「今の若者は意欲がない」
そんな言葉を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。いつの時代であっても社会に出たての若者への声は厳しく、20代はこれから何十年も続いていくであろう自身のキャリアに悩む時期です。
今回は、国内大手スポーツメーカーに就職しながらも、3年半で人材サービス会社へ転職した経験を持つ奥澤将人さんにインタビュー。「若手」と言われる20代前半に彼を突き動かした仕事への想い、そして若手の転職サポートで大切にしていることを伺いました。
プロフィール
奥澤 将人(おくざわ まさと)
Hubrick株式会社 代表取締役社長
・大学卒業後、ヨネックス株式会社に入社。ゴルフ開発課に配属され約3年半、クラブデザイナーとして従事
・株式会社リクルートスタッフィングに転職。派遣営業として大手クライアントへの独自開拓を積極的に行い、4年目にして全社表彰を受賞。その後、事業企画部に配属され、営業施策の立案や社内インフラの改善を行う
・Callaway Golf株式会社にて2ブランドの新規事業立ち上げプロジェクトメンバーを経験。約2年間、営業・企画・品質管理・数字管理を任される
・Hubrick株式会社を立ち上げ、若手人材の紹介事業と人事委託業務の2事業で経営を展開している
今後、アウトソーシング化はどんどん進む。
ー奥澤さんが採用支援の事業で創業して5年目とのことですが、今特に力を入れて取り組んでいることは何ですか?
今、国内大手メーカーの人材領域を業務委託として請け負っています。具体的には、採用に関する事や経費清算、社内異動の手続き、労働時間の管理など幅広く業務を問わずサポートしています。
人材難の折、こういった「作業」をアウトソースして、効率化を図ろうとする動きが社会全体で進んでいるので、委託事業は今後さらに伸ばしていけると考えています。
ー大手企業であれば、委託する必要もないくらい人事部門も十分な人員がいるとイメージしていました。
もちろん、人事部門の社員は多いです。しかし規模が大きな会社ほど、様々な付随する作業も膨大になる為、目の前の「実務」に追われてしまい本来、社員が行うべき組織戦略や人事戦略、予算配分などのコア業務に集中できないというジレンマがあります。
であれば僕ら外部の人間がコア業務以外を請け負い、社員に本来集中すべきコア業務にかける時間を創出しようというのがミッションです。
ー創業当初は人材紹介事業からスタートしていますが、委託事業を始めようとしたきっかけは何でしょうか?
別の人材サービス会社に勤めている知人から、その会社の課題について相談を受けたことがきっかけです。「クライアントがこんな悩みを抱えている。どうにかできないかな?」って話があり、試しに関連会社からスモールスタートしてみようと。
それから1年半くらいが経ち、PJTとしては、現在7〜8社まで拡大しています。この取り組みは確実に貢献できていると、手応えを感じています。
険しい道を選ぶ。迷ったらやる。
ー今奥澤さんは「人材領域」をメインに事業展開されていますよね。その道の専門家になるまでの経緯について教えてください。
大学卒業後はヨネックス株式会社というスポーツメーカーで、ゴルフクラブの商品開発の仕事をしていました。ヨネックスは全国的に名前も通っていて、周りからすれば安定したキャリアが約束されているように見えたかなと思います。
でも、3年目くらいに急に不安が襲ってきました。開発という閉鎖的な空間もあると思いますが、社内の決められたことだけをやっていて将来、自分は一体何者になれるのか?と。人生で一番悩んだ時期でした。
僕の親や祖父は、自分で事業をしていて、その姿を見て育っていた環境もあり、自分もいつかは起業すると決めていました。起業できるだけの自信をつけたいと、転職することにしたんです。
ーその次の仕事に、なぜリクルートスタッフィングを選んだのですか?
起業家に、営業経験は絶対に必要だと思っていました。営業の世界で一番「厳しい」と言われる環境に身を置きたかったんです。
「無形サービス」は物がないからこそ、自分の魅力がないと売り上げを作れない。自分の価値を高めたいと考えていたのでピッタリでした。そして中でも「リクルート」は起業を考えている優秀な人材揃いと噂でも聞いていましたし、社内で厳しい競争がある、さらに「派遣営業」はかなり難しい商材だとキャリアアドバイザーに教えてもらいました。
自分をとことん鍛え直すつもりで会社を探した結果、リクルートスタッフィングに辿り着きました。
ー奥澤さんの期待通り、派遣営業は厳しい世界だったんでしょうか?
