拘束時間が長く給与が低い美容師は、転職を検討する人が多い職業です。転職先には、現職で培ったスキルを活かせる接客・販売や営業職のほか、事務職やエンジニアもおすすめです。
今回は、美容師の転職理由や転職におすすめの業界・職種、アピールのポイントを解説します。
美容師によくある6つの転職理由
「働く美容師の7割が転職の経験がある」との調査結果も出ており、入れ替わりが激しい業界だといえます。彼らは今の職場のどこに不満を抱いて退職を決意したのでしょうか。美容師によくある転職理由を紹介します。
1.職場の人間関係が合わない
業界や職種にかかわらず、人間関係による転職は上位を占めます。美容師の場合、勤務場所となる美容サロンは狭く、共に働く同僚・上司との折り合いが悪いと息苦しさを感じてしまうでしょう。
華やかなイメージとは裏腹に体育会系の会社も多く、「先輩との関係がうまくいかない」と感じる人もいるようです。職場の雰囲気や働く人たちは、サロンごとにがらりと違います。今の職場で人間関係が合わなくても、勤務先を変えれば、悩みが解消される可能性は大いにあるでしょう。
2.給与が思ったより少ない
美容師は思ったより給料が少なく、家計を支えることが難しくなって転職を志すパターンが多いです。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、美容師の平均年収は330万円となっています。サラリーマン全体の平均給与が443万円のため、平均と比べて100万円以上低いのです。
下積み時代は少ない手取り額からカットで使う器具を調達する必要があり、とくに生活が苦しくなりがちです。スタイリストに昇格すれば昇給の可能性もありますが、その前に挫折して止めてしまう人も多いといえます。
3.会社に将来性を感じない
今のサロンでは叶わないことがあったり、働く環境の改善が難しかったりするために、転職を考える人もいます。事業拡大に取り組む職場ならまだしも、地方に構える店舗では将来性への期待が難しいかもしれません。
とりわけ「業績が低迷している」「離職率が高い」「長時間労働が多い」などの事情があれば、見切りをつけても仕方ないでしょう。
美容業界や美容師という職業自体に先がないわけではありません。美容サロンの数は多く、経営が傾いている美容室もあるため、将来性を危惧する美容師は一定数存在します。
4.休みが少ない・拘束時間が長い
サロンの定休日は月曜日または火曜日の場合が多く、週休1日制の職場が少なくありません。企業勤めのサラリーマンとは違い、土曜・日曜に休めず不満を抱く人もいます。長期の休みが取れずプライベートの充実が実現しにくく、嫌気が指して辞める若手の美容師も多いです。
そのうえ、閉店後にカラーやパーマ、カットの練習をするため、拘束時間が長い傾向もあります。アシスタントの期間中は、早朝から深夜まで通常業務と練習で忙殺されるのは不可避です。スタイリストも教育の役割があるため、閉店後もサロンで共に過ごす必要があります。
5.スタイリストへステップアップできない
なかなかスタイリストへ昇進できず、モチベーションが続かずに転職を検討する人もいます。アシスタントを脱するには、年単位で時間がかかるのが特徴です。カリキュラムや昇進試験に通過するまでは、いくら年数が経過しても昇進できないとするサロンもあります。
拘束時間が長く、低賃金での労働を余儀なくされるアシスタントは、転職を考えがちです。
6.手荒れなどの体調面に限界を感じた
美容師は、ハードワークの職業です。1日中立っていることが多いうえに、シャンプー剤やカラー剤などによる肌荒れを起こしやすく、体調面で限界を感じて転職を検討する人が少なくありません。
加えてシャンプー時や前髪を切る際など、中腰や前かがみの姿勢が多いのも特徴です。腰痛に悩まされる美容師も多く、体調面で退職を強いられる人も見受けられます。
美容師からの転職先におすすめの業種・職種
美容師から異業種への転職は、十分可能です。転職先で即戦力になるためには、現職で培ったスキルを活かせる業種・職種に就くことが重要です。美容師が活躍しやすい異業種の転職先を知り、今後の参考にしてみましょう。
接客・販売業
美容師は、接客業の一種です。そのため接客・販売業は、経験を活かして転職しやすいといえます。店頭で販売するシャンプーやトリートメント類の売上実績が多い人は、恰好のアピール材料になるでしょう。
ひと口に接客・販売業と言っても、アパレルや携帯ショップの店員、家電量販店の販売員、ホテルスタッフなど多種多様です。美容師の勤務経験があれば、たとえ未経験でも興味のある商材の販売に携わることができます。
営業職
美容師時代に培ったコミュニケーションスキルを活かせる営業職は、ジャンルに限らず適性がある職種です。営業職はインセンティブが伴う場合も多く、結果を残せば収入の不満を払拭できるでしょう。
営業への転職の際には、他人の話を聴く「傾聴力」をアピールするのが有効です。お客様の要望や好みをヒアリングするのが得意で、実際に感謝の言葉をもらう機会が多い人は、営業に向いていると思われます。
