コロナ禍の影響で、リモートワークが普及した昨今。運動不足を実感し意識的に体を動かそう、という方も多いのではないでしょうか。
au損害保険株式会社が、全国の自転車利用者の男女1,000人を対象に行った調査によると、およそ4人に1人が「使用機会が増えた」と回答。その最も多かった理由が「外出自粛による運動不足解消のため」でした。コロナ禍の影響で、自転車のニーズが高まっていることが伺えます。
そんな自転車で「地域活性化」の取り組みを行っているのが、株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパン。
今回は、そんなユニークな同社の関西エリア統括マネージャーとして働く西川 晃伸さんと、「ハレダス」編集長・田村直之が対談を実施。
珍しいビジネスモデルの会社で働く西川さんの目線から、そんな会社、業界で働くことの「リアル」を語り合った様子をお届けします。
●対談者プロフィール
●西川 晃伸/株式会社ルーツ・スポーツ・ジャパン 関西エリア統括マネージャー
立命館大学卒業後、公益財団法人京都府体育協会に勤務。公認スポーツ指導者の研修やスポーツ少年団管理に携わり、「市民参加型スポーツイベント」に携わりたいという想いから同社に入社。
現在は会社全体の広報業務、集客管理業務を担当しながら、イベントディレクターとしてもサイクリングイベントを始めとした複数の案件に携わっている。
●田村 直之/Hit Role株式会社 代表取締役
大学卒業後「ディップ株式会社」に入社。大阪・兵庫・京都などの関西圏を中心に、求人広告の営業を担当。2011年にはマネージャに昇格し、30名ほどのチームを統括しながら新卒採用にも従事。500名以上の面接を担当し、企業の成長・発展に貢献。
10年間の会社員生活ののちに、個人事業主として活動を開始。2019年には「Hit Role株式会社」を設立。
2021年には働く人のためのWebマガジン「ハレダス」と、カフェと自習室を融合させた新しい空間「ハレダスカフェ」をオープン。仕事と人生に一生懸命向き合う人たちのサポートを行っている。
スポーツ業界の新たな可能性
田村:
スポーツの会社、というのは珍しくないですけど、そうなると大抵イメージできるのはスポーツで使用する道具のブランドとかになりますよね。だからルーツ・スポーツ・ジャパンさんのされていることは、中々珍しいと思います。
西川:
そうですね。僕も「職業選択欄」を選んで下さいと言われた時には困ってます(笑)
田村:
そうですよね(笑)僕自身もずっとサッカーをしたので、就活の時は「何かこの経験を活かして、スポーツに関わる仕事できたらな」と考えていました。
今の就活生や、転職を考える若い人たちの中にも、スポーツ関連の仕事にチャレンジしたいと考えてる人は多いと思うんです。
よって、彼らにとって、ルーツ・スポーツ・ジャパンさんの存在はすごく刺激になると思います。もっと事業内容を詳しく教えてもらってもいいですか?
西川:
現在は主に「サイクルツーリズム=自転車を使って地域を観光すること」に関わる事業を行っています。
イベント事業もそうですが、アプリを活用した事業やツアー造成事業など、幅広く行っていますね。
田村:
スポーツ会社にしては、珍しいですよね。
西川:
もともとは市民参加型のランニングイベントや自転車イベントの企画運営を行う事業をメインにしていました。
参加者さんから参加費を徴収して、地域活性化したい自治体や、協賛していただける企業さんを募って、収益を上げていくスタイルでやってたんですが、地域活性化っていうのは、こういうイベントだけじゃないと気付いたんですね。
たとえば、地域活性化はイベントだけじゃなくて、小規模のサイクリングツアーなども有効なんです。イベントアプリを開発すれば、その日のイベントに参加しなくても、後日少人数で、イベント形式でサイクリングできる。
このようなツアースタイルを提案していたら、コンサルタントのようなこともやるようになりました。以前はイベント業者のような立ち位置だったんですが、現在はサイクルツーリズムで地域を盛り上げる総合代理店のような立ち位置になっていますね。
田村:
実に面白いですし、可能性のある話ですね。
西川さん自身は「スポーツを通じ地域貢献がしたい」という想いで転職されたと聞きましたが、そのきっかけについてお伺いしてもいいですか?
