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インタビュー

元J1名古屋「10番」 小川佳純(FCティアモ枚方 監督)/指導経験ゼロからの監督への挑戦

サッカー選手時代を10年過ごした名古屋グランパスでは新人王とともに、チームでもタイトルを獲得。移籍先のアルビレックス新潟ではキャプテンも経験した小川選手。

華々しい現役時代を引退し、指導経験ゼロで監督の世界に飛び込みました。未経験でありながら、監督オファーを即決した小川監督の心境に迫ります。

■プロフィール
・小川佳純(オガワ ヨシズミ:ニックネーム「ズミ」)
・1984年8年25日生/東京都出身/趣味:ゴルフ
《選手歴》
2007〜 名古屋グランパス
2017〜 サガン鳥栖
2017.8〜2019末 アルビレックス新潟に移籍
《監督歴》
2020.1〜 FCティアモ枚方監督に就任
関西サッカーリーグにてチームを初優勝
全国地域サッカーチャンピオンリーグ2020優勝に導く
チームを日本フットボールリーグ(JFL)へ昇格

セカンドキャリアへの挑戦「もう指導者のマインドだった」


選手引退後のキャリアプランは早い段階で計画されていたのですか?

何歳まで現役をやるかについては、はっきりとは決めていませんでした。自分が続けたくても欲しいと思ってくれるチームがなければ選手生命は終わると思っています。2019年のアルビレックス新潟の契約が満了する時点で、僕の中では選手としてはやり切った気持ちが強かったです。

ただ名古屋グランパス時代にタイトルを一度とったときの達成感は忘れられませんでした。チームだけでなく名古屋全体が盛り上がる達成感は身体に染みついています。

実は、FCティアモ枚方の監督オファーの前に選手でのオファーも受けていました。正直体のコンディションや肉体面で選手での道には迷いがありました。

今思えば、現役時代の最後の2年間はもう指導者のマインドになっていた気もします。

現役時代最後のオフシーズンに、指導者B級ライセンスをとる講習を受けています。アルビレックス新潟では2018年に副キャプテンからスタート。キャプテンが途中から移籍していなくなり、夏から半年間キャプテンをさせてもらいました。

しかし、当時34歳で、怪我やリハビリで試合に出られない時間が多かったです。
「試合に出られない期間は、若い選手が成長するため、チームが勝つために自分が伝えられることを伝えよう」現役最後の2年間くらいは勝手に選手とコーチの間の気持ちで接していました。

「もう一度タイトルをとりたい」という気持ちは現役最後まであったものの、この経験から監督かフロント業でチームに関わり、タイトルを取りたいと思うようになりました。そして、これが僕のセカンドキャリアでの目標となりました。どういった道筋をたどればできるだけ早くこの目標を達成できるか2019年末からは考えていましたね。

監督オファーはセカンドキャリアの目標にかなり近いチャンスだったということでしょうか?

そうですね。もし現在のFCティアモ枚方からのオファーがなければ、子供たちや大学生の指導を今頃していたかもしれません。実際に自分でスクールを立ち上げて指導することも考えていましたし、出身の明治大学のサッカー部に問い合わせもしていました。

自分としては、10年後ではなく1年、2年、3年の間にできるだけ多くのことを吸収してスキルアップしたい。とにかく早くJリーグでチームとしてタイトルをとる目標を達成したい気持ちだったので、引退後まもない時期の監督オファーはチャンスだと感じ、即決しました。

FCティアモ枚方のGM(ゼネラルマネージャー)巻さんとのご関係は?

大学時代に関東の大学選抜で一緒にプレーしていました。また、名古屋グランパスの同期入団で同い年。気心知れた仲だったので、そういう人間がオファーをくれたことも監督決断の決め手になりました。巻がいるチームだからチャレンジしたい。公私共に仲が良く、また同じチームで仕事がしたいと考えていたので嬉しかったです。

とはいえ監督は、現役引退後そうやらせてもらえる仕事ではない。基本は選手を引退後、子供たちの指導からスタートすることが多く、中学生、高校生へとステップアップした先に20歳以上の選手たちを扱うチームの監督を担う流れが一般的です。

そこを全部飛び越えて、チームを任せていただける話をいただけたので「本当にやっていいの?」と聞き返しましたけど(笑)

フレッシュな選手感覚「選手がつまらないと思う練習はさせたくない」


監督のお仕事内容をお聞きしてもよいですか?

日々のトレーニング、練習メニューのオーガナイズがメインです。試合に勝つためにはどういったメンバーで、どの戦術がいいか。チームで共有して試合に臨む、その繰り返しです。

監督をする上で心がけていることはありますか?

