インフラエンジニアはサーバーやネットワークなどIT基盤を扱う仕事です。システムの稼働に必要不可欠であるため、安定的な需要を期待できるのが魅力。今回は仕事内容や種類、必要なスキル、年収などを紹介します。
インフラエンジニアの仕事内容と種類
インフラエンジニアは、サーバーやネットワークといったIT基盤の設計・構築・運用保守を手掛ける仕事です。担当する業務に応じていくつかの種類に分かれています。
ここではインフラエンジニアの基本的な業務の流れ、各エンジニアの具体的な仕事内容について解説します。
基本的な仕事の流れ
設計時は仕様書を作成し、満たすべき要件や必要な機能、予算や開発のスケジュールなどを決定します。次は仕様書に従って構築を進め、ハードウェアやミドルウェアをつなぎ合わせていきます。
構築後は正常に作動するか監視し、必要があれば保守運用を手掛けます。設計や構築は上流工程に、運用保守は下流工程の位置づけです。
新人エンジニアは下流工程を担当し、経験を積みながら上流工程へ進出していくのが一般的な流れです。
同じく開発や保守を行う仕事にシステムエンジニアがありますが、インフラエンジニアとは開発を扱う領域が異なります。
ユーザーが触る部分はシステムエンジニアが、触れられない部分はインフラエンジニアが担当するイメージです。
種類1.ネットワークエンジニア
ネットワークエンジニアはシステムやサーバーを接続し、データを送受信する通信環境の構築が仕事です。
基本的には描かれたネットワークの設計図に沿って、環境を構築していきます。ネットワークの規模によっては数ヵ月の時間を要する場合もあります。
通信時は不具合やトラブルに見舞われる可能性があるため、問題の箇所を見つけて修正・改善に向かう能力も必要です。
構築が完了した後は、機器の構成変更や設定変更など運用サポートまでエンジニアが担当します。
種類2.サーバーエンジニア
設計フェーズでは用途に合わせ、必要なサーバーの性能や台数を決定します。次は使用するOSやソフトウェア、パラメータの設計方法といった詳細の仕様を決めるという流れです。
サーバーエンジニアはWebサーバーやメールサーバー、ファイルサーバーなど、多様な電子機器を扱っています。
サーバー機器のラックへの固定、ケーブルによる他の機器との配線といった物理的な作業も伴うのが特徴です。
サーバーは24時間365日稼働する必要があるため、常に監視の作業が発生します。実際の監視はオペレーターが担当しますが、トラブルが生じた時は即座に駆け付けて対応が必要です。
種類3.セキュリティエンジニア
セキュリティエンジニアは情報セキュリティに特化した業務を担当し、社会全体でサイバー攻撃に対する脅威が高まる中、重要度が高い存在だと言えます。
セキュリティ機器の導入や、外部からのハッカーやウイルスの侵入を防ぐ仕組みを持ったシステムの構築がメインです。
ウイルスによって機密情報の漏洩やホームページの改ざん、ネットバンキングの不正利用といった攻撃を受けると甚大な被害につながります。
事件を起こした企業は社会的なイメージも地に落ちてしまうため、情報セキュリティの対応が重要になっています。
種類4.保守運用エンジニア
保守運用エンジニアはその名の通り、サーバーやネットワークの保守運用に特化したポジションです。
運用と保守はセットと見なされるケースが多いものの、細かな観点では違いがあります。運用とは構築したシステムが日々安定的に稼働を続けるために、監視や管理を行います。
一方、保守は障害対応をはじめ、トラブル対応がメインの仕事です。障害の原因を特定しシステムを再開まで持っていく他、アップデートやパッチ運用(バグ発生時に使われる修正ファイルのこと)も担います。
運用も保守もシステムに対する深い知識が必要となるため、両者を兼任する場合が少なくありません。
インフラエンジニアの魅力
インフラエンジニアは待遇面が魅力的な仕事の一種です。IT基盤の設計・構築・運用保守の業務は安定的な需要を見込めるほか、得られる年収としても恵まれた水準です。
ここではインフラエンジニアで働く魅力について詳しく解説します。
安定した需要が見込める
インターネットに接続している状態が当たり前になった現在、その基盤を担うインフラエンジニアに対しては安定的な需要が見込めます。
今後は、サーバーを自社で保有するオンプレミスからクラウドへの転換が進むと見られています。
将来的にはクラウドへ乗り換える企業はあると考えられますが、当面の間はオンプレミスへのニーズも残り続けるでしょう。
基本的なITインフラの考え方には変わりないため、クラウドに移行した後もオンプレミスで身に付けた知識や技術がムダになるとは考えにくいです。
IT業界の中でも比較的年収が高い
インフラエンジニアは専門性が求められる職種であるため、比較的高い水準の年収を得られます。経験を積むにつれ、マネジメントに携わったり上流工程に進出したりすれば、より年収をアップさせられます。
若いうちから高収入を得たい人は、資格の取得がおすすめです。年収アップに直結する資格の代表はLinux技術者認定試験(LPIC)です。
LPICは国際資格であるため、海外でのキャリアを検討している人にも適しています。
転職にはコツがある!
