2012年に児童福祉法が改正されてから、全国に急増している「放課後等デイサービス」
障がいを持つ未就学の0歳児から18歳の高校生までの子どもに対して成長を促す療育支援を行う福祉施設です。
放課後等デイサービスの役割として、障がいのある子どもへの支援に加え、子育てに不安を感じているご家族への支援も期待されています。しかし厚生労働省の資料(※1)にも記載されているように、障がい児に対する支援が不十分な放課後等デイサービスもあるのが現状です。
「障害のあるなしに関わらず、子どもの可能性をとことん支援したい」
放課後等デイサービスnicolaboを運営する株式会社エルの代表取締役、北彩香さんはそんな思いでnicolaboを立ち上げました。
障がい児を育てているご家族から高く評価され、学校の教員からの見学希望も相次ぐnicolabo。その魅力について、代表取締役の北さんと施設管理者の林麗冴(はやしれいあ)さんにお話を伺いました。
写真左:北彩香(きたあやか)
公立保育園に7年在籍した後、株式会社エルへと転職。
放課後等デイサービスnicolaboの立ち上げから携わり、施設管理者を経て2021年4月に同社代表取締役に就任。
写真右:林麗冴(はやしれいあ)
3年間の民間保育園での保育士勤務を経て、nicolaboにて2年間業務を経験。
2021年4月より管理者兼児童発達管理責任者となる。
放課後等デイサービスnicolaboを立ち上げた経緯を教えて頂けますか?
北さん
公立の保育園に勤務していたころ、知人から「放課後等デイサービスをしてみないか?」とお声がけ頂いたのが最初のきっかけでした。
それまでは障がいのある子どもたちと深く関わったことがなかったのですが、いい機会だと思い、地域の放課後等デイサービスをいくつか見学に行きました。
それぞれの施設の方針ややり方はあると思いますが、見学をしていく中で「もっといい療育や支援ができるのではないか」と感じました。公立の保育園では勉強や研修がしっかりしていたので、その経験もうまく活かしながら自分なりのやり方で障がいのある子どもたちと向き合ってみたいと思ったのです。
そんな折、当時の株式会社エルの代表から児童福祉のサービスを新たに始めたいというご相談を頂き、放課後等デイサービスをゼロからやってみようと決めました。
とにかく子どもが楽しく成長できて、毎日でも通いたくなるような場所を作りたい。そこで学校でも取り組む勉強や運動ではなく、子どもの集中力や柔軟性を楽しみながら養えるキッズヨガを放課後等デイサービスのコンセプトとして取り入れました。
見学に行った放課後等デイサービスの中に、キッズヨガを子どもたちへの療育にうまく取り入れていた事例があったのも大きかったと思います。「障がいがある子どもたちでも、工夫すれば色んなことにチャレンジできる」と体感できたんです。
ゼロから作っていく大変さはありましたが、何もないところからスタートしたからこそ自分たちの考えるよりよい療育支援への工夫がしやすかったと思います。
障がいのあるお子さんがいるご家庭では、多くの方が子育てに悩んでいます。他の人に相談もしにくいため、ストレスを抱え込んでしまうのです。我が子に対してどんな接し方をすればいいのか、家族だからこそ悩み傷つくこともたくさんあります。
私たちは支援のプロとして、ご家族の皆さまに安心して子どもを預けて頂き、「おかえりなさい」と笑顔で迎えられる環境作りをお手伝いしたいと思っています。
そのためにも、ご家庭では難しい子どもへの支援も積極的に行いますし、お父さん・お母さんの様子に気を配り、ときには電話などでお悩みをヒアリングさせて頂くこともあります。
ひとつひとつは小さな積み重ねですが、ご家族の皆様が頼りやすいようにコミュニケーションをとり、互いの信頼関係を築いていくことをnicolaboでは大切にしています。
放課後等デイサービスnicolaboでのお仕事について教えて下さい。
北さん
nicolaboを利用している子どもは現在32名です。未就学児と小学校低学年がほとんどですね。
放課後等デイサービスの数が増えた分子どもが集まりにくく1日の利用が5~7名程度という施設が多いと聞きますが、nicolaboでは毎日定員いっぱいで10名〜のお子さんに通所頂いています。
支援体制としては、子ども2~3名に対してスタッフ一名です。保育士や教員免許を保有しているスタッフが総員10名で子ども達の療育に携わっています。1日の業務は、基本的に次のような流れになります。
朝の朝礼
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保護者の方や学校からの申し送りと1日の流れを共有
↓
10時半~12時頃まで、子どもたちを校園所へとお迎え
↓
宿題やおやつタイム、キッズヨガ、公園遊びなどの活動を行う
↓
夕方、各ご家庭に子どもたちを送り届ける