選手の気持ちを考えることですね。僕は引退してすぐに監督をさせてもらいました。選手時代に感じていた感覚を思い出しやすい環境にあると思います。

選手がつまらないと感じる練習はさせたくない。必要と感じる内容をトレーニングで与えられるか。トレーニングやメニューを考えるときも、少しでも選手が楽しくモチベーションを高く取り組めるように心がけています。

ミーティングに関しても、極力短くしています。選手はミーティングが長いと集中力が切れて、結局あまり頭に残らない。トレーニングの中でどう落とし込んでいくかに重きを置いていますね。

自分が選手時代に感じていたことが新鮮なので、どうしたら選手にとってモチベーションを高く取り組めるかを考えて、すぐ実践にうつせる環境があるのは僕自身楽しいことでもあります。

大変なことはありますか?

監督と選手はやはり立場が違います。サッカーにはいろんな戦術がある。サッカー経験の長い大人であればなおさら、選手それぞれに自分のやってきたプレーもあります。それを一つにまとめるのは難しい。

また、僕の理想のプレーもありますが、今のFCティアモ枚方でそのプレーができるとは限らない。チームが勝つには理想と違うプレーの方を選ぶ必要がある。自分の理想があっても選手やチームの様子をみて判断しています。1年で選手の1/3が代わることもあります。選手の特徴を引き出すために、毎週いろんな試合をみながら僕自身の引き出しを増やしています。

選手はチームが負けても自分がたくさん点をとれば選手個人の成果につながることもあります。僕の場合は、チームの結果=自分の結果。チームの結果がまさに監督の評価につながるのでチームが勝つことをひたすら考えています。

新境地に飛び込む「挑戦することに悪いことはない」


今後の目標を教えてください。

最終的な目標は、Jリーグでチームでタイトルをとることです。ここ数年の目標でいえば、去年(2020)の目標は、FCティアモ枚方をJFL(日本フットボールリーグ)に昇格させることでした。次は、JFLからJ3を目指しています。

J3の昇格には試合成績以外にもいくつかの条件があります。J3に昇格するためのホームスタジアムを持つこともその一つ。自分たちにお金があれば土地を買って作ることもできますが、難しいので、行政や地域の方々と協力しながら様々手法を用いてスタジアムを建設するケースが多いです。

成績面では、JFLで4位以内の結果を残すとJ3に上がる資格を得られます。(※1)僕の理想としては、今年は3位以内、来年もいい成績。枚方市や応援してくれる方が「FCティアモ枚方は強い。J3に上がれないのはどうして?」「スタジアムつくらないといけないのか!」そういった周りを巻き込む動きにつなげるためにも結果を出し続けないといけないと思っています。

ハレダス読者には今の状況に悩んでいる方や転職を考えている方も多いです。小川さんからそんな方々に、転職や新たな一歩を踏み出す人へメッセージをお願いします。

何かにチャレンジするときは、必ず「どうしてチャレンジするのか」理由があると思います。僕の場合は、根本にあるサッカーが好きな気持ちと選手時代の恵まれた環境があった上で、選手引退後「チームでJ1のタイトルをとる」という目標が明確にあった。目標を達成する上でいい選択肢になると思ってチャレンジしました。

新たに経験をしない限り経験値にならない。挑戦しないと失敗をすることもないし、失敗から学ぶこともない。自分が目指す上で何が必要か、何が足りないか。自分の良さも気づくことができます。挑戦することに悪いことはないと思います。

自分がしたいから転職もチャレンジするはず。迷っている人がいれば、まず「自分が本当にやりたいか」自分で自問自答するといいかもしれません。自分がやりたいならやるべき。

昔と違い同じことを続けるだけが全てではない時代。僕も、名古屋グランパスで引退までプレーしたいと思っていました。結局、名古屋グランパスで10年プレーした後に違うチームに移籍しました。名古屋グランパスでずっとプレーすることで得られたものもあったかもしれませんが、2つのチームに移籍したからこそ得たものもあると思っています。

また、違う場に踏み込むと多くの出会いがあります。環境が変わることで、いろんな人や新しい考え方に影響を受けて自分自身も形成されたと思っています。自分という人間が改善されていく。それこそが人間の成長では、と感じますね。

小さい頃は新しいところに飛び込むのは苦手でした。ただ母親に聞くと、幼稚園も入ってしまえば楽しんでいた。飛び込んだり、最初の一歩を踏み出すのは、勇気がいること。人間はやらなきゃいけない環境に入ればやる生き物だと思っています。

環境が変わることへ不安がある人も自分を広げるためにポジティブに捉えてチャレンジしてもらえたらと思います。

(※1)J3 昇格には、Jリーグ入会直前年度のJFLのリーグ戦における最終順位が4位以内であり、かつ、JFLに属する百年構想クラブのうち、上位2クラブに入っている必要があります。

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Written by

首藤響子

首藤響子

子育てママライター。専業主婦・子育てをきっかけに自分軸で生き直す。子育てをしながら「個」育てをしているママのインタビュー集も自身でスタート。自分らしい生き方を模索する人が好きです。ママのキッカケの場づくりも運営中。

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