2020年より感染拡大が始まった新型コロナウイルスの影響で、大きく様変わりした業界の一つに「飲食業界」があります。
今回インタビューをおこなった赤阪 良彰さんは、そんな飲食業界に特化した転職支援サービス会社を経営しています。
30歳目前で、まったくの異業種から飲食業界に転職された赤阪さんに、これからの飲食業界において転職を成功させるコツや、実現させたいビジョンについてお話をいただきました。
■プロフィール
・赤阪 良彰(アカサカ ヨシアキ/1981年生/大阪府出身)
・大阪芸術大学にて都市デザイン・建築を専攻、新卒で不動産会社に就職
・その後、大手百貨店のディスプレイディレクターなどを経て、29歳の時に飲食業界に転職
・現在は転職支援や人事業務代行をおこなう「株式会社ファーストアクション」代表取締役
・趣味はサッカー、フットサル、食べ飲み歩き
29歳で一念発起し、転職。未経験の飲食業界で奮闘した日々
ーまずはじめに、赤阪さんのご経歴を教えてください。
父親が内装会社を経営していたため、建築が身近な環境で育ちました。高校と大学では建築と都市デザインを専攻し、卒業後は在学中に学んだことを活かせると思い設計と営業を学ぶために不動産会社に入社しました。
不動産会社を退職後は大手百貨店の売り場の図面を書いたり、ディスプレイデザインに携わっていましたが、この業界では独立できないと思い29歳の時に一念発起して飲食業界に転職しました。
カフェやリストランテ、ブライダルレストランなどを経営していた会社に入社し、各店舗に配属される中で努力を惜しまない姿を評価され早期にウェディングレストランの支配人を任されました。
その後、人事部長と就職支援事業部長を経て、2019年に転職支援や人事業務代行をおこなう「株式会社ファーストアクション」を設立し、現在は同社の代表取締役を務めています。
ー建築や不動産にまつわるお仕事から、まったく異業種の飲食業界に転職されたんですね。
前職と比べて年収は半分くらいに減少しましたが、かねてより抱いていた「自分の会社やお店をもちたい」という希望を叶えるための転職でしたし、なおかつ自分が魅力を感じたお店のスタッフになれたので、悔いはありませんでした。
当時、私はもう29歳。10歳下のアルバイトスタッフに仕事を習う日々でしたが、他のスタッフや経営陣に認めていただきたい一心で、働き詰めました。結果、頑張りを評価していただき、社内で一番大きな売上のウェディングレストランの支配人になることができました。
人の想いをとことん掘り下げる。支配人・人事部長時代の経験を活かし、会社を設立。
ー前職ではどんなお仕事をされていたか、詳しく教えてください。
ウェディングレストランでは主にスタッフの統括をおこなっていました。ウェディングレストランは通常の飲食店に比べて、スタッフが多いのが特徴です。 プランナーや調理スタッフ、ホールスタッフに学生アルバイトなど、さまざまな人が「結婚式を成功させること」を目標に働いています。人が多いぶん、人間関係の管理には苦労しました。
その後は人事部長に就任し、今まで社内になかった人事評価制度の制定や、給与形態の見直しなどをゼロから実現させました。前職は多様なジャンルの飲食店を運営していたので、各店舗の店長に個別のヒアリングをおこない、人材の定着を目指して尽力していました。
ーその後、飲食業界に特化した人材紹介会社を設立されたのはなぜですか?
現場の人間としての立場、さらに人事部長の立場から見て、飲食業界全般にさまざまな課題を感じたのが、一番の理由です。
会社側は経営に対する不安、従業員側は労働環境に対する不満など、一つのお店の中にも、いろんな人たちの十人十色の思いが隠れています。
お店の中でよく問題を起こすような人でも、その人にはその人なりの思いがあるんです。社会通念上よくない行動や、その人が孤立してしまうような振る舞いはもちろん注意していましたが、スタッフの思いをきちんとヒアリングした上で適切な指導をおこなうよう、常に心がけていました。
支配人として、人事部長として、一人ひとりの思いや苦悩を聞き続けたなかで、「飲食業界にとって重要な課題は良好な人間関係の構築や、人材の確保だ」と感じた気持ちが今の仕事につながっています。
時間をかけたヒアリングで、自覚なき思いも発掘。赤阪さんの転職支援プロセス
ー赤阪さんが転職先を紹介される際は、どのような流れで進められるのでしょうか?
