「地元には誇れるものがない」、「何もないから故郷が好きじゃない」、そう感じている人は一定数いるのではないでしょうか。大阪・八尾市でも、以前までは同じように考える住民が多くいました。
しかし、この2年で大きな変化が起こっています。その変化の渦中には「みせるばやお」があります。今回は街に大きな変革を起こしている「みせるばやお」の広報を務める山本さんに、始動のきっかけや活動内容について伺ってみました。
■プロフィール
・山本 恵美(ヤマモト メグミ/大阪府出身)
・大学卒業後、生活情報誌の記者として勤務。
・その後、キッズファッション誌の立ち上げに携わる。
・2007年から大手人材サービス企業にて、幅広い業界・媒体の制作業務を5000件以上担当。
・2017年以降、大手人材サービス企業の営業責任者として従事。
・現在「みせるばやお」の広報に就任。運営にも関与しながら、取材・ライティング・プロモーションなどフリーでも活動中。
・「一般社団法人ゆめさぽ」他、複数の法人立ち上げにも貢献している。
自分たちの街に誇りを持って欲しかった
大阪八尾市は、日本経済を支える中小企業がひしめく街です。そして、伝統あるものづくり技術が根付く街でもあります。
しかし、街の中で行われている仕事や取り組みがうまく伝わっておらず、八尾市民の中には、「自分たちの街には何もない」、「正直この街があまり好きじゃない」、と話す人が多かったんです。
そんな状況に、八尾市で働く人たちが疑問を抱き、現状を変えようと思ったのが「みせるばやお」始動のきっかけでした。
八尾市民だけでなく、長年ものづくり技術を守り続ける企業で働く人ですら、「うちなんか大したことはない」、「当たり前のことだから」と口を揃えていたそう。
発言の背景には、ものづくり企業が置かれる、BtoBの仕事が故にスポットが当たらず自信が持てない、横のつながりが少ないという閉鎖的環境などにありました。
市民たちが持つネガティブな街のイメージを払拭するには、まずはものづくり企業で働く人たちが団結し、自分たちの仕事を面白がる必要があると感じたのです。
そこで、八尾市で働く人たちが企業に声をかけ「みせるばやお」がスタートしました。
「みせるばやお」の活動原点になったのは、経営者同士をつなげるためのセミナーや交流会でした。これまでつながりがなかった中小企業の人たちも、お互いの悩みや夢を共有することですぐに意気投合。
そして、八尾市で働く人たちの「八尾の街を変えたい」という熱い思いに賛同し、市と企業が手を組み、「みせるばやお」が本格的に動き出すことになりました。
地域貢献&ものづくりの魅力を発信
「みせるばやお」とは、地元企業間の交流をメインに、地域貢献を行いながらものづくりの魅力、ものづくりを担う企業の魅力を発信していく場です。
活動をスタートさせた2018年には、八尾市の商業施設内に活動拠点をオープン。現在では中小企業をはじめ、大企業や大学、金融支援機関が運営する共同事業体になっています。
中小企業だけではもつことのできない場所、人材、リソースをシェアリングしながら、一般の人に向けた、ものづくりの魅力を伝える多彩なワークショップも開催しています。
企業規模や拠点の場所などは問わず、「新たなイノベーションを共創したい」と考える人であれば誰でも入会できる仕組みです。スタート地点では35社だった会員企業ですが、現在129社まで増えました。
わずか2年で、なぜこんなにも入会する会員企業が増えたのか。その理由は、スペース、データなど物理的なシェアリングが受けられるのはもちろん、横のつながりが増えることだと考えています。
会員企業向けに交流会やランチミーティング、セミナーを開催。また、中小企業の課題として上がりやすい研修・教育なども一緒に行えるため、人材の長期育成にも役立っています。
交流を深めて協働すれば、そこから新しいコラボレーションが生まれたり、頑張るエネルギーになったり、自然に地域が活性化するもの。
まさしくこれが最大の地域貢献であり、八尾のブランディングへとつながっているのです。
ここでしか生まれないイノベーションがある
毎年、会員企業が習得したい知識やスキル、課題解決に向けて、活動内容は決定しています。今年度は大変な情勢下でしたが、オンラインを取り入れながら柔軟に対応してきました。
今年開催したプロジェクトは、ものづくり補助金を活用したtoC向けのリブランディングをはじめに、DX(デジタルトランスフォーメーション)による変革を促進するプロジェクトなど。
また、企業の仕組みを見直すだけではなく、ものづくり企業で働く人たちのITスキルやデジタルリテラシーの向上を目指して、IoT勉強会を開催しました。
勉強会やセミナーなどは、その道のプロを外部から招いて開催するため、他業界とのつながりも形成できます。近くに仲間がいることで、悩みが煙たいものではなく、ワクワクする伸びしろになるのです。
