就活生のみなさんは「自己推薦書」というものをご存知でしょうか。自己推薦書とは、企業に向けて自身がどんな人間かをより詳しく知ってもらうために有効なツールです。今回は、その内容や例文、目的と必要な準備などを解説します。これから就活に挑む方は、ぜひ参考にしてください。
自己推薦書ってなに?
自己推薦書とは、その名のとおり「自分で自分を推薦する書類」です。「ただの自己紹介なのでは?」と思われるかもしれませんが、自己紹介文と自己推薦書は全く異なります。
自己推薦書は、あくまでも自身のセールポイントをアピールするために作成するものだからです。では、具体的にどのような内容を書けばよいのか、何を目的に作成するのか解説します。
自己推薦書に書く内容
自己推薦書には、自身のセールスポイントを記載すると申し上げました。しかし、ひと言でセールスポイントといっても、自由に書けばよいということではありません。たとえ本当に自身の強みであっても、企業に就職した後に役立つようなセールスポイントでなければ、面接でアピールする意味がありません。
よって、自身の強みとしてアピールできる点が、具体的にどのようなものでそれがビジネスではどう活かせるのかを記述する必要があるでしょう。
自己推薦書を書く目的
自己推薦書を書く目的は「会社にとって有益な人材である」と企業へアピールすることです。自己推薦書は、戦力になれることや必要なスキルを持っていることを、書類を通して伝えるために作成します。
そのため、提出先の企業が求める人材と、自身の強みがマッチしていなければなりません。つまり、他の企業では役立つスキルであっても、提出先の企業で必要とされていなければ意味がないということです。
自己推薦書を書くには準備が必要!
自己推薦書は、自身の強みをアピールするだけなので容易に作成できると思われがちです。しかし、説得力のある自己推薦書を作成することは、それほど簡単ではありません。しっかりと事前に準備したうえで、作成する必要があるのです。
ここでは、自己推薦書作成前におこなうべき「長所のリスト化」「裏付けエピソードの作成」「自己分析」といった3つの準備について説明します。
自分の長所をリスト化しよう
自己推薦書を作成するには、何よりも自身の強みを知ることが一番です。自身の長所とはどんな点なのか、じっくりと考えてリスト化してください。
「自分自身ではわからない」という方は、家族や友人に協力してもらうのもよいでしょう。客観的な意見を取り入れることで、説得力のある自己推薦書が作れます。
またその際は、家族や友人がなぜそのように思ったのかという理由も合わせて尋ねておくと、後々のエピソードが作成しやすくなります。
裏付けエピソードをまとめよう
自身の長所をリスト化したら、それぞれの内容を裏付けるエピソードを考えましょう。このエピソードは、企業に対する主張の根拠となるため、非常に重要な部分です。根拠がなく、ただ「ここが強みです」とアピールしても独りよがりな主張となってしまい、かえって印象が悪くなってしまう恐れがあります。
そして、裏付けのエピソードは、できるだけ具体的な内容にすることがコツです。抽象的な内容の場合、受け取る方によって捉え方に差があるので、あまり説得力をもたせることができません。
自己分析をしよう
次に自己分析をおこないます。この段階で、人格診断などを受けてみることもおすすめです。診断結果をリスト化した長所にプラスすることで、主張に客観的な事実を添えられるでしょう。
また自己分析は、自己推薦書を作成しない場合にも有効です。自身に向いてる職業や強みを客観的に知ることができるため、その後の就職活動に大きく役立ちます。
長所を見つける自己分析の方法
自己分析にはさまざまな方法があり、上手に行えば、これまでに気づかなかった性格や強み・弱みを発見できます。
自分史の作成やマインドマップ、ジョハリの窓など、紙とペンを用意するだけで簡単にできる方法があるため、いくつか試してみるとよいでしょう。
ここでは、すぐに試せる自己分析の方法を3つ紹介します。
自分史
自分史とは、これまでの人生を時系列に整理してまとめたものです。自分史を作ることで自分を客観的に見つめ直し、強みや弱みを見つけられます。
自分史の作り方は簡単で、自分がこれまで経験してきたことを一覧にするだけです。これまで目標にしてきたこと、努力してきたことなどを洗い出し、書き出していきましょう。
就活で自分史を作成する場合、小学校や中学校など、それぞれの時代ごとに区切ると作りやすくなります。
(自分史の作り方)
- 小学校、中学校、高校など、時代ごとに区切った表を作成する
- 表の枠のなかに、その時代の出来事やエピソード、好きだったこと、嫌いだったことなど思い出せることを書き出す
- それぞれの出来事に対し何を得たかという問いかけをしながら、思いつくままに書き足す