まずはヒアリングにしっかりと時間をかけて、ご要望を伺います。一口に「飲食業界希望」といっても、転職をご希望されている方のお悩みやご希望はさまざまです。
「将来的に独立を考えていて、ステップアップしたい」「自分の希望は二の次で、家族のためにお金を稼ぎたい」「料理スキルはあるので、次の職場ではマネジメントスキルを学びたい」など、皆さんの忌憚のないご意見を伺って、ご希望に沿ったお店や企業を探します。
あとは、前職を退職された理由も必ず伺うようにしています。転職を思い立ったきっかけの裏に、ご自身でも気づいていないご不満やご要望が隠れているケースはかなり多いです。
企業やお店側、そして求職者のニーズにギャップが生じないよう、内なる思いをとことん掘り下げていきます。
ー転職をサポートされる立場になって、大切にされていることを教えてください。
近江商人の経営理念をあらわす「三方よし」という言葉を大切にしています。
前職で人事部長を務めていたときは、あくまで会社員として、会社のために人事を統括していました。自分が代表になった今は、転職や人材を求めて弊社に来てくださったご利用者さまにご満足いただくことを最優先に考えています。
私自身の経験を顧みると「あのとき、違う道に進んでいたらまったく違う自分になっていただろうな」と思う人生のターニングポイントがたくさんあります。
自分はただ転職のお手伝いをしているのではなく、ご利用者さまの人生設計の一端を担う責任重大な立場にいることを忘れないようにしています。常にそんな意識でいると、自分の利益の優先順位は自然に低くなってしまいますね。
ーこれまで多くの方々の転職を見届けられてきて、飲食業界で転職を成功させるために大切だと思うことを教えてください。
飲食業界は人間関係を理由に退職してしまう方も少なくありません。新しい職場で働き出すと、どうしても対人関係で違和感を覚えることもあるかと思います。
ただ、これまで多くの方の転職を見守ってきた立場としては、いたずらに他者に振り回されるのではなく、人間関係を作る側になってほしいと思います。
私自身、これまで「先義後利(せんぎこうり)」という言葉をモットーに仕事を続けてきました。
まず道義を優先させ、自分の利益を後回しにする精神を指す言葉です。最後には自分にも利益が回ってくることを信じて、まずは人から信頼されたり、頼りにされる自分を目指してみてください。
あと、面談では皆さんに「自分自身にリーダーシップを発揮してください」とお伝えしています。
働く上で、人をまとめたりリードする能力も大切ですが、その前に自分の目標を忘れず、自分自身をリードしてほしいです。自分をリードできるようになると、おのずと周りの人にもリーダシップを発揮できるようになるはずです。
「三方よし」をモットーに、あらゆる角度から飲食業界を支えると決意。
ーこれから赤阪さんが目指すビジョンを教えてください。
会社の規模が大きくなるにつれ、経営者は売り上げや自分の収益ばかりを気に掛ける傾向にありますが、先ほどお話しした「自分自身にリーダーシップを発揮する」ことを、私自身も忘れないように気をつけています。
現在掲げている理念を忘れずに、共感してくれるようなチームメイトを集めて事業を拡大することが、まずは利用者さまの幸せ、次に自分や従業員の幸せにつながると信じて邁進したいです。
現在、弊社では転職代行だけでなく、採用代行や人事代行の事業、他には「飲食店ドットコム」という求人サイトの代理店もおこなっています。
自分の経験を活かした多角的なサポートで、これからの飲食業界を支えていくことが私の目標です。
あと、「飲食店のオーナーになる」という夢も叶えたいですね。
お取引先や友人・知人には「早く開業しなよ」なんて言われるんですが、業界のさまざまな面をみてきたからこそ「じゃ、やります。ダメならやめます」というわけにはいかなくて……。でも、いつかは必ず自分のお店をオープンさせたいです。
ー最後に、飲食業界で転職を目指す方にメッセージをお願いします。
今の時代の転職活動は、まず「情報」ありき。しっかり情報収集して、自分に合うお店や企業を見つけていただきたいです。
これまで転職の面談や、面接官として5,000人以上の方とお話ししてきましたが、やはり「自分自身の希望や考えを、自分の口から明確に説明できる」というのは大きな強みだと感じます。
情報収集のあとは第三者との対話で、自分でも気づいていなかった本音や願望を知って、自分の現在地をしっかり確かめてください。そこまで準備してから転職活動をおこなうと、スムーズに自分の希望を叶えられるのではないでしょうか。
まずはじめにご家族やご友人とお話しをされて、いき詰まることがあれば、私たちプロの転職アドバイザーがいつでも皆さまのご相談をお待ちしています。