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インタビュー

異なるジャンルをつなぐ「華舞師」 掛け合わせの中で生まれるオリジナル/山本芙沙子

本日は、いろんな働き方がある中、自分だけができること、オリジナルとオンリーワンを貫く「華舞師」山本芙沙子さんにインタビューをしました。

踊りながら花をいける「華舞」。華舞のきっかけを通して独自のものを生み出す考え方の秘訣をはじめ、コロナ禍でお仕事が減った中、できることを模索し、どう突き進んだか。何か一歩踏み出したいけれど前に進めない。そんな方に向けて、コロナ禍での心の持ち方にも触れながらお話していただきました。

■プロフィール
山本芙沙子(ヤマモト フサコ‥1980年10月30日生まれ。愛知県岡崎市出身)
幼少期からバレエをはじめ、多ジャンルのダンスに触れる。
大学は日本女子体育大学体育学部運動科学科舞踊学専攻。
大学院中は舞台の制作会社や劇場へインターン
卒業後は舞台制作関連会社に就職。その後、フリーランスで舞台制作の仕事を経験し、舞台公演のお祝花・楽屋花専門店「flower shop scaena」を開業。
踊りの中で花をいける「華舞師」として活躍。海外コンペ受賞歴あり。

華舞のきっかけ〜ミックスから生まれるオンリーワン〜

踊りの中で華をいけあげていく「華舞」をされていますが、これまでの山本さんの経歴を教えてください。

子供の頃から舞台を観ることと踊ることが大好きで、舞台に関して学べる大学に入りました。入学したのは体育大学の舞踊学専攻。周りの友人は様々なジャンルのダンスのプロになる人が多かったです。

稽古場に籠って黙々と練習し続ける同級生たちを見て、「自分はあんなにストイックに戦い続けることはできない。でも彼女たちや舞台業界に役立てるような仕事がしたい」と思うようになりました。芸術と社会の関わりに関心があったので、幼少期からの舞台への情熱を発揮できる場として舞台の関係のスタッフになろうと決めましたね。

大学院を卒業し、舞台制作関連の会社に就職した後、ダンス公演の制作業務をフリーランスではじめました。日本代表するバレリーナさんや世界的に活躍されているダンサーさんの仕事を目の前で見ることができ、充実していました。
ただ、第一線で表現し続ける舞台人の方たちと関わる中で、よりダイレクトに作品作りをしてみたい、自分自身の表現手段を模索してみたいという気持ちも湧いてきました。

とある日、弟の家の近くの商店街で、ひゅっといけてある生け花をみて宇宙を感じたんです。ダンスに通じる現代アートのような美しさを感じて、すぐに生け花を習いはじめました。植物に触れ作品をつくる生け花はとても楽しかったので、ただ教室で習うだけでなく、より直接的に社会にお花を届けたい想いが募りました。

そうだ、お花屋さんなればお花を社会に届けられる!と思って、まず花屋で修行して、その後ネットショップで独立しました。
初めは、「日常に花を。」曖昧なコンセプトの花屋だったんですよ。旦那さんが学生起業をしていて、「仕事をしていく時には自分の長所と世の中の必要とされてるところがリンクするところで働くといいよ。そうすると生き生き働けるし、お役に立てるよ」と言ってくれて……。

自分の長所と社会の需要を意識し直しましたね。自分の長所・強みは「舞台への情熱と専門性」と思い、舞台花専門店に決めました。

舞台俳優さんの似顔絵を描いてつけたり、衣装とできるだけ同じ素材のリボンを手配し、世界にひとつだけのオーダーメイドアレンジメントを作っています。

大学まで踊り続けていましたが、社会人当初は、制作事務所と花屋。「踊る」ことは離れていますね。花屋と華舞はどう繋がっていったのですか。

舞台専門の花屋なので、お客さんから舞台映像などが送られてきて「何分何秒のこのポーズを切り抜いて入れてください」とオーダーされます。舞台の映像をみているうちに「あれ、私舞台に立つ人だったよね」と思い出したんです。

当時久しぶりに10年間見ていなかった宝塚を見たことも舞台に再度立つきっかけになりました。

3年間ミュージカルを目指して踊りと歌と芝居をしていました。小劇場にでたり、大きな舞台で憧れの演出家さんの作品にアンサンブルキャストとして出演したりもしていました。
ただ、ダンサーも役者もの倍率は高くこのまま普通にしていてもこれ以上仕事をもらうことは難しい。どうやったら自分の特性を伸ばしていけるのか考えました。

ある日『ユダヤ人大富豪の教え』『大好きなことをやって生きよう!』の著者本田健さんのセミナーに参加し、勇気を出して質問しました。

「私は花屋さんをやりながら舞台に立っています。どちらかを伸ばしたほうがいいのか。どういうふうにやっていくとより自分の人生が広がっていくでしょうか」

本田健さんの答えは、「二つ同時にミックスしてやったらオンリーワンになれるかもしれないね。踊る花屋さんとか……。」

こんなふうに、と本田健さんがセミナーのステージ上のお花の前で踊るふりをしてくださったことを今でも覚えています。本で読んでいたあの本田健さんがそういうなら私それやりますと覚悟を決めました。これが「華舞」のきっかけです。

質問を終えて座ると、隣の隣に大手結婚相談所の役員さんがいらして「あなたよかったらうちのクリスマスパーティーで踊ってくれないかしら」と声をかけていただきました。

その場でクリスマス婚活パーティーのお仕事がきたわけです。
「今やろうかなと決めところで……。当日まで全力で準備しますが大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ。あなたならできると思うわ」
セミナーが夏だったので次のクリスマスまでの間に必死で練習をしましたね。