あなたの魅力が活かせる仕事。
インフラエンジニアに必要な知識や資格
インフラエンジニアは派手ではありませんが、多くの知識や技術が求められる仕事です。開発環境やプログラミング言語に関わる知識の他、さまざまなヒューマンスキルまで必要です。
また選考の通過角度を高めるためにも、資格を取得してアピールするとよいかもしれません。ここではインフラエンジニアに必要な知識や資格を紹介します。
IT関連の幅広い知識
ネットワークやサーバー、ソフトウェアなどの知識が必要です。こうした知識はサーバーの構築や運用保守など一連の作業工程を担う上で役に立ちます。
また、プログラミング言語の知識も必要となるでしょう。C言語をはじめ、OSやミドルウェア、データベースの構築が可能な言語まで扱えるようになれば、活躍のフィールドが広がります。
近年は仮想化やクラウド化に対するニーズが高まっており、仮想サーバーやクラウド関連の知識習得に励むのもおすすめです。
ヒューマンスキルも重要
インフラエンジニアにとって、技術力以上に重要といえるものがヒューマンスキル(人間力)です。
人間力は複数の要素に分解できますが、特に重要なのはコミュニケーション力や誠実さ、ポジティブ思考などが挙げられます。
仕事のコミュニケーションでは相手の立場や意見を考慮し、一方的ではなく双方向のやり取りを行うことが重視されます。
口が達者で弁論に長けているより、気遣いや想像力などの部分が大切だといえるかもしれません。
誠実さとは「嘘をつかない」「メンバーに隠し事をしない」といったことです。自分に悪いところがあれば素直に謝り、問題が生じたらごまかさず正確に報告しましょう。
ポジティブ思考は受容力や発想転換力ともいえます。予期せぬ事態が生じても事実を受け止め、前向きに対策を考え、実行に移す能力が必要です。
転職に有利な資格を列挙
インフラエンジニアへの転職に資格は必須ではありませんが、企業へのアピール材料にはなり得ます。基礎的な資格はITパスポートや基本情報処理技術者などです。
これらの資格を取得すればインフラエンジニアとして活躍可能だとは言い切れませんが、基本を身に付けるには適しています。
オラクル社主催のデータベースに関する試験「ORACLE MASTER」も有力な資格の一つです。
インフラエンジニアは業務でデータベース運用に関わる場面が多いため、ORACLE MASTERがあれば就職先の選択肢が広がる可能性が高いです。
先に紹介したLinuxのスキルを証明するLPICの取得も効果があります。Linuxは主にサーバー管理に用いられるOSであるため、スキルをアピールしたいなら有効です。
インフラエンジニアに向いている人の特徴3選
インフラエンジニアは「自分にスポットライトが当たらなくてもよいから社会に役立ちたい」という考えを持つ人に向いています。
また先を予測して準備できる対応力や、機械いじりが好きなことも必要な素質。ここではインフラエンジニアに向いている人の特徴を詳しく解説します。
1.自分に日が当たらない環境でも頑張れる
インフラエンジニアの特徴を端的に表すことわざは「縁の下の力持ち」です。サーバーやネットワークはシステムの稼働に欠かすことができない重要な部分です。
しかし、安定して動くのが当たり前なので、普段の利用時はユーザーから意識されることがほぼありません。それにも関わらず、トラブルが起きると率先して断罪されやすい損な役回りです。
自分のことは二の次で、世の中や人々のために頑張れる自己犠牲の精神が強い人が向いています。
2.先を予測してトラブルに対応できる
ITインフラは常に問題なく稼働する状態を維持しなくてはなりません。
つまり、システム構築の段階で起こりうるトラブルを想定し、先手を打つ必要があるのです。例えば、ユーザー数やアクセス数などを想定し、通信が途絶えることがない容量を確保します。
神ではないため完璧に未来を予測するのは不可能ですが、もしもの事態に備えて対策を打つことが重要な仕事です。またアクシデントが起きてしまったとき、早急に復旧させられる能力も求められます。
3.機械やシステムをいじるのが好き
インフラエンジニアは元々機械やシステムをいじるのが好きな人でなければ、継続して働いていくのは難しいでしょう。
担当しているシステムに何らかの原因で不具合が生じると、朝でも夜中でも構わずインフラエンジニアが呼び出されます。
睡眠が削られる機会も無きにしもあらず。好きでなければ嫌になって挫折してしまう可能性があります。
機器の配線や設置の作業が伴うため、モノ作りが好きな人はやりがいを感じられるかもしれません。
