1936年の創業からゴム工業品事業部、土木事業部を基軸に発展を遂げてきた「錦城護謨」。今では「大阪トップランナー育成事業」の認定や「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2021」でゲームチェンジャー賞を受賞するなど、八尾市が誇るものづくり企業へと成長しています。
安定した成長を続ける同社ですが、創業100年を前に大きな変革に挑んでいるのだとか。なぜ変革の必要があるのか。今回は太田代表と社員の水田さんに変革の経緯や内容についてお伺いしてきました。
安定経営を実現する錦城護謨ですが、変革に挑んだ経緯は?
太田社長
端的に言うと、未来への危機感からです。
ゴムの製造・販売、地盤改良をはじめとする土木事業などの既存事業は安定し、短期的な見通しは立つもの。しかし、長い目で見れば2本柱だけでは不透明だと感じていました。息の長い企業になるには事業を多角化し、それぞれを補い合うような良い循環を作る必要があると考えました。
変革の内容を具体的に教えてください。
太田社長
変革は大きく分けて2つ。新規事業の立ち上げと既存事業であるゴムの新分野展開です。
新事業は、社会貢献度の高い環境・防災・健康・福祉のフィールドに絞って検討していました。そのタイミングで土木のクライアント様からのご縁もあり、福祉関連事業に注力することに。
2つめの既存事業の新分野に関しては、ものづくり技術を活かした自社ブランドの設立です。
まずは福祉事業についてお伺いします。どんな取り組みをしているのですか?
太田社長
障がいのある方たちがバリアフリーに過ごせる商品の製造・販売をしています。主力商品は、視覚障がい者歩行誘導マットの「歩導くん」。
全盲の方が開発し、自社で販売・認知を引き受けたのが10年ほど前のことです。当時は商品も完全ではなく、試行錯誤する毎日でした。
より快適な使い心地を目指して2015年から開発にも携わり、大きく商品をアップデート。現在では公共機関や病院など、1000か所以上の設置実績を誇っています。
商品が普及するなかで今後はどのような発展を考えていますか?
太田社長
「歩導くん」をプラットフォームに、ITや空間デザインなど、色々なものと掛け合わせていきたいと感じています。最先端のテクノロジーを融合し、空間の価値を高める。
将来的には、日本だけではなく世界の視覚障がい者を安全に誘導できる道標になりたいですね。そのために今はしっかりと実績をつくる時だと思っています。
現在でも多くの賞を受賞しているとお聞きしています。
太田社長
そうですね。嬉しいことに、2016年度の「iFデザイン賞・最優秀賞」を受賞。その他、国際的に威厳のあるデザイン賞「German Design Award 2018」を受賞しました。
後ろ盾を作ることで、世界に挑みやすくなる。そして、誰もがハンデを感じることなく共存できるような世界を目指しています。
次に既存事業の新分野について教えてください。
太田社長
85年間、弊社のものづくりはBtoBが中心でした。様々な業界や大手企業で弊社の技術が活かされているのですが、BtoBだとエンドユーザーからの認知度もなかなか高まりません。
それなら「自社ブランドを立ち上げて商品を作り、一般のお客様にも知ってもらおう!」と感じたのが新分野発足のきっかけでした。一般のお客様に弊社のものづくり技術が広がれば、社員たちも仕事に誇りが生まれ、愛社精神にもつながると思ったんです。
自社ブランドの立ち上げは周囲の後押しもあったのだとか?
太田社長
はい。ブランド立ち上げを考えていた頃にチャンスが訪れたのが、ものづくりを世界に広めるプロジェクト「YAOYA PROJECT」でした。
八尾市が主催で、八尾市に根付くものづくり技術とデザインをかけ合わせる。そして世界に通用するオリジナルのプロダクトをつくろうといったものでした。
そこであるデザイナーさんと出会い、ものづくりへの想いや夢を共有。気持ちを通わせ、弊社のゴム加工技術とデザイナーさんのデザイン力をかけ合わせた商品が完成し、オリジナルブランドである「KINJO JAPAN」の立ち上げに至りました。
「シリコーングラス」拝見しました。まるでガラスですよね…!
太田社長
そうなんです。自社開発した「シリコーンロックグラス」は、ガラスと同じ位の透明度をもつ高透明シリコーンゴムでできたグラスです。
一見ゴムだとは気づかないけれど、触るとグニャッとする。素材の特性上落としても割れる心配がなく、手にピタッとフィットする商品なのでお子様からお年寄りまで安心して使っていただけます。
商品開発やブランド立ち上げなどで社内に変化はありましたか?