華舞の魅力〜流れる時間と積み上がる時間ー時間軸の交錯〜

「華舞」ではどんなことを意識していますか。

踊りながらお花をいけたことないので、どうやったらできるか、お花の師匠やダンスの師匠、いろんな方に相談しながら作り上げていきました。

お花を物理的にさっといけられるように、そしてダンスの流れの中で表現や気持ちが途切れないように、この2つの側面を構成していくのが難しかったです。

通常、お花をいける時は、お花をオアシス(お花用のスポンジ)に差し込むときに動きにひっかかりがでますが、その動作がダンスの動きの中では美しくない。

そこで、すっと動きの中でお花を挿せるような挿し口をオリジナル開発しています。お花用のスポンジや、時にはホース、排水管、鉄パイプ、ガラス瓶などパフォーマンスにテーマに合わせて素材を選び、挿しやすい挿し口をあらかじめ作っています。

また、どうしても花を挿す動作に入るときに、日常に意識が戻ってしまうことがあり、踊りの動きの中で挿す動作をいかに美しく、かつ動きや感情の流れの中で必然性があるようにするか。作品を構成する上でなかなか難しいことですが、やりがいも感じます。

「華舞」の魅力は何ですか。

ダンスは音楽と一緒で流れていく。一方、お花はいけると時間軸と逆行して出来上がっていく。流れていく時間と、積み上がっていく時間が交錯しているのが私の中で面白い部分だなと思っています。

全体としていつも思うのは、私たち人間は自然の一部であること。
お花は自然の一部、自然のかけらで、それをお借りして踊っている。人間の身体も自然の一部で、自然とともにあると思っているので、そういった自然の美しさと花の美しさ、両方の魅力を感じてもらえると嬉しいです。

また、舞台の社会に生きている人とお花の社会で生きている人が一緒になれたらと思っています。通常、舞台芸術の業界とお花の業界は交わらない。

枠組みに囚われず境界線を超え、異なるジャンルを交差させたい想いは強いです。お花好きな人にも楽しい、ダンス好きな人にも楽しい。いろんな人が交わるような世の中になっていったらいいな、と思っています。

コロナ禍で世界進出〜今できることに目を向ける〜

海外コンペの受賞歴もありますが、「華舞×世界」はどうやって生まれましたか。

クリスマス婚活パーティーから始まって、その後は友達のご縁でお仕事をいただきました。佐賀の老舗旅館「和多屋別荘」での和のサーカスへの出演ご依頼を直接いただいたほか、関西や福岡など様々な地域で出演しました。

ただ、コロナを機に自分の舞台も無くなり、仲間の舞台もお休みになった。自粛期間、なにをしたらいいのか、考えましたね。

海外が先にロックダウンしたので、当時、海外のアーティストさんたちが作った動画やダンスレッスンがSNS上にたくさん流れてきました。

みんなが家で私も家。みんな平等な環境の中、国やコロナへただ愚痴をこぼして毎日を送る人もいれば、海外のアーティストさんのように、新しいオンラインの方法を工夫しながら作品をアップしてる人もいて……。

みんな同じ平等な空間で、人生有限な時間を愚痴って過ごすか、有意義な選択をするか。自分で何をするかは選ばないといけないと思いましたね。

いろんな衣装やカツラ、資材を買って自宅撮影をはじめました。撮ったあと、自分の動画作品をSNSの友人以外にも観てもらうのはなかなか難しいことに気が付きました。まず、日本の動画コンペを探したのですが、うまく応募できるものが見つからず、海外のコンペを探して応募しました。

外の劇場で公演したいという想いは昔からあって、劇場関係のルートを探していましたがなかなか具体的になりませんでした。
しかし、コロナの自粛をきっかけに海外の映像コンペという新しい道がひらけました。私にとっては、海外が一気に身近になりました。今後も海外で華舞のパフォーマンスを広げたいと思っています。

最後に自分の道をあと一歩踏み出せない人へのメッセージはありますか?

ひとまずやってみる。やってみてダメだったら別のやり方を模索する。環境やあらゆることへのもどかしさ、悔しさを一つ行動に起こすことを私自身は意識しています。

私はコロナを体験して、仕事がなくなった時にとても悔しかったんです。そこで何かできることやらなきゃと思い、華舞の動画制作を始めました。悔しさをバネに行動に起こせないか、自分に問いかけています。

動画制作の勉強をはじめたときも妊娠がわかり、仕事がなくなった時でした。
とても楽しみにしてた舞台や映画のお仕事があったのに、妊娠を機に急遽降板することになり、関係者の方々に申し訳ないやら、悔しいやらで混乱していたのを覚えています。

ただ、子供は欲しかったから妊娠したのはとても嬉しかった。子どもがお腹にいる間だからこそできる幸せな作品を作ろう、今こそ自分だけの表現手段を作り上げるときだ!と、気持ちを切り替え、妊娠の動画作品を作ろうと勉強を始めましたね。

誰かの批判や環境への批判を言いたくなりがちですが、その状況でこそできることがあるんじゃないか。悔しさをエネルギーに変えて新しい行動にしていけるように心がけています。

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Written by

首藤響子

首藤響子

子育てママライター。専業主婦・子育てをきっかけに自分軸で生き直す。子育てをしながら「個」育てをしているママのインタビュー集も自身でスタート。自分らしい生き方を模索する人が好きです。ママのキッカケの場づくりも運営中。

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