インフラエンジニアのキャリアパスや将来性
仕事を選ぶ上で欠かせない視点が将来性です。たとえ現状は需要がある職種でも衰退が予期される仕事についてしまうと、将来的に年収が上がらなかったり、下手したらリストラに遭ったりする可能性もあります。
ITインフラは、今までのオンプレミス型の開発からクラウド型へと転換が進むでしょう。したがって、クラウドの設計・構築・運用保守が可能なエンジニアは、将来性が高いといえます。
インフラエンジニアはキャリアパスのプランも豊富にあるため、安心して将来を考えられる仕事です。ここではインフラエンジニアのキャリアパスや将来性について詳しく解説します。
上流工程に進出してキャリアアップを狙える
インフラエンジニアのキャリアパスは、「プロジェクトマネージャー」や「ITスペシャリスト」など上流工程に進出するのが一般的です。
こうしたポジションは、企業に対して適切なITインフラを提案する役回りであるため、自ずと年収が上がります。
また、ITインフラの知見を活かして企業の経営課題を解決する「ITコンサルタント」や、システム全体のデザインを描く「ITアーキテクト」などを目指すことが可能です。
一方、インフラに関する技術を磨き、ITインフラのスペシャリストとして活躍する道もあります。資格を取得して専門性を高めていけば、高い年収の伸びを期待できるでしょう。
クラウド経験者への需要が伸びる可能性が高い
今後はサーバー環境がクラウド型へと移っていくと想定されるため、クラウド経験者は引く手あまたになる可能性が高いです。
AWSやAzure、GCPなどクラウドの主要な機能を理解し、設計・運用する力が求められます。
サーバーやデータベースなどは変わりませんが、クラウドサービス各社が提供する運用ツールを使いこなさなければいけません。
以前は機器の調達やインフラ環境の構築まで数ヵ月ほどの時間を要していましたが、クラウドの登場によって、瞬時に作業が完了するようになりました。
「インフラエンジニアを取り巻く環境は、クラウド登場以前と以後に分かれる」といっても過言ではありません。
未経験からインフラエンジニアを目指す方法
需要が大きなインフラエンジニアは、未経験からでも十分目指すことが可能な仕事です。
ただし知識ゼロの状態で選考にチャレンジしても見送りとなる可能性が高いため、事前に対策を施した上で臨む必要があります。
その方法とは、資格の取得およびプログラミングスクールの活用です。それぞれの具体的な説明をしていきます。
資格を取得して知識をアピールする
資格は客観的な知識のアピール材料として必要なだけでなく、自ら学習して成果を残せる人材だと伝える側面もあります。
IT系の資格は基本的なものであっても、決して難易度が低くありません。例えば基本情報処理技術者試験は合格率が30%を切ることもあります。
クラウドサービスに関する資格の取得も有効な方法です。例えば、Amazon運営のクラウドサービスAWSは国内トップのシェア率を誇ります。AWS認定資格は実用的なクラウド資格として役立つでしょう。
AWSはさまざまな資格に分かれます。基礎知識を証明する「クラウドプラクティショナー」やインフラ構築の基礎スキルを立証できる「ソリューションアーキテクト」などは、初心者向けの資格としておすすめです。
プログラミングスクールに通う
インフラエンジニアになるために必須だと言えるプログラミング言語を学ぶためには、スクールの利用が効果的です。
スクール選びで重要なポイントは、受講料金でしょう。しかし「安かろう悪かろう」との言葉がある通り、価格だけで選ぶのは危険だといえます。
カリキュラムやサポート内容も考慮した上、それに見合う料金体系かという視点が求められます。
「カリキュラムの質やサポート内容が良いか分からない……」という人は、スクールの実績を確認するとよいでしょう。
実績の指標には、受講生の転職成功率の高さや挫折率の低さなどが挙げられます。
インフラエンジニアはITの基盤を支える不可欠な仕事
インフラエンジニアは世の中に必要不可欠なIT基盤の構築に携わる重要な仕事です。表に立つ機会が少ないため目立つことはありませんが、誰かがやらなければ世界が成り立たない魅力的な役割を担います。
当たり前に存在しているものこそ、かけがえのない大切な要素なのです。インフラエンジニアは社会に貢献でき、やりがいを得やすい仕事だといえるでしょう。
「インフラエンジニアに興味が出てきたけど、自分が向いているか分からない」と思ったそこのあなた。
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