太田社長
BtoBメーカーは、クライアントからの依頼を忠実に守ることが求められているので、ベースが受動的。しかし、初めて一般のお客様に自分たちのものづくり技術が届く機会ができたことで良い循環が生まれました。
今回の「シリコーンロックグラス」の開発には、ゴム事業と土木事業から2人ずつの計4人の社員が携わったのですが、この構成が正解でしたね。お互いの得意を活かしながら違った目線で意見を出し合えましたし、両事業部の社員たちが「そんなことやっても良いんだ」「チャレンジしても良いのか」といった風潮が生まれ、社内の仕事に対する取り組み方や姿勢が少しずつ変わっています。
まさに変革の真っ只中といったところでしょうか。
太田社長
はい。これからの時代、言われたことをやるだけでは付加価値もとれませんし、わくわく感もないですよね。新分野はこれまでの取り組みとはまったく違う姿勢。ゼロからイチを生み出す開発提案型のビジネスを目指しています。
そんな一歩となった「シリコーンロックグラス」の開発は、挑戦する面白さを体感する大きなきっかけにつながったのではないかと感じています。
努力が実を結び、メディアやSNSなどで注目が集まっていますよね。
太田社長
2019年の6月に企画がスタートして半年で商品製造に至ったので、社内はとても大変でしたが(笑)クラウドファンディングに挑戦したことで、一気にたくさんのお客様に応援していただけました。
初めての挑戦で販路もないし、PR・ブランディング方法もわからない。「ほんまに売れるんかいな」と半信半疑なところもありましたが、クラウドファンディングでの達成率900%の数字を見た時に、やろうとしていることは間違いないのだと背中を押してもらえましたね。
それからというもの、Twitterでは10万のイイね!がついたり、毎月や新聞、雑誌、TV、Webメディアなどから5件ほどの依頼を受けたりするようになっています。
PRやブランディングの知識がない中でどのように取り組まれたのでしょう?
太田社長
基本的には社内で手探りで対応しようと考えていたんです。しかし、経験もなければノウハウもない。誰も答えがないことをしてもうまくいきませんでした。今ではブランディングのベースを作るために、外部講師に入っていただいています。
また、現在は受けの広報という認識です。商品が尖っていることから、ありがたいことに外部からの問い合わせをいただけるので、その対応をすることから広報がスタートしているのが実情です。従来は、広報専任の部署もなく、それぞれ対応をわけていたので。
もう一つ上にいくためには、攻めの広報体制を作ろうと、専門部署立ち上げを決めました。
攻めの広報とはどういったものか具体的に教えてください。
太田社長
依頼を受けるだけではなく、弊社の魅力や取り組み、思いを積極的に発信していって取り上げること。また、ターゲットや時期などを見極めた情報発信で、戦略的にチャンスを次につなげるたいと思っています。
広報部署は今年の秋に立ち上げ予定ですが、現在も実務ベースで広報に携わっているメンバーが中心となり、外部講師を招いた勉強会で学んでいます。
知識は着々と身につけていますが、実務経験やノウハウが乏しい。だからこそ、新しく入社いただく方には、経験を活かしながらリーダーと二人三脚で実務を回し、部署をけん引して欲しいのです。
広報部署のリーダーである水田さんにお伺いします。部署新設についてどう思われていますか?
水田さん
弊社は「モノづくりの力」、「土木の力」、「KINJO JAPAN」など、誇れるポイントがたくさんある企業です。製造した商品が国家プロジェクトで使われているなんてことも日常的。
一歩離れて見るとすごい会社と仕事なのに、携わっている社員たちは普通のことだと思っているんです。広報部署の立ち上げは、社外への営業はもちろん、そんな社員たちに自社の魅力に気づいてもらうにも良い機会だと思っています。
どんな方にご入社いただきたいですか?
水田さん
「自分がこの会社の魅力をどんどん伝えてやるぞ!」といった熱い気持ちを持った方にご入社いただきたいです。
今後企業が成長していく上で外部への戦力的発信は大事ですし、社内の人たちが会社を誇りに思えるような発信も大切。だからこそ、ご入社いただく方には「錦城護謨」の1番のファンになってもらいたいですね。
入社される方はどんなフィールドで活躍できますか?
水田さん
自社メディアの運営やSNSでの発信をベースに、「KINJO JAPAN」の立ち上げによって、イベントや展示会でのPR活動もお任せしていきます。
また、福祉関連事業の主力商品「歩導くん」も年末に向けて、企業コラボを予定。世界的な国際イベントで利用してもらえるような発信も広報部署で行っていければと考えています。
やりがいを実感できそうなポジションですね…!最後に、この記事を読んでいる方に一言お願いします!
太田社長
錦城護謨は、安定と保守から“変革とチャレンジ”の時期に入っています。新事業の展開やブランドの立ち上げ、広報部署の新設。こうした変化は、最初は違和感が生じたとしても未来にとって必要なこと。
変化によってこれまでと違う価値が生まれ、広がる世界があると信じています。だからこそ、今の弊社にとって広報は必要不可欠。安定した基盤をもとに、仕事はチャレンジャブルで面白味を感じていただけるはずです。
「事業転換を一緒にやってみたい」「会社の未来を作り上げてみたい」そんな方からのご応募を心よりお待ちしています!