既卒の就職活動で迷うことが志望動機の書き方です。既卒は新卒と状況が異なるため、既卒の理由や卒業後の空白期間など、マイナスイメージを取り除く工夫をしなければなりません。
採用担当者は応募者から志望動機を聞くことで、入社意欲やポテンシャルの高さを見極めようとしています。
本記事では既卒の志望動機を書くときのポイントや注意点を解説し、既卒向け志望動機の例文も紹介します。
そもそも志望動機とは?
志望動機とは、応募した企業で働きたい理由です。応募企業への志望度の高さを伝えるために大切な項目であり、応募企業について詳しく調査し、説得力のある志望動機を伝えなければなりません。
ここでは、企業が志望動機を聞く目的や、既卒と新卒の書き方の違いについて解説します。
志望動機を聞く目的
企業は応募者から志望動機を聞くことで、自社への入社意欲や会社・仕事への理解度を知りたいと考えています。数多くの企業の中から選んだ理由を整理し、説得力のある説明をしなければなりません。
どの企業でもあてはまるような志望動機では説得力がなく、入社意欲や熱意を伝えることはできないでしょう。
応募先企業について、「どのような部分に惹かれたか」、入社したあと「自分の経験・スキルをどう活かしていけるのか」「どのように貢献ができるのか」など、よく調べ具体的に伝えることが評価されるポイントです。
既卒と新卒で志望動機の書き方の違い
既卒と新卒は、現在置かれている状況が異なります。前提として既卒と新卒の違いをみていきましょう。
新卒とは新規学卒者の略で、当年に新しく卒業する人を指します。一般的に、新卒は学校を卒業するとすぐに社会人となります。
厚生労働省が「卒業後3年以内の既卒者は新卒枠で募集する」という指針を出しているため、卒業後3年以内を新卒として扱っている企業も少なくありません。そのような企業であれば既卒でも新卒枠で応募できます。
一般的に既卒とは、学校を卒業後一度も就職していない人を指します。先述のとおり「卒業後3年以内は新卒」として扱う企業もあるため、企業によって既卒の扱いは異なるでしょう。
既卒のほかに第二新卒があります。第二新卒は「新卒で就職後、3年以内に退職をした人」のことで、違いは就職経験の有無です。アルバイトやパートで働いていたことは職歴とならず、既卒として扱われます。
既卒として応募する場合、新卒と同じような志望動機を書いたのではアピールできません。既卒は新卒で就職しなかったこと、卒業から応募までに空白期間があり、マイナスイメージを持たれがちです。
企業は既卒の応募者に対し、「在学中に就職先を決めず、その後もすぐに就職しなかった理由は何かを知りたい」と思うでしょう。それがわからないと、「本当に正社員として働く意欲があるのか?」と思われても仕方ありません。
そのため、志望動機には既卒になった理由と卒業後の空白期間における出来事を明確にする必要があります。
既卒が志望動機を書く前に整理すること
既卒が志望動機を書く際は、次の内容を整理しておきましょう。
● 既卒で就職活動している理由を明確にする
● 空白期間の取り組みをまとめておく
それぞれ、詳しく解説します。
既卒で就職活動している理由を明確にする
既卒で就職活動している理由をわかりやすく説明できるよう、整理しておきましょう。既卒になった事情は「内定がもらえなかった」「自分に合う企業が見つからなかった」など人によりさまざまです。
企業側は既卒であることに疑問を抱き、なぜ新卒で就職しなかったかを知りたいと考えます。面接では、既卒になった理由を必ず聞かれると思ってよいでしょう。質問されてすぐに答えられるよう、理由を明確にしておくことが大切です。
「就活がうまくいかなかった」という表面的な内容ではなく、うまくいかない結果になった理由を掘り下げましょう。取り繕う必要はなく、ありのままに伝えることが大切です。ネガティブな理由であったとしても、現在はどのようにとらえ、反省点として向き合っているかが重要です。
空白期間の取り組みをまとめておく
既卒の場合、卒業から現在までの空白期間をどのように過ごしていたかも興味を持たれる可能性が高いでしょう。空白期間があるとネガティブにとらえられるのではないか不安に感じることがあると思います。病気などでやむをえず働けない場合もあり、説得力のある理由を伝えれば良い印象を与えることは可能です。
そのため、空白期間の過ごし方についてしっかり説明できるようにまとめておくとよいでしょう。
空白期間であっても、半年程度であればそれほど違和感はなく、「転職活動をしていたのかもしれない」と考えてくれるでしょう。しかし、1年以上のブランクは働く意欲を疑われる可能性があります。
働く意欲が疑われるような印象を払拭するため、プラスのイメージを伝えられるように、理由をまとめておくことが必要です。
