就職活動で、「地頭の良さ」を重視する企業が増えてきたと言われています。地頭のよさとは、学歴や知識量では把握できない本人固有の頭脳と呼ばれるものです。
斬新な発想力やわかりやすい説明力と密接に結びついています。今回は地頭が良い人が持つ能力や特徴、地頭を鍛えるための方法について解説します。
「地頭が良い」の意味
地頭が良いとは、その人本来の頭の良さを示す言葉です。学校の勉強で高得点を取れるか、知識量が多いかなどの意味合いとは異なります。
具体的には、論理的思考力やコミュニケーション力などが該当します。判断力や考察力が高いため、答えのない状況に陥っても与えられた情報をたよりに自分の頭で考え抜くことが可能です。
他人の気持ちを察する力にも優れ、心地よい関係を築けるのも特徴です。頭が良い人を指して「IQが高い」と言いますが、地頭が良い人はEQ(心の知能指数)の数値も高い場合が珍しくありません。
EQが表すのは、共感力や創造性、リーダーシップなど他人とのやり取りに関する能力です。地頭が良い人は、IQとEQのどちらも高いレベルで備わっていると考えられます。
地頭が良い人が持つ6つの能力
地頭力を細分化すると、次の6つの能力が導き出されます。
- 知的好奇心
- 論理的思考力
- 仮説思考力
- 抽象的思考力
- フレームワーク思考力
- 直観力
地頭力の基礎をなすのが知的好奇心・直観力・論理的思考力であり、上位かつ中心要素として抽象化思考力・フレームワーク思考力・仮説思考力がある構造です。それぞれの能力が何を示しているか、解説します。
1.知的好奇心
知的好奇心は、地頭力の土台となる素質です。「興味がない事柄を調べたときにあまり頭に残らなかった」という経験は、誰もがあるでしょう。
知的好奇心がある人はさまざまな事柄に興味を持てるので、知識の吸収スピードが速いです。日本の学校教育のように先生が教える知識を一方向的に受け止める方式だと、なかなか地頭力は養われません。
情報が本当に正しいか疑いの目を向け、能動的に問題へ取り組める知的好奇心があってこそ、考える力は身に付きます。
好奇心は、大きく「What型(これは何だろう?)」と「Why型好奇心(なぜこうなるのだろう?)」に分かれます。地頭力で重要なのは、物事を深く考える際に重要なWhy型好奇心です。
2.論理的思考力
論理的思考力とは、感情に捉われないで客観的に物事を考える力です。主に、他人に対して自分の考えやアイデアを説明する際に求められます。
事実や法則などの前提を踏まえ、具体的な事例を挙げながら、筋が通るように正しくつなぎ合わせる力です。
論理的思考力はまた、大きな間違いや思い込みを起こさないためのスキルとも言い換えられます。論理的な矛盾がないかという部分が極めて重要であるため、「守りの思考力」とも評されます。
3.仮想思考力
仮説思考力とは、限られた時間のなかで与えられた情報を頼りに、課題や問題に対して適切な答えを示すための能力です。現実の問題やビジネス上の課題は、学校の勉強のように答えが決まっているものではありません。
不確実性が大きな局面で、スピードも意識しながら解決策を出す際に仮説思考が求められます。
たとえば、試作品を作りながら製品開発を進める場合、どのような商品が売れるか仮説を立てることが優先されます。
デザインや機能の仮説を立てたあと、論理的思考力を駆使して問題点を解消し、製品化を目指すイメージです。
仮説思考は100点を目指す完璧主義とは真逆の概念で、不完全でも構わないため、まず考えを組み立てて形に起こします。
問題点や新たに生じた課題に対しては都度対処することによって、ブラッシュアップを目指すアプローチが一般的です。
4.抽象的思考力
抽象的思考力とは、具体的な事柄に法則を見出し、一般化・理論化する能力です。物事をよりシンプルに捉える力、とも言い換えられます。
抽象的思考力があると、誰に対してもわかりやすい説明ができるようになります。重要ではない枝葉の部分を切り捨て、本質的な部分にだけ焦点を当てられるためです。
とくに専門家や情報量を多く持っている人の場合、情報を多く伝えようとして、わかりにくくなることがあるかもしれません。
話し手が些末な事柄と重要なことの区別が付いていないため、事実をただ羅列する話し方に陥りやすくなるのです。
抽象化思考力があれば自然と本質的な部分に目が行くため、地頭の良さに関係します。
