みなさん、こんにちは。転職となるとさまざまな手続きが必要となってきますよね。健康診断書の提出が求められ、困っている方もいるのではないでしょうか。
健康診断書って絶対必要なんでしょうか?
今のご時世、健康診断のために病院に行くのも不安です。
確かに、そう思うのも無理はないですね。そこで今回は、転職時に健康診断書が必要な理由から、この情勢でも受診すべきなのかお伝えしていきたいと思います。ぜひ参考にしてみてくださいね。
なぜ健康診断書がいるの?
新卒で入社した時も思ったんですが、なぜ健康診断書が必要なんでしょう?
それは労働安全衛生法(※1)に定められているからですね。
労働安全衛生法は職場における「労働者の安全と健康の確保」ならびに、「快適な職場環境の形成」を目的で制定された法律です。
まだこのような法律が無かった1960年代、高度経済成長期の日本では労働災害によって年間6000人の方が亡くなったと言われています。このような背景もあって、1972年に本法案が制定されました。
健康診断に関しては本法案の第六十六条に記述があり、
事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
と明記されています。
そして雇い入れ時の健康診断に関しては、「労働安全衛生規則」(※2)第四十三条に記述があり、
事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
と明記されています。転職時や入職時に健康診断書が必要になるのは、この条文が大きいと言えますね。
※1 e-gov法令検索「労働安全衛生法」(昭和四十七年法律第五十七号)
※2 e-gov法令検索「労働安全衛生規則」(昭和四十七年労働省令第三十二号)
健康診断は事業所の義務
健康診断は事業所の義務だったんですね。てっきり労働者側の義務だと思っていました。
転職や新卒で入社する際に健康診断書の提出を求められるので、そのように思われたかもしれませんね。
確かに面倒だと思うかもしれませんが、労働者の健康と安全を保障するため法律で定められていることなので、健康診断書の提出を求めてこない、ないし健康診断を実施しない企業の方がむしろ問題があると思った方が良いでしょう。
また健康診断の実施は企業の義務とされているので、当然違反した場合は罰則があり、労働安全衛生法(※1)百二十条には五十万円以下の罰金に処すると明記されています。
労働安全衛生法の違反は企業にとってもマイナスイメージとなるため、健康診断を実施する、ないし受診を進める企業がほとんどだと思います。転職後に軋轢を残さないためにも、ぜひ面倒に思うことなく受診しましょう。
健康診断書の有効期限は?
でも実費で受けるとなると、なかなか高いですよね。
「労働安全衛生規則」第四十三条に書かれているように、一般的に健康診断書は3ヶ月以内のものが有効とされています。
もし前職の時に受けた健康診断書があれば、受診日を確認した上でそれを提出してみましょう。
またそうでない場合でも、企業から病院を指定されて健康診断を受診できる場合もあります。すぐに実費で行おうとするのではなく、まずは企業に聞いてみることをオススメします。
ここまできっちり決まっているとは思いませんでした。
労働者の健康を保障する法律なので、実は「労働安全衛生規則」第四十四条には受診すべき項目も載っているんですよ。
そうなんですか?
はい。検査項目はそれぞれ、既往歴及び業務歴の調査、自覚症状及び他覚症状の有無の検査、身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査、胸部エックス線検査及び喀痰かくたん検査、血圧の測定、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、尿検査、心電図検査となっています。
よって任意検診を受けていたとしても、上記の項目の検査結果が無ければ健康診断書としての効力は認められません。ですからもし任意検診を受けていた場合でも、検査項目がきちんと合致するかチェックする必要があると言えますね。
コロナ禍でも健康診断を受けるべき?
ですがこのご時世、病院に行くのも不安がありますよね。
確かに、院内感染の危険性なども考慮し、厚生労働省は新型コロナウイルス感染症拡大や緊急事態宣言発令により、2020年6月30日までに行うべき健康診断については、その一部の実施を10月31日まで猶予するという通達を出していました。
しかし2022年時点での厚生労働省は、「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」(※3)の中で
労働安全衛生法等に基づく健康診断については、いわゆる“三つの密”を避け、十分な感染防止対策を講じた健康診断実施機関において、実施してください。
なお、健康診断実施に当たり、労働者が新型コロナウイルス感染症を気にして受診を控えようとしている場合は、健康診断の会場では換気や消毒を行うなど感染防止対策に努めていることを説明するとともに、受診を促してください。
と健康診断の受診を促しています。
※3 厚生労働省HP「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」
特に悪いところは無いので、受診するのが億劫です。
確かに、若いと健康診断の必要性はあまり感じないかもしれませんね。
しかし日本の健康保険制度や診療報酬の改定などについて審議する中央社会保険医療協議会総会で提出された2019年の資料(※4)によると、「40代以上で自覚症状がなかった患者が受診した理由」の1位は「健康診断で指摘された」からだそうです。
また自覚症状がない患者は、自覚症状がある患者と比べて受診までの期間が長い傾向にもあるそうですから、いくら若くて自覚症状が無いと言っても油断は禁物というものです。
※4 中央社会保険医療協議会 総会(第413回) 議事次第
年代別・世代別の課題(その2)について
そう言われると怖くなってきますね。
このコロナ禍にあっても、病院の受診控えはオススメできません。前述したように、自覚症状が無くとも病状が進行している可能性があり、折角転職したのに体調が芳しくない、となっては元も子もありませんよね。
厚生労働省が新型コロナウイルスの対策を踏まえた適切な医療機関の受診についてリーフレットを出しています(※5)ので、ぜひそちらも参考にしてみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?転職時に健康診断書が必要な理由から、この情勢でも受診すべきなのかをお伝えしてきました。
健康診断書の提出をあまり重要視していない人も多いかも知れませんが、前述したように、労働安全衛生法にきちんと明記されているため、実はとても重要なことなのです。ぜひきちんと受診し、健康診断書を提出して、新たな一歩を踏み出していきましょう。