面接官が空白期間の取り組みを確認するのは、働く意欲があるか、すぐやめることはないかを確認する意味があります。空白期間の取り組みについては、応募企業や職種に関係する内容で回答することが印象を良くするポイントです。
たとえば、経理の仕事に応募する場合、「簿記の資格を取る勉強をしていた」と説明すれば、成長への意欲が高いというイメージを与えるでしょう。
営業職への応募では、「営業のアルバイトをしたことで営業職の魅力を感じ、正社員として活躍したくなった」と伝えれば説得力があります。
「ITエンジニアになるために資格取得の勉強をしている」「営業職に就くためにコールセンターのアルバイトをしていた」と伝えるのも、働く意欲を伝えられるでしょう。
転職活動がうまくいかず、空白期間が長引いてしまった場合でも、「長く働ける職場を探すために慎重になり、長引いてしまった」と説明すれば、働くことに前向きであると理解される可能性があります。
企業が志望動機で確認したいこと
企業が応募者に志望動機を聞くことで確認したいことは、入社への意欲とポテンシャルの高さです。そのため、志望動機ではこれら2つの内容が十分に伝わるような回答をしなければなりません。
ここでは、企業が志望動機で確認したいことを解説します。
入社への意欲が高いか
企業は応募者の志望動機をみて仕事への意欲をチェックしています。「どの企業でもいい」といった姿勢がみられると、入社後の活躍は期待できないと判断されてしまいます。
採用担当者が知りたいことは「数ある企業の中から自社に応募した理由は何か」です。入社を希望する理由や入社後にどのような活躍ができるのかを知り、自社に合う人材を採用したいと考えています。そのためには、どれぐらいの入社意欲があるかが判断材料になるでしょう。
たとえば、評価が同じ程度の応募者が2人いて、どちらかを選ばなければいけない場合、面接官は熱意や意欲の高い人を自社に迎え入れたいと思うでしょう。最終的には「この会社で働きたい」という強い熱意や意欲が伝わってくる人を選ぶと考えられます。
ポテンシャルは高いか
企業が既卒の志望動機で確認したいのは、ポテンシャルの高さです。ポテンシャルとは潜在能力のことで、将来性や成長性を見込んで採用することを「ポテンシャル採用」と呼びます。
ポテンシャルをメインに判断される場面では、成長意欲や目的意識を明確にアピールすることが大切です。
既卒も新卒と同じく就職の経験がなく、社会経験がほとんどないという点では新卒と変わりません。そのため、企業はスキルや知識ではなくポテンシャルの高さを見極めたいと考えています。
志望動機ではポテンシャルの高さをアピールするため、応募する職種に対して普段から能動的に勉強するなど自己研鑽していることを伝えるとよいでしょう。
たとえば、普段からエクセルを使用していて基礎的な知識を持っていたとします。 基礎的な知識は業務では最低限のスキルとなるため、「VLOOKUP」などの実務で活用できる関数を学習していると伝えれば、成長意欲がありポテンシャルも高いと感じてもらえるでしょう。
ポテンシャルの高さをアピールするには、応募企業がどのようなポテンシャルを求めているかを調査しておくことも大切です。企業ごとにビジョンや経営方針は異なり、求める将来性の方向は異なります。
企業が求める人物像と一致していなければ、入社後にミスマッチを起こす可能性もあるでしょう。ミスマッチによる早期離職を避けるためにも、企業研究を入念に行い、企業の求めるポテンシャルの高さをアピールしてください。
既卒が志望動機を書くときのポイント
既卒が志望動機を書く際は、いくつか工夫したいポイントがあります。企業に応募した理由を伝えることや、入社後に活かせるスキルをアピールするといった点です。
志望度の高さも明確に伝える必要があるでしょう。
志望動機を書くときのポイントを解説します。
企業に応募した理由を伝える
同じ業界で似たような事業を行う企業は他にも多くあるなか、企業に応募した理由を明確にしましょう。「選んだ企業でなければならない理由」について、説得力をもって伝えてください。
入念に企業研究を行い、応募企業でなければならない理由を明確にしましょう。その際、応募企業の事業内容や商品・サービス、社風などに魅力を感じたと伝えるだけでは、他の応募者と同じような回答になってしまいます。
他社ではなく自分が選んだ企業で実現したいことを絡め、その企業でなければならない理由を伝えましょう。
企業で活かせるスキルをアピールする
自分であれば、入社後に活躍できることをアピールすることも大切です。企業が応募者にどのようなことを求めているかを考え、応募企業で活かせる経験やスキル、強みを志望動機に盛り込みましょう。
