ってみて欲しいです。子どもが生まれた、今まで取り組んできたダンスをどうしようか、ダンスと子育てを天秤にかけるのではなく、ひとつのお皿に入れる。

どちらかをとるのではなく同じお皿に入れてみる。ロジカルに組み立てるのではなく、ひとつのお皿に入れる視点を持って欲しいと思っています。

これが正しい、これが限界、と思い込まず、ずっと迷ってみんなで考え続ける。何が良かったかは先になってみないとわからない。いいものを目指して考え続けていくことがすごく大事だと思うので悩み続けて欲しいです。悩みはあった方がいいと思う。

できること、できないことは時代によってどんどん増えていく。その中でどう過ごすか一生懸命模索して悩みながら考えて過ごす。悩んでいることが幸せであればいいなと思います。

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Written by

首藤響子

首藤響子

子育てママライター。専業主婦・子育てをきっかけに自分軸で生き直す。子育てをしながら「個」育てをしているママのインタビュー集も自身でスタート。自分らしい生き方を模索する人が好きです。ママのキッカケの場づくりも運営中。

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