マインドマップ
マインドマップとは、思考プロセスを反映させる手法のことです。普段自分が考えていることや大切にしていること、どのような原理で行動しているのかなどを可視化できます。思考の整理や、アイデアの創出などに役立つ方法です。
(マインドマップの作り方)
- 無地の用紙を横長に置き、中心にメインテーマとなるキーワードを書く
- 自己分析の場合のキーワードは「自分自身」などが適切
- テーマから関連する言葉を考え、放射線状につなげていく
ジョハリの窓
ジョハリの窓とは、「自分から見た自分」と「他人から見た自分」を分けて分析する手法です。以下のような4つの性質に分け、自分と他人の認識がどのようにずれているかを理解します。
- 解放の窓:自分も他人も知っている自己の性質
- 盲点の窓:自分は気づいていないが他人は知っている自己の性質
- 秘密の窓:自分だけは知っていて、他人は知らない自己の性質
- 未知の窓:自分も他人も知らない自己の性質
ジョハリの窓の分析は、4〜8人の参加者を集めて行います。各自が4つの窓を表にした用紙と性格を書き出す用紙を作り、性格を書き出す用紙は「自分用」「他のメンバー用」の2枚用意します。
まず、性格を書き出す用紙の「自分用」「他のメンバー用」それぞれに、思いつくままの性格を書き出し、書き出した項目を「4つの窓」に分類していきましょう。
分類は、以下のように行います。
- 自分と他者が両方選択したもの:開放の窓
- 他者のみが選択したもの:盲点の窓
- 自分のみが選択したもの:秘密の窓
- 自分も他者も選択しなかったもの:未知の窓
分類したら、全員でフィードバックを行います。自分が他者に認識されているもとになる行動は何かなど、ディスカッションしながら深めていきましょう。
自己推薦書の例文3つ
準備を整えていざ自己推薦文を書こうと思っても、見本がなければなかなか難しいものです。他の就活生はどのような自己推薦書を作成しているのでしょうか?
ここでは、自己推薦書の例として、結果の裏付けがある推薦書や学生生活でのエピソードを交えた推薦書、資格取得に向けたエピソードを語った推薦書の3つを紹介します。
例文1.結果の裏付けがある自己推薦書
ディベートでは、ひとつの物事に対し、メリットとデメリットの両面を分析し、そのどちらについても自身の理論に正当性をもたせることが必要となります。
私はこの取り組みのなかで、反対の立場にある者も説得するスキルを身につけました。その結果、関東大会ではMVPをとることに成功しました。
これから御社で働くなかで、チームをまとめ引っ張っていく機会があるかと思います。そのようなときも、私はこの経験を活かし、反対意見もまとめ上げていける考えています。
大会での成績などは、説得力もありアピールしやすいものです。ぜひ自己推薦書に含めてみてはいかがでしょう。
例文2.大学生活をベースにした自己推薦書
学生時代に私が働いていた飲食店は常に人手が不足しており、担当ではない業務も積極的におこなう必要がありました。
私はホールとして働きながらもキッチンなど他のエリアにも気を配り、積極的にサポートに入っておりました。私はこの経験から、周囲のことを考え臨機応変に対応するスキルが身についたと感じております。
アルバイトなどの経験を語るエピソードは、採用担当者から見ても、職場に置けるその人の人物像が想像しやすいものです。上の例文は、この人が能動的に仕事を見つけられる人材であることがよく分かります。
例文3.資格取得のエピソードを添えた自己推薦書
大学1年生の頃から、就職活動を意識し「日商簿記2級」を取得しました。資格取得へ向けた勉強は、毎日2時間ずつおこないました。しかし、一度目の試験では不合格となってしまい、勉強の仕方を見直しました。
アルバイトなどもあるなかで、時間を確保することは大変でしたが、くじけずに続けた結果、2回目の試験で合格できました。
私はこの経験から、継続することや、場合によってはやり方そのものを見直すことも必要なのだと知ることができました。
資格試験なども大会と同様に結果がわかりやすいため、エピソードとしておすすめです。また、ただ勉強を頑張ったのではなく、計画して実行し、結果を分析しつつ改善策を考えるという、社会人として必要な「PDCA」が自然にできていることもアピールできます。
自己推薦書の良い例・悪い例
ここまでの内容から、自己推薦書はただ書けばよいものではないということがお分かりいただけたでしょう。内容によっては、かえって採用担当者にマイナスな印象を与えてしまう「悪い自己推薦書」もあります。
では、良い自己推薦書と悪い自己推薦書の間には、どのような差があるのでしょうか。ここでは自己推薦書の良い例と悪い例、それぞれの特徴について解説します。
良い例