「元美容師」という肩書きを存分に活かすためには、美容関係の営業職への応募がおすすめです。たとえば、美容室に対して自社商品の導入を勧める美容メーカーの営業職や、美容専門の卸売り業者が考えられます。
事務職
「人と話すのが得意ではない」「座り仕事がいい」という人は、事務職に転職すると良い場合があります。対外的に人と接する機会が減るため、働きやすさや居心地の良さを感じて、今よりも気持ちよく働ける可能性が高いためです。
ただし、業界にかかわらず事務職は人気の仕事です。転職を成功させるには、「資格を取得する」「事務仕事に関する職業訓練を受ける」などの努力が求められるでしょう。
事務処理能力の一つとして、書類作成におけるミスの少なさは重要な要素になりえます。美容師時代に培った気配りの力をアピールすると効果的です。
ITエンジニア
選択肢の一つに、伸び盛りの業界で人手不足が顕著なITエンジニアへの転職もあります。経験の有無のほか学歴や資格も問われない門戸が広い職業であるため、多くの人におすすめできます。美容師と同様、創造性のある仕事ともいえるため、やりがいを感じられる人は多いでしょう。
いくら人材不足とはいえ、まっさらな状態で応募しても選考には通過できません。アピールポイントを備えるためには、独学やスクールに通うなどしてプログラミングのスキルを身に付ける努力が必要です。
自分で作った作品をポートフォリオとして応募先に提示すれば、通過率は高まります。
美容師から転職を成功させる4つのポイント
「転職先や転職理由はまとまったけど、転職を成功させるポイントも知りたい!」という方もいると思います。がむしゃらに行動しても、転職が成功するとは限りません。以下では、美容師が成功させるポイントを4つ解説します。
1.自分のやりたいことや強みを明確にする
自己分析を行い、やりたいことや強みを明確にしましょう。漠然と思い描いているだけでは、選考時にうまくアピールできません。やりたいことや強みを鮮明に考えるのがポイントです。強みを見つける際は、今までの経験から数字で示せる実績を探してみましょう。
美容師であれば、「リピート率が向上した」「自分が入ってからサロンの全体的な売上が上がった」などは伝えやすいです。漠然と「転職したい」との意思はあっても、具体的な業種や職種が定まらないケースも見受けられます。
収入を上げたいのか、休みを増やしたいのかといった転職の目的を明確にすると、転職先選びの軸が見えてきます。
2.転職先は入念に調べてから決める
一度入社してしまうと基本的にすぐ辞められないため、転職先について妥協せず入念に調べましょう。事前のリサーチを疎かにしてイメージだけで勤務先を決めると、入社後に後悔する可能性が高くなります。
業界・職種・企業というように、多面的に調査を行うのがポイントです。インターネットでの情報収集には限界があるため、口コミをはじめ、実際に働く人の意見を集めましょう。
3.転職エージェントを活用する
転職エージェントは、あなたの転職を成功に導く心強いパートナーです。書類添削や面接対策を受けられるほか、ネットでは得られないリアルな企業の情報を入手できます。
また、エージェントは一般の転職サイトには公開されない非公開求人を保有しています。非公開にする理由は、応募が殺到して選考に時間や手間がかかるのを避けるためです。一般的に、非公開求人には年収や福利厚生の条件の良いものが多数見られます。
4.書類選考・面接の対策を行う
履歴書や職務経歴書の書き方、面接の対策は確実に行いましょう。とりわけ意識したいのが、志望動機の書き方です。
応募時に伝えるべき必須事項であり、面接では深掘りされる可能性が非常に高くなります。まずは、美容師として働くなかでどのような課題や悩みが生じ、現職ではその解決が難しいことを伝えましょう。
そのうえで、応募先の企業や業界が問題の解決に適した環境だと訴求できると効果的です。
志望動機と同じくらい重要なのが、自己PRです。美容師はビジネスの形態上、商品の販売を経験しにくい職業だといえます。予約したお客さんの施術を担当し、ヘアスタイルやスタイリングも要望に合わせる対応力が求められます。
顧客に対する関わり方が受動的になりがちであるため、接客・営業への転職では積極性が不安視されやすいのも事実です。能動的に、企業の利益を意識して働けることをアピールするのが適しています。
書類・選考対策は自分で行うのも可能ですが、極力第三者の視点を含めたいところです。転職エージェントには、過去の支援実績から企業に刺さりやすい応募書類の書き方を熟知しています。自分だけで作成するより、アピールに適した書類が出来上がりやすくなるでしょう。
転職を検討しているなら誰かに相談してみよう
美容師から転職を検討しているのであれば、誰かに相談してみてください。家族や同僚、友人などの身近な相手でも、転職アドバイザーでも誰でもかまいません。
「辞めたい」という気持ちを胸の中に秘めたまま、働き続けるのは辛いことです。周囲に今の感情を吐き出すだけで、楽になるかもしれません。
「身近に相談相手がいない」「美容師の転職にかかるリアルな情報が知りたい」などの場合、転職エージェントの活用がおすすめです。
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