入社選考での判断材料のひとつ、「学歴」。あくまで判断材料のひとつですが、新卒採用において企業の求める平均偏差値以下の大学卒業者は、有無を言わさず選考に落とされる、という意味の「学歴フィルター」という言葉もあります。
そこで今回は、中途採用や転職活動においても学歴フィルターが存在するかどうかをご紹介。その上で、気をつけるべきポイントをご紹介していきます。
学歴フィルターってある?
一般的に、「学歴フィルター」は新卒採用の時に強く意識する就活生が多いようです。HR総研(ProFuture株式会社)が「楽天みん就」と協同で2018年卒業予定の就活生に行った調査(※1)によると、文系では全体の57%、理系では51%が「ある」と回答しています。
ここで特徴的なのが、偏差値上位校は「ある」と答えた学生がきわだって多く、下位校になるほど「ある」という回答は減る傾向にあるということ。
学歴が不利に働いた、という実感は薄くとも、有利に働いたという実感は大きいようです。
※1 人事ポータルサイト【HRpro】「「学歴フィルター」をせざるを得ない採用の実情 企業はターゲット大学へのアプローチに地道な努力(2017.9.16)」
企業のホンネは?
しかし、一見すると企業は学歴不問の求人が多く、学歴フィルターは本当にあるのか?という気持ちにもなります。
厚生労働省が行った調査(※2)によれば、企業が若年労働者(15歳~34歳)を採用する際、最も重視する点は、中途採用・新卒採用ともに「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」が75%以上と最も高く、学歴は25%前後とかなり低い割合でした。
企業の4分の3は学歴を重視していない一方、4分の1は学歴フィルターがある、ということでしょう。
※2 厚生労働省「平成30年若年者雇用実態調査の概況」
なぜ「学歴フィルター」はあるのか?
では、なぜ「学歴フィルター」は存在するのでしょうか?2015年の日経新聞の記事(※3)によれば、就活の期間が短くなれば、その分説明会を含め選考期間が短くなり、必然的に偏差値上位の大学に優先的に説明会を行い、なおかつリクルーターも同じ学校の生徒を取りやすい傾向にあるとのことでした。
つまり、「選考期間が短い」ことで、多くの判断材料を余裕を持って加味することができず、結果わかりやすい「学歴」を選考材料にしてしまう、ということなのでしょう。
※3 日本経済新聞「売り手市場なのに復活する「学歴フィルター」(2015.2.26)」
また転職サイトdodaの調査によれば、業務上高い論理的思考力などを求められる金融や教育関連の仕事は学歴を求められる傾向にあるようです。チャレンジしたい業界をよくよくチェックすることも重要になってくるでしょう。
気をつけておきたいポイント!
ここまで学歴フィルターの有無について紹介してきました。
中途採用の場合、学歴を求める企業は一定数あるが、それよりも重視されることがあること、それに加え選考期間の長短や転職先の業界によっても差がある、ということを踏まえ、気をつけるべきポイントをご紹介していきます。
不安なら転職時期を見極めよう
前述したように、選考期間が短い、ないし人事部が忙しいとどうしても履歴書や職務経歴書をじっくり見る時間が減り、結果学歴を参照しがちであることがわかっています。
そのため、人事部の忙しい時期などは避け、ゆとりのある時期を見計らうのも一つの手段でしょう。
公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況を厚生労働省がとりまとめた「一般職業紹介状況」(※4)によれば、最も求人数が多いのは、やはり年度末の3月。求職者と求人どちらが多いか分かる「有効求人倍率」も3月が一番高く、転職にはうってつけの季節とも言えるでしょう。
しかし、いくら有効求人倍率が高いとはいえ、求人も求職者も多いのがこの3月です。その分ライバルも多く、人事部が忙しい時期ともいえます。それに加え会社自体も決算や引き継ぎで忙しいため、人事部にゆとりがあるとは言いづらい時期でもあります。
そう言った意味では7月がさらにオススメということができます。7月というのは夏のボーナスをもらって退職する社員が多い時期であり、なおかつ年度の下半期が始まる10月には異動もありますから、10月入社に向けた転職者向けの求人が多くなるのもこの時期です。
3月は年度末で新卒者採用も同時期に行われますから、人事部にとってはまさに繁忙期。もしそれを避けたいなら、上半期の7月以降の転職をオススメします。
※4 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和4年3月分及び令和3年度分)について(令和4年4月26日発表)」
企業がどんな人材を欲しがっているのか見極める
前述したように、企業によっては学歴を求めてくる業界もあります。そのため、まず学歴が問われるかどうかきちんとチェックすることは当然ですが、なにより企業分析を行い、「企業がどのような人材を欲しがっているか」は把握しておきましょう。
厚生労働省の調査にあったように、確かに学歴を求める会社はありますが、それが一番というわけではありません。その他に求められているものは多く、中途採用の場合熱意やスキルなども重視されています。
そのためにも、まず学歴で尻込みするのではなく、企業がどのような人材を欲しがっているかのチェックはとても重要と言えます。
例えば、営業職と一概に言っても、飛び込みやテレアポで新規顧客をどんどん開拓したい会社もあれば、既存の顧客と太く長く付き合っていきたい会社もあります。
前者の会社の場合は「フットワークの軽さ」や「行動力」ある人材が好まれるでしょうが、後者は「接客の良さ」や「対応の丁寧さ」が重視されるでしょう。
このように、企業の求める人材と自分がマッチングしているかどうか、きちんと見極めることが大切です。
企業はなるべく「長く働いてほしい」と思っている
当然のことながら、採用活動というのは求職者のみならず、人事や現場にも余計なコストがかかるものです。
面接の時間を割くことはもちろん、育成する分現場の労力もかかるわけですから、「できるだけ長く働いてほしい」というのが企業側のホンネなのです。
また昨今は社員のSNS炎上も見受けられます。あの社員がこんな行為をしていたと一旦SNSに乗ってしまえば、情報はすぐ拡散され企業イメージは損なわれます。
以上から、人事部としてはなるべく「リスク」を回避し、安定的な人物を採用したいと思っていることも覚えておきましょう。
その上で、「長く働ける」「自分の行動に責任が持てる」ことをアピールできるのであれば、それは学歴よりも充分なアピールポイントとなるでしょう。
まとめ
今回は、中途採用や転職活動においても学歴フィルターが存在するかどうかをご紹介した上で、気をつけるべきポイントをご紹介してきました。
前述したように、学歴よりも重んじられることは多々あります。明確な転職理由や自分の経歴の言語化に努めれば、多彩なキャリアが描けることでしょう。
ぜひ今回ご紹介したポイントを活かし、あなたのよりよい未来を描いていただけたらと思います。