経験やスキルは、学生時代の体験からも導けます。勉強や部活、サークル活動などで活躍したこと、成し遂げたことをエピソードとして取り上げてみることもよいでしょう。 そこで得られたことや磨いたスキルが、企業の仕事にどう活かせるかを説明すれば、担当者は入社後のイメージをつかめるはずです。
たとえば、高校時代に部活でキャプテンを務めていた経験があれば、キャプテンとしてチームを率いてきたことを伝え、入社後にもリーダーシップを発揮して業務に活かしたいという内容を伝えられるでしょう。
企業への志望度を明らかにする
既卒が仕事への意欲を伝えるには、これまでの反省点も踏まえて志望度の高さを伝えることが大切です。企業側は既卒であることにネガティブな印象を抱いている可能性も高く、「採用しても長く勤めてもらえないかもしれない」「仕事への意欲はあるのか」といった疑念を取り払わなければなりません。
良い印象を与えようと脚色する必要はなく、ありのままを伝えましょう。大切なのは、既卒になった責任は自分にあると考え、反省点を分析することです。
一例として、以下のような内容が挙げられます。
「大学在学中から就職活動を行っていたものの、十分な自己分析ができず、方向性がつかめずに自分に合う企業を見つけられませんでした。このような反省点を踏まえてしっかり自己分析を行い、自分の強みを知ったうえで貴社を志望しました。現在は業務に活かせる資格取得の勉強も行っています。貴社の〇〇という経営理念は自分の価値観に近く、業績アップに貢献できると思い応募いたしました。」
既卒になってしまった理由や反省点を振り返りながら、入社後に貢献したいことを伝えればマイナスなイメージを取り除けるでしょう。
面接で志望動機を伝えるときは、話し方にも注意が必要です。話す内容は良くても小さい声では自信がないような印象を与え、入社への意欲は伝わりません。
以下の点を心がけましょう。
● 大きめの声で、語尾をはっきりとさせる
● 抑揚をつけ、ゆっくりとしたペースで話す
● 背筋を伸ばし、体が揺れないようにする
面接ではどうしても緊張してしまい、声が小さく早口になりがちです。意識して声を大きくして、ゆっくりと話すようにしましょう。
既卒が志望動機を書くときの注意点
志望動機を書くときは、いくつか注意したい点があります。
まず、自己分析と企業研究はしっかり行いましょう。また、例文をそのまま書かず、自分の言葉で書くことが大切です。
ここでは、志望動機を書く際の注意点を解説します。
自己分析と企業研究をしっかり行う
自分の強みを知るために、自己分析と企業分析は必ず行いましょう。自己分析とは自分のこれまでの経験や考え方などを整理し、価値観や強みを見つける作業です。自分がどのような価値観を持ち、どのような考えで行動をしてきたのかを可視化して、企業選びの軸を定めます。
自己分析は志望動機に役立つだけでなく、自分に向いている仕事や向いていない仕事を知るために役立ちます。自己分析を疎かにして企業の知名度などを軸に企業選びをすると、入社後に価値観の相違などミスマッチが起こる可能性があるでしょう。
自己分析には自分史の作成などさまざまな方法があり、インターネットにも無料で利用できるツールがいくつかあるので利用してみるとよいでしょう。
企業分析は、企業の事業内容や業務、業績などを調べることです。 業界・業種が同じでも、企業ごとに労働条件や文化、社風などは異なります。企業分析で応募企業について理解を深めれば、企業を志望する理由や、具体的にどのような活躍ができるかを明確にできます。自分に合う企業かどうかがわかり、ミスマッチの防止にもなるでしょう。
企業研究では企業の特徴・基本情報を調べるほか、経営者の考え方や業界での位置づけ、他社との違いなどをしっかり調査してください。
企業分析を行う前に、志望する業界の分析も欠かせません。業界について知ることで、企業分析の理解が深まります。
志望動機の目安は150〜250文字前後
志望動機を履歴書に書く際は多く書きすぎず、150〜250文字程度にまとめましょう。既卒の場合は「既卒である理由」を書くこともあり長文になりがちです。長すぎる文章は焦点がぼやけて読みにくくなります。
下書きに書きたいことをすべて書き出し、必要なポイントを残しながら添削して適度な分量にまとめてください。
文章は体裁を考えることも大切です。詰め込みすぎず、適切な位置に改行を入れて読みやすくしましょう。
例文をそのまま書かない
実際に志望動機を書いてみると思うように文章化できず、悩むことがあるかもしれません。うまく書けないからといって、例文をそのまま書くのはやめましょう。採用担当者は毎年多くの応募者の志望動機を見ている採用のプロであり、例文を流用した場合はすぐに見透かされてしまいます。