林さん
私がnicolaboに就職するきっかけになったのは、当時働いていた専門学校の先輩からの勧めでした。
和歌山から大阪に引っ越すにあたって転職先を探していた時に「職員の人達もみんないい人だし、いろんな取り組みができる楽しい職場だよ」という話を伺ったので、採用面接を受けることにしました。
以前に働いていた保育園では、新しいアイデアを出しても「今までにしたことがないから」という理由で却下されることが多かったのですが、nicolaboならもっと色んなチャレンジができるのではないかと思ったのです。
実際、nicolaboで働きはじめてからはやりたい!と思ったアイデアを次々に実現できているのでわくわくします。
たとえば、子どもたちの作品展では「海の生き物」というコンセプトを決めて、みんなで海にまつわる様々な作品を作ってみたり、パラシュートとバルーンを組み合わせたパラバルーンをレクリエーションに取り入れたりしました。
保育士でも放課後等デイサービスについて詳しくない人も多いと思いますが、保育園以上に子どもたち一人ひとりと長く付き合えるので、彼らの成長を実感できる機会が多いです。
楽しいことには前向きな子どもたちをいかに飽きさせずに盛り上げるか、私たちの企画力や創造力、コミュニケーション力が常に問われますね。
代表の北は仕事に対しては妥協のない人ですが、私たちのがんばりを正当に評価して褒めて下さいます。それもあってスタッフ全員、高いモチベーションを保ちながら日々の仕事に取り組んでいます。
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障がいのある子どもへの療育で、どのような点を特に意識されていますか?
北さん
障がいを持っているかどうかで、子どもたちの可能性を勝手に狭めないことは常に心がけてます。
特性に対する配慮は必要ですが、「障がいがあるから仕方ない」という思い込みは子どもの成長を妨げるだけです。
たとえば、靴を脱ぎっぱなしにしている子どもがいたら、どんな障がいがある子でもきちんと指導します。しつけや礼儀の面は、他の放課後等デイサービスよりも厳しいですね。
細やかな指導を繰り返していくと、障がいの種別や軽度・重度を問わず、子ども達は挨拶や集団行動ができるようになります。大切なことは、子どもたちに接する私たちが諦めないことです。
たとえば、6年間入浴やトイレトレーニングがうまくいかず、ご家族も対応に悩み続けていた子がいました。お母さんが体をふいてあげて、おむつをはかせている状態です。nicolaboに来てくださった時に「このままではいけない」と思いました。
まだ低学年で体格も小さかったので、スタッフでも対応できると判断し、その子が来所する度に浴槽に入る練習やトイレトレーニングを続けました。その子の人を大きく左右する生活動作の習慣化を私たちがお手伝いできるラストチャンスだろうと思ったのです。
かまれたり引っかかれたりしても諦めずに繰り返した結果、わずか3カ月ほどでその子は普通のパンツを履けるようになり、お風呂も入れるようになりました。
nicolaboに通ううちに、他の子やスタッフとも関われない内気な子もだんだん活発で明るくなります。私たちの仕事は、障がいに隠された子どもの可能性をどんどん引き出していくことだと考えています。
放課後等デイサービスnicolaboの今後の取組みやビジョンを教えて下さい。
北さん
ありがたいことに現在もnicolaboへの通所希望のお問い合わせをたくさん頂いています。
通所待ちの子どもたちをより多く受け入れられるように、年内に放課後等デイサービスをもう一箇所展開していく予定です。
いずれは小規模保育園なども増やしながら、子育ての課題を抱えた地域のご家庭に寄り添ったサポートや支援を届けていきたいですね。
そのためには行政との連携も必要だと思いますので、丁寧な情報共有を今後も行っていきたいと思います。
施設を増やせば、その分支援するスタッフの質も重要です。
普通の保育園だと上下関係やルールが厳しいところが多いのですが、私たちは小さな会社だからこそ、みんなのやりたいことをなるべく取り入れていきたいですし、やる気がある人ならどんどんトップへ上がれます。実際、林は最年少で施設管理者になりました。
子どもたちを引っ張っていく仕事だからこそ、スタッフのみんなには笑顔でいてほしいと常々思っています。だからこそ、nicolaboではファッションはある程度自由ですし、キッズヨガの関係でヨガやピラティスの先生をお呼びするので、先生たちがダイエットやボディメイクも楽しめる機会を作っています。
きれいでいられる自分を楽しみながら、子どもたちと一緒に楽しんで成長していける、そんな場をもっと育てていきたいですね。
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