そりゃもう、期待通りでした。でも不思議と、嫌だと思ったことはなかったんですよね。自分で決意して進んだ道だから、というのはもちろんありましたが、やればやるほど結果に繋がって、楽しかったんです。「売り上げが立たないから土日や連休なんて無くていいのに」と思っていたくらいです(笑)。
目標に届かなくて挫折した時もありましたが、4年目に入社から目標としていた何千人中約10名ほどしか選出されない全社表彰を受けることができました。心から自信が湧いてきて「独立できる」と、確信できました。
ーあえて厳しい道を選択することが、自信に繋がったんですね。
そうですね、それからはリクルートで事業を学ぶため事業企画へ異動し、その後はご縁があってCallaway Golf株式会社の新規事業立ち上げに参画しました。自分のキャリア軸というか、仕事でのポリシーは「険しい道を選ぶ。迷ったらやる。」としています。楽な道を選ぶと、自分を裏切るような…プライドというんでしょうか。自信が揺らいでしまうんですよね。
「奥澤に相談すればなんとかなる」って思われる人間でありたいです。人に頼られると底力みたいなものが湧いてきます。
キャリアは誰もが悩む。だから僕たちがいる。
ー「頼られるのが好き」な奥澤さんにとって、人材紹介はピッタリの事業ですね。
そうなんです!営業で成果が出せたのも、「相手の課題を解決したい」って気質が合っていたんでしょうね。紹介の事業では「今後キャリアをどう築いていけばいいのか」と悩む転職者の相談に乗ることが多いです。新卒とか第二新卒、20代転職…いわゆる若手人材ですね。
若手を見ていると、ヨネックスで燻っていた過去の自分を見ている気持ちになります。将来についてすごく悩んだ時期でもあったので、初心をいつも忘れずにいられるんですよね。サポートした方が、その後「賞をとりました」とか報告がくると嬉しいです。
ー経験が浅い若手人材の転職サポートだからこそ意識していることはありますか?
転職者本人に対して、時間をしっかり使います。キャリアプランを描くのに2〜3時間は当たり前に使いますし、面接対策を選考企業ごとにしています。仕事観がまだ醸成しきっていない若手だからこそ、マインドセットからサポートしていますね。
他社のエージェントサービスだと、希望条件などでAIやシステムを使って効率的にマッチングをしていますが、僕らは非効率でもとにかく人として向き合って時間を使う。「良いサービスを受けた」と感じてもらえる回数を一つひとつ重ねています。
ー昨今の若手人材の仕事観をどう感じていますか?
キャリアや給料をどんどん上げていきたい、という志向は年々減っているように感じています。ライフワークバランスを重視していますね。メリットとデメリットをきちんと伝えるようにしています。
よくトレードオフという言葉を使います。例えばフルリモートの仕事に就いて、自分の生活リズムを守る代わりに何を失うのか?同じ時間を使って、何を得て、何を失うのか?先ほど言ったように社会はどんどんアウトソーシングが進んでいます。会社に属すならコア業務にコミットできる人材になる必要があります。
目の前のことだけでなく、1歩先、2歩先に何が待っているのか、視野を広げた話を僕らはしています。とはいえ価値観は人それぞれで、無理に捻じ曲げるようなことはしません。最後に選択するのは転職者本人なので。
ー転職者に向けてメッセージはありますか?
今皆さんは「今の若者は…」なんて言われているかもしれませんが、僕らとは違って、生まれた時からデジタル時代に生きています。今、どんどん新しいツールやサービスがものすごいスピードで生まれていて、若手の皆さんはその流れにいち早くついていける貴重な人材です。
でも「このままでいいんだろうか」と、感じてしまっている人はすごく多い。一度は必ず悩みますし、自分自身を見つめ直すチャンスでもあります。そんな時に、僕らみたいな転職エージェントに頼ってもらえたらと思います。