5.フレームワーク思考力
理論や体系的な枠組みに当てはめることで、個人の思い込みや思考のクセを排除する能力です。
その場にいる人で特定の問題に対する回答を示そうとすると、個々の意見は各人のバックグラウンドや専門性に影響されてしまいます。
人は誰しも自身の得意分野や強く残っている記憶を拠り所にしており、あまりにも思考のクセが違いすぎるとやり取りのしにくさを感じるでしょう。
フレームワーク思考の代表格が、「3C分析」や「SWOT分析」です。顧客や競合など市場環境を精査するために用いられる枠組みであり、ビジネスシーンでもフレームワークに沿った思考が求められます。
フレームワーク思考力は課題を上から俯瞰して捉える力と、全体像を最適な基準で分解して切り分ける力に分けられます。
はじめに高所から全体を眺めて作戦を立てることで、属人的な考えを取り除き、異なるクセを持った人同士が協力して作業できるようになるのです。
6.直感力
個人の知識や経験に準拠して考える力で、いわゆる「ひらめき」のことです。論理的思考力と真逆でありながら、セットで捉えるべき概念ともいえるため、攻めの思考力といわれています。
他人と協働しながら成果を上げる必要があるビジネスシーンにおいては、説得や問題解決に役立つ論理的思考力が重視されがちです。しかしながら、ロジカルシンキングの前提となるアイデア出しや創造的思考も必要です。
直観力は創造的なアウトプットとの相性が良く、論理的思考力と掛け合わせることで地頭力を鍛えられます。
地頭の良さが重視される理由とは
学歴や知識量では計測できない能力として注目されているのが、地頭の良さです。近年になってスポットライトを浴びている理由は、AIの発展や進化が関係しています。
「ロボットの活用により、マニュアルに則った単純な仕事はAIに奪われる」と聞いたことがある人は多いでしょう。
現在人間がこなす業務の半分が代替されるとの調査も出ており、仕事を失う労働者で街が埋め尽くされるのではと心配されています。
しかし、AIはルールに則った動作や膨大な情報の検索で高いパフォーマンスを発揮する反面、課題の発見や仕組みの構築のような創造性が発揮される領域は苦手です。
つまり、地頭力が必要な仕事ではAIの代替を恐れる必要がありません。人間の知性や創造性を発揮した社会の実現に向けて、地頭力を高める努力が求められます。
地頭が良いと言われる人の特徴は8つ
地頭が良いと言われる人は、次の8つの特徴を有している場合が多いです。
- 物事の理解力が高い
- 本質を見抜くのが早い
- 論理的に説明できる
- 応用力が高い
- コミュニケーション能力が高い
- 発想や話の引き出しが豊か
- 臨機応変に対応できる
- 本を読むのが好き
それぞれの特徴について、詳しく解説します。
1.物事の理解力が高い
地頭が良い人は未知の事柄でも即座に吸収し、知識をインプットできます。頭の回転が速く、一度聞いただけでも特徴や要点を瞬時につかめることが特徴です。
単に理解するだけでなく、どのような変化やメリットが生じるかといった部分まで考えを巡らせられます。
地頭が良いと、新たに得た事実や知識にプラスアルファの価値を提供できるため、企画やプロジェクト開発などの分野で才能を発揮できるでしょう。
2.本質を見抜くのが早い
地頭が良い人は、物事の真偽や重要なポイントを即座に見抜く傾向があります。判断に自信を持っているため、他人の意見や悪口に惑わされません。
たとえば、性格が悪いと周りから言われている人がいても、表面的な部分だけで判断せず、自分で確かめて正当な評価を与えます。
物事を多面的に見ているため、感情論で一方的な判断を下す恐れが低いのです。
3.論理的に説明できる
地頭が良い人は論理的で無駄がなく、わかりやすい説明ができる傾向にあります。普段から筋道を立てて考える習慣がついているため、根拠や具体例を交えた解説が上手です。
感情論では相手を納得させられないビジネスシーンで、とくに重宝します。
地頭が良い人は、難しい専門用語を使わず、理解しやすい平易な言葉に置き換えて説明できるのも特徴です。
相手の理解度を考えて、どこまで言えば伝わるのかという部分まで思考が及ぶため、説明を受ける相手はスムーズに理解できます。
4.応用力が高い