実際に2018年の活動開始から、会員企業それぞれの得意を掛け合わせ、通算34件の企業コラボレーションが行われました。そのうち6件が商品化に至っています。
その他「みせるばやお」では、現在起業する人だけではなく、次世代の起業家を育成する「やお創業ゆるっとカフェ」というプロジェクトも行っています。
「やお創業ゆるっとカフェ」は、八尾市内で起業したい人に向けた小さな交流会で、起業家の体験談を聞きながら、起業する道筋や参加者同士のネットワークづくりとなる場所。市民向けのワークショップを含め、企業にとどまらないコミュニケーションによって生まれるイノベーションがあると信じています。
参加者全員が心踊る「FactorISM」
これまでお伝えしたプロジェクトに加えて、2020年、特に好評だったプロジェクトが「FactorISM(ファクトイズム)−アトツギたちの文化祭−」です。
FactorISMとは、町工場でのものづくりの現場を体験・体感してもらう市民参加型のイベントです。ものづくりの現場に足を運ぶ産地ツーリズム(tourism)を通じて、こうば(factory)の想い、主義(ISM)を発信する。
時代の流れや逆境に負けずにものづくりと向き合う、後継たちの想いを知ってほしいと企画されました。
八尾市だけでなく、関西には有数のものづくり企業があることから、八尾から関西へ、同じものづくりの街である堺市、東大阪市、門真市のものづくり企業と連携する広域オープンファクトリーイベントとして開催することになったのです。
「こうばはまちのエンターテイメント」を合言葉に、2020年12月に初開催しました。参加者たちに企業に足を運んでもらい、ものづくりの現場を体感してもらいました。
はじめて目にする大きな機械やものづくりの匂いに、参加者たちは興味津々。
働く人の手捌きや想いをリアルに体感することによって、ものづくりが自分たちの生活と密接する、“自分ごと”であることが浸透する機会になりました。
そして何より、感じたのが後継たち(働く人)の意識の変化です。
自分たちのものづくりが広く知れ渡ることで、仕事への誇りや自信につながり、心から仕事を楽しめるようになったという参加企業も多いと言います。
このプロジェクトは2025年の大阪万博に向けて、継続的に開催していきます。2021年は10月に開催が決定。長期的な開催によって、ものづくりを通じて地域、人の想いを盛り上げるイベントになればと思います。
自分ごとになると街は一気に盛り上がる
「みせるばやお」が始動して2年、活動を重ねるほどに、企業や市民とのつながりが色濃くなっています。顔を見合わせて会話し、相手の活動を知ることで、思いや活動への共感が広がります。そうなれば、自分ごとに思える範囲が広がって、応援したり、参加したくなったりするはずです。
八尾市で働く方に話を伺ってみると、Facebookで八尾に関する投稿を以前から毎日2回ほどしていて、中小企業で働く人たちはこれまで、イイネやコメントをしてくれていたそう。しかし、今となっては応援のコメントを付けてシェアし、拡散してくれるようになったと言います。
それだけではなく、参加企業の新商品リリースなどを目にしたら「おめでとう」とシェアするまでになっているのだとか。
つながりがしっかりできていることに喜びも感じますし、八尾に住む方々が街を好きになっていることが伝わり、「みせるばやお」の広報として、すごく感慨深いです。
数人の熱意が、今までは何百人につながり、大きな愛や活力として地域を動かしている。
まだまだ解決すべき課題やチャレンジできることはたくさんあるので、「みせるばやお」に関わるすべての人と一丸となり、大人も子ども自慢したくなる街を目指していきたいですね。
「みせるばやお」スタッフ募集!
ここ最近では嬉しいことに、「みせるばやお」の想いに共感してくれる企業が増えてきました。今後も想いを実現しながら、活動の幅を広げていくためには、新しい仲間が必要です。
そこで今回、活動を一緒に盛り上げてくれる仲間を募集することになりました。私たちの活動に共感し、地域活性化の一助を担いたいと考える方であれば、どなたでも大歓迎です!
業務内容は、
■「みせるばやお」の魅力を発信する広報
■業務が円滑になるようにサポートする受付・事務業務
■「みせるばやお」活動拠点場所の施設運営
などをお任せします!
「八尾市出身で地元愛は負けない!」、
「広報業務の経験があるからスキルが活かせるかも」、
「ものづくりが大好き!」、
そんな想いが発揮できる環境です。
ぜひ私たちと一緒に八尾の街、活動を盛り上げてください!
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