企業の採用担当者にプラスな印象を与える「良い自己推薦書」に共通する特徴は以下のとおりです。
- 具体性がある
- 結果がわかりやすい
- 人材のイメージしやすい
- 困難や挫折にどう対応する人材なのかが分かる
採用担当者が気になっているのは「どんな人なのか」ではなく「どんな人材になり得る人なのか」という点です。そのことがイメージしやすいエピソードを添えることで、より効果的な自己推薦書に仕上がるでしょう。
悪い例
反対に、悪い例の特徴とはどのようなものなのでしょうか。以下の4つに該当する自己推薦書の場合は、見直しの必要がありそうです。
- 主張が複数ある
- 結果までの過程が不明瞭
- 具体的におこなった行動がわからない
- 企業でどう活かせる強みなのかわからない
主張が複数あると、1つひとつの根拠が薄くなってしまいがちです。その結果「結果に繋がる過程部分が抜けている」「何を実行したのかわからない」など重要な部分が不明瞭な自己推薦書になってしまいます。
また、企業でどう活かせるのかをはっきり伝えなければ、面接においてのアピール力は弱いでしょう。
自己推薦書を作るときのポイント
自己推薦書を作る際は、アピール内容を絞る、話に一貫性を持たせるなど押さえるべきポイントがいくつかあります。
エピソードの裏付けに固有名詞や数字を明記したり、具体的なエピソードを盛り込んだりすることで、担当者に与える印象はだいぶ変わるでしょう。
ここでは、自己推薦書の作成で注意すべきポイントを6つ紹介します。
アピールすることを1つに絞る
アピールポイントは、できるだけ1つに絞りましょう。アピールを強めたいあまり複数の強みを並べてしまうと、伝えたいことが曖昧になる可能性があります。一番伝えたいことを明確にすることが大切です。
どうしても絞れない場合は企業が求める人物像や価値観、社風を調べ、それに沿ったアピールポイントを選ぶようにしてください。
話全体に一貫性を持たせる
自己推薦書は全体に矛盾することなく、一貫性を持たせることが大切です。書き進めるうちに、主張がぶれてしまわないようにしましょう。
例えば、自己分析のあとに裏付ける具体的なエピソードを書いたものの、異なる人物像をイメージさせてしまうことがないよう注意してください。
一貫性がない場合、「自己分析ができていない」「正直に書いていない」と判断されてしまう可能性があります。しっかり文章の構成を整えてから、作成するようにしましょう。
完成した自己推薦書は自分で読み返すだけでなく、第三者に読んでもらうことをおすすめします。
固有名詞や具体的な数字を明記する
アピールポイントの信憑性を高めるため、固有名詞や具体的な数字を明記することも大切です。抽象的な表現は説得力がなく、定型文をコピーしているような印象を与えます。
「◯◯賞を獲得」「◯◯の資格を取得」といった固有名詞や、「イベントで〇人以上の集客を達成」などの数字を示すとリアリティのあるアピールになり、担当者の印象に残りやすくなります。
盛り過ぎには注意する
積極的にアピールしたいからといって、盛り過ぎはNGです。書類選考は通過しても、面接で具体的に質問されて盛り過ぎていることが発覚した場合「自分について適切に理解できていない」など、マイナスの評価をされてしまう可能性があります。
しっかり自己分析を行い、あくまでも客観的な視点で企業の求める人物像と一致する強みをアピールするようにしましょう。
具体的なエピソードを盛り込む
自己推薦書に具体的なエピソードを盛り込むことで、他の就活生と差別化が図れます。得意なことや強みを主張しても、それを裏付けるエピソードがないとうまくアピールできません。
具体的なエピソードはアピールポイントを裏付け、担当者の印象に残りやすくなるでしょう。
また、その企業でなければならない理由についても、具体的なエピソードが必要です。企業分析をしっかり行い、それに沿ったエピソードを選びましょう。
会社の利益に貢献できることを示す
自己推薦書ではスキルや強みをただ書くのではなく、それが会社の利益にどう貢献できるかを示すことが大切です。「自分の持つ強みを入社後にどう活かせるか」という視点から書くようにしましょう。
高いスキルや強みをただ並べるだけでは、「自社ではどう役に立つのか」と疑問に思われることもあります。
スキルや強みを企業の業務で具体的にどう活かしたいのかを書くとともに、「〇〇を活かし、御社の〇〇という目標達成に貢献したい」といった覚悟も伝えるとよいでしょう。
企業にアピールできる自己推薦書を作ろう!
自己推薦書について、書き方や目的、例文、良い例、悪い例などを解説しました。具体的なエピソードを含んだ自己推薦書は説得力があります。
これから就活だという方は、ぜひここまでの内容を参考にして効果的な自己推薦書を作成してください。