地頭が良い人はマニュアルやフローに沿って作業を進めるだけでなく、アレンジしてより効率的な進め方を考案します。
上司から指示を受けずとも、自然と業務の無駄をなくそうと努めるため、ビジネスシーンで重宝されるでしょう。
地頭が良い人は、基礎をしっかりと理解しているからこそ応用力を発揮できます。想定外のトラブルが生じた場合、通常だとマニュアルに書かれたとおりに対応します。
一方、応用力が高い人は、問題が起きた原因を考え、複数の対応策が頭に浮かび、その中から最適な方法をみつけやすいでしょう。一緒に仕事をすると頼もしい存在です。
5.コミュニケーション能力が高い
地頭が良い人は他人の気持ちを想像できるため、適切な距離感を保ちながら心地よくコミュニケーションが取れます。
質問に対して的を射た回答ができるほか、会話のテンポや空気にも配慮したスムーズなやり取りが可能です。
さまざまな人と円滑なコミュニケーションを取るためには、自分の意見を表明するだけでなく、他人のオピニオンを受け入れられる度量の大きさも求められます。
地頭が良い人は、相手の様子や雰囲気を観察し、合わせるようにやり取りを行えるのも特徴です。
「この人は話しやすいな」「うまく話を引き出してくれたな」と感じたときは、会話相手の地頭が良いのかもしれません。
6.発想や話の引き出しが豊か
地頭が良い人は、ある物事に対していくつものイメージを膨らませる発想力を持っています。他人をアッと言わせるような、突拍子もないアイデアを生む場合も少なくありません。
ビジネスシーンでは新製品の開発や大きな軌道修正に迫られるときに、独創的かつ効果的な意見を出せます。
地頭が良い人は理解力が高く、多くの物事を知っており、話の引き出しが非常に豊かです。
多趣味だったり、仕事以外の知識が豊富だったりする場合も多く、話していて楽しいと感じられるでしょう。
7.臨機応変に対応できる
どのような場面でも臨機応変に対応できるのは、地頭が良い人の魅力です。想定外のトラブルに見舞われても適切な判断と行動を取り、改善に向けて最短距離で進んでいけます。
困難な事態に出くわしても動揺せず、理知的で冷静に過ごせるからこその臨機応変さです。判断の基準としては知識や経験も重要ですが、精神的な弱さからパニックに陥ってしまうと知恵の力を発揮できません。
地頭が良い人は、不慣れな場面でも感情に惑わされず論理的な思考ができるため、柔軟な対応につながります。
8.本を読む習慣がある
地頭が良い人は、日常的に読書して新しい知識や他人の価値観などを積極的に吸収している人ばかりです。世の中にはさまざまな考え方があると知ることで、物事の見方が広がります。
読書によって家にいながらでも、自分の世界を広げられます。現代は外国人と同じオフィスで働く多国籍企業が増えてきました。
「多様性」が大きなキーワードであり、読書で幅広い考え方に触れることはこれから仕事で活躍する上でも重要です。
地頭を鍛える5つの方法
地頭が良い人をみて、憧れや劣等感を抱いてはいませんか。地頭は必ずしも先天的なものではないため、訓練によって伸ばすことが可能です。効果的な方法は次の5つです。
- さまざまなことに興味を持つ
- 思考法や情報のインプットを行う
- アウトプットする機会を作る
- 多くの人とコミュニケーションをとる
- 本を沢山読む
一言でまとめると、いろいろな事柄に興味を持ち、日常的にインプットとアウトプットをバランスよく行うのがポイントです。読書は語彙力や想像力まで伸ばせるのもメリットです。
地頭を鍛える5つの方法について、具体的に何をすれば良いか解説します。
1.さまざまなことに興味を持つ
地頭力で重要な知的心や探求心を鍛えるためには、日常のあらゆる事柄に対して興味を持つのが効果的です。
事実の把握に努めるだけでなく、背景や理由まで考えるよう心がけましょう。深層や裏側にも目を向けることで、物事の本質をつかむ訓練になるためです。
知識に対する解像度が高まり、記憶が長期的に残る効果も期待できます。
具体的な行動としては、「会話で相手の意見に対してなぜそう感じたのか理由を聞いてみる」「自分の日々の仕事が会社の事業にどのように関係しているか考える」などが挙げられます。
2.思考法や情報のインプットを行う
思考法や自分の仕事で役立つビジネスフレームワークを学び、日々の行動に取り入れるのも効果的です。