きっかけは大学でのアメリカ留学
西川:
大学は産業社会部でスポーツ社会を専攻していたので、将来スポーツに携わる仕事がしたいと考えていました。大きなきっかけになったのは大学4年生の時のアメリカ留学ですね。
日本ってスポーツが体育の延長みたいなところがあるじゃないですか。もちろん今は変わりつつありますが、アメリカはよりスポーツが余暇として根付いているからこそ、ビジネスにも幅があると感じました。
田村:
体育の延長、という言葉は実にしっくり来ますね。
西川:
そう、もっとスポーツって、生活に根付いて気軽にできるものなんですよ。アメリカでは地域に根付いた球団も多いし、休日に気軽にサイクリングしたり、体を動かすのに妙な緊張感が無いというか(笑)
田村:
あー・・・・・・(笑)わかります。部活とかね。
西川:
そう、部活ね。今色々問題視されて改善されつつありますけど、日本はどうしてもスポーツにボランティア精神が求められてる印象があります。お茶当番とか、部活の顧問とか。
田村:
うんうん。
西川:
その影響なのか、スポーツの普及となると、利益よりボランティア精神が求められがちで、あまりビジネスとして発展していかないのかな、という気づきがありました。
もう一方で、アメリカではスポーツがもっと気楽で、身近なものだったんですね。僕はそれが衝撃だったんですが、同時にこういう風に皆がのびやかにスポーツができたらいいな、と思ったのがきっかけになります。
コロナ禍の先の見通しは
田村:
いやぁ、そうなるといいですね。でもちょっと聞きづらいことでなんですけど、この数年コロナの影響もあって、スポーツイベントはしづらかったのでは?
西川:
そうですね。いわゆる1dayイベントは減りました。 2020年は実施できたイベントは5つほどで・・・・・・。最近やっと、ちょっとずつできてきました。
ただタイミングよく、2019年頃からアプリ開発や各地方自治体・中央省庁からの調査研究、マーケティング業務など、イベント以外での事業ができていたこともあり、業績は落とさずにすんでいます。昨年は過去最高の収益になりました。
田村:
すごい!スポーツというものがもっと幅広くなっていくほど、ビジネスの幅も広がるってことなんですね。
西川:
本当にそうだと思います。それにコロナ禍でリモートワークが普及したことで、健康や運動にも注目が集まっていて。
アウトドアは室内に比べて感染を気にせず運動できますから、サイクリングのニーズは高まりつつありますね。
ユニークな会社・業界のリアル
田村:
やっぱり中々珍しいビジネスモデルですよね。
西川:
そうだと思います。広報・集客・プロモーション、イベントのディレクターなど珍しくはないんですが、スポーツの普及や地域活性化を主眼に置いてる企業は中々無いと思いますね。
ですが、自分がしたかったこととマッチングできているので、本当にやりがいを感じています。
田村:
ちょっと冒頭に戻るんですが、スポーツ関連の仕事につきたいって考えてる人は結構多いと思うんですね。やっぱり頑張ってきた分、思い入れも強いというか。
そんな人たちに向けて、アドバイスなんてありますか?
西川:
スポーツ業界というとまずはじめに「クラブ、球団」「メーカー」などが挙がりますが、弊社のような事業を行っている会社もあります。
メジャーなスポーツ用品ブランドとは違い、僕たちは本当に開拓者みたいなものなので、大変な割に見返り少ないね、と思うことはまだまだあります。やっぱり情熱が後押ししてくれた実感はありますね。
どこもそうですけど、メジャーじゃない業種って成熟しきっていない部分も多いので、働く環境を重視しすぎるとなかなか飛び込めない世界かもしれません。
田村:
やっぱりそこはリアルですね。
西川:
そうですね。ただ、最近ではスポーツ業界専門の転職サービスなど、そのあたりの整備も徐々に進んでいるので、情報収集はしやすくなったと思います。ぜひ無理せず自分らしく働ける会社を探してほしいですね。