「自分の言葉で書いているか」「入社意欲は高いか」は、文章からも読み取れます。ただ例文を少しアレンジした程度の志望動機では、書類選考に通過するのは難しいでしょう。
文章の流れや書くべき項目など、例文を参照すること自体は高い意義があります。上手に活用し、オリジナルの志望動機を作りましょう。
具体的に書く
志望動機は具体的に書くことが大切です。具体性に欠けた志望動機は入社後のイメージができずアピールもできません。
たとえば、次のような志望動機では抽象的で、担当者の心を動かすことは難しいでしょう。
「営業の仕事に興味があり、世界で活躍する貴社において学び、成長したいと考えています。」
これでは、入社後に営業の仕事でどのような活躍が期待できるのかが読み取れません。
以下のような内容であれば入社後の活躍がイメージでき、入社への意欲も伝わるでしょう。
「学生時代に営業のアルバイトをして、自分が提案したサービスを顧客に利用していただけることにやりがいを感じました。アルバイト先では、〇〇という成績も残しています。その経験を活かして貴社の〇〇に向けた事業に貢献したいと考えています。」
具体的な志望動機を書くためにも、十分な企業研究は欠かせないといえるでしょう。
既卒向け志望動機の例文
既卒の志望動機は、大きく分けて空白期間にアルバイトなど仕事をしていた場合と、それ以外の活動をしていた場合に分けられます。
ここでは、それぞれの例文を紹介しますので、文章の流れなどを参考にしてください。
<アルバイトをしていた場合の例文1>
私が貴社を志望したのは、「ITの技術で社会に貢献したい」という企業理念に共感したためです。在学中はキャリアの方向性が定まらず、企業選びに悩んで内定を得られませんでした。
卒業後してからIT企業でアルバイトをしたところ、ITが社会全体に浸透していて人々の生活を豊かにしているという事実を知り、ITの分野で活躍したいという気持ちが強くなったのです。それからはIT技術についてさらに知識を深めたいと思い、ITパスポートの資格も取得しました。
アルバイトや資格取得で得た知識を活かし、貴社の業務に貢献していきたいと考えていますので、よろしくお願いいたします。
<アルバイトをしていた場合の例文2>
貴社を志望したのは、旅行代理店の仕事で英語のスキルを活かせると思ったからです。私は学生時代、本当にやりたい仕事がわからず就職活動を行いませんでした。卒業後はいくつかのアルバイトをして自分に合う仕事はないか考えたところ、中学時代から好きだった英語を仕事にしたいという気持ちが強まりました。
高校時代は留学もして英語力を身につけましたが、大学時代は仕事にするまでの自信がもてなかったのです。しかし、英語を使った仕事が自分に向いているとわかり、勉強をし直してTOEICでも820点のスコアを出せました。
高い英語力が求められる貴社の仕事で、国際交流の業務に貢献したいと考えています。
<アルバイトをしていない場合の例文>
貴社を志望した理由は、教育体制が充実し社員のキャリアアップを支援している貴社の方針に魅力を感じたからです。
在学中は就職活動をしたものの、やりたいことが多く軸を定められなかったため、内定を得られませんでした。自分の興味ばかりを優先し、仕事の適正について考えていなかったと反省しています。卒業後はさまざまな業界を研究して知識を習得し、自己分析も行った結果、法人向けにサービスを提案する営業が自分に向いているとわかりました。
私は高校時代に弁論部に属していた経験から、プレゼンテーションが得意です。法人営業ではプレゼンテーションスキルを活かし、クライアントに向けて効果的な提案ができると考えています。
海外も視野に入れた事業拡大を行っている貴社であれば、自分のスキルを活かして活躍できると思い、応募いたしました。
既卒の志望動機は書き方と工夫が大切
既卒は新卒と異なり卒業から空白期間があるため、志望動機の書き方に工夫が必要です。企業は「なぜ既卒なのか」「卒業してから何をしていたのか」を知りたいと考えるでしょう。
そのため、なぜ新卒で就職しなかったか、空白期間は何をしていたのかについて説得力のある説明をしなければなりません。
既卒の理由をありのままに伝え、反省点を踏まえて入社への意欲を伝えることが大切です。
志望動機を書く際は、自己分析で自分の強みを洗い出し、志望した理由を具体的に伝えることが大切で、十分な企業研究も不可欠です。
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相談やサポートはすべて無料で行っているため、既卒の志望動機について不安や疑問がある方はぜひご相談ください。
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