知らず知らずのうちに捉われている認知の歪みや思考のクセから離れられるため、地頭力の重要な要素である論理的思考力を鍛えられます。
形を身に付けると、他人への共有や会話がスムーズに進みやすくなるのもメリットです。剣道や茶道で修行の段階を示す「守破離」では、まず師匠や流派の型を身に付け、教えを忠実に守るよう指導されます。
他の考えを取り入れたりオリジナルのアイデアを考案したりするのは、次のステップです。
始めから我流を押し通してもうまくいかないことが大半となるため、まずは成功者の考えや確立されたフレームワークを学びましょう。
3.アウトプットする機会を作る
インプットした内容や自分の意見を伝える機会を、意識的に作りましょう。上司や友人に話してアウトプットするほか、SNSやブログに書き綴る方法でも構いません。
自分の頭を通して発信する習慣を持つことで、地頭力が高い人に多い、わかりやすく説明する力を伸ばせます。
文章の推敲や他者からのフィードバックでわかりにくい部分を修正していけば、自ずと説明力は上がるでしょう。
アウトプットの際は、意見を持つようになったきっかけやどのように情報収集を行ったかなども付け加えると、自分の想いや熱量が伝わりやすくなります。
4.多くの人とコミュニケーションをとる
国籍や年齢、性別に捉われず多くの人とコミュニケーションを取ることで、自分の知らない分野や考え方について幅広く学べます。
未知の知識やさまざまな価値観を吸収すると、物事に対する多様な考え方が身に付きます。さらに、一つの事柄を複数の視点に立って考えられるようになり、発想力も伸ばせるでしょう。
業務の効率化が求められる場面や斬新なアイデアが必要な場面で、周囲が一目置くような意見を出せる人材に近づけます。
地頭が良い人は、疑問を持つだけでなく常に物事を多面的に捉えて、より良い方法はないか考えるクセが付いています。
多くの人とコミュニケーションを取る行為は、インプット時のアンテナを広げる意味合いのほか、アウトプットの質の向上にも効果的です。
勉強や部活動が日々の継続で徐々に上達していくように、会話力や説明力も繰り返すことで向上します。
うまく相手に伝わらなかった機会を振り返り、日々改善に励めます。思いついたまま話すのは避けて結論から伝えることや、指示代名詞は極力使わずに適切な単語を使用することなどが伝わりやすい説明のポイントです。
多くの人と会話することで実践を通して説明力を鍛えられるため、スピーディーに会話が上手い人になれるでしょう。
5.本を沢山読む
読書によって知識を吸収し、他人の考え方に触れるのも地頭が良くなる効果的な方法です。ポイントは食わず嫌いせず、さまざまなジャンルの本を読むことです。
多様な考え方や意見に触れて、貪欲に自分のものへ昇華させましょう。
WebサイトやSNSだと検索結果に基づく偏った情報がベースになってしまうため、やはり読書がおすすめです。本には事実や見解にいたるまでのプロセスや根拠も記されており、体系的に情報をインプットできます。
豊富なボキャブラリーが身に付く点も、読書の大きなメリットです。会話の際、瞬時に適切な言葉が思いつくようになり、説明力の向上が期待できます。
相手に意図を正しく伝えられるため、ビジネスシーンでの円滑なやり取りにもつながるでしょう。
わからない言葉が減ると、役職やステータスにかかわらず、さまざまな人と親密を深められます。
情緒が磨かれることによる、読書のコミュニケーション力の向上効果も見逃せません。
著者の感情や登場人物の気持ちに目が行くようになり、実際に他人とやり取りを交わす際にも相手の感情がスムーズにわかるようになるでしょう。
人とのコミュニケーションがうまくいくかどうかは、語彙力や言葉遣い以上に感情的な側面に左右されます。
読書を通じて人間の喜怒哀楽が生まれる原因やシチューエーションについて深く理解できるようになると、人間関係のトラブルは格段と減るはずです。
地頭が良い人の特徴を知って地頭を鍛えよう
地頭力が良い人は、「理解力が高い」「本質的な部分を見抜ける」「コミュニケーション力が高い」などの特徴を有しています。
いずれも仕事をこなす上で重要な能力であるため、企業が人材を採用する際にも地頭の良さを考慮されます。
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