「デザイン」というと紙媒体がメインという印象が強いですが、昨今はWEB上にも活躍の場が広がっています。そんなデザインを数多く手がけながら、マーケティングやさまざまな商品のプロモーションなど、幅広い挑戦を続けるのが有限会社デジタルプラネッツです。
1998年の創業からこれまで、紙媒体を中心にデザインを続けてきた会社のなかで、新たな試みをどんどん行っている経営企画室。そのメンバーの1人として活躍するのが、小林靖さんです。
今回のインタビューでは、小林さんにデジタルプラネッツという会社やデザイナーという仕事、いま取り組んでいるプロジェクトについて語っていただきました。
■プロフィール
小林 靖(コバヤシ ヤスシ/1968年5月10日生/茨城県)
・デザイン専門学校を卒業後、デザイン事務所に入社
↳グラフィックデザイナーとして主に「ぴあ」関連のエディトリアルデザインを約6年間担当
・その後、広告代理店の制作部や、各種研究機関をターゲットにしたプロダクションの制作部を経験
・2009年有限会社DIGITALPLANETSに入社
↳現在は経営企画室で新規のプロジェクト運用やコンテンツ制作に従事している。
・趣味:トレイルランニング
紙媒体からWEBまで、幅広くデザインする
御社の事業内容を詳しくお聞かせください。
弊社は「デザインプロダクション」という位置づけで、この8月から24期に入っています。デザインにもいろいろあるのですが、弊社が強みとしているのはセールスプロモーションツールの企画・制作です。
各種商品カタログから、リーフレットやスナック菓子のパッケージ、旅行パンフレットや店内POP、ロゴマークの作成等々、皆さんがご存じの大手企業様の商品のセールスプロモーションツールのお仕事を、大手代理店さんや大手印刷会社さんから依頼を受けたり、最近では直接、企業様から依頼を受けたりする場合も増えてきています。
LINEスタンプも作っているんですか?
LINEスタンプも作っています。基本は紙媒体が中心で、まだ全体の7割くらいは紙媒体デザインですが、時代の変化に伴いDX化していくというところでは、いまはWEBや動画制作、その辺をミックスしたイベントの企画・運営みたいなことも増えています。
デザイナーは決して華やかな世界ではない
デザイナーと一言でいってもいろいろあると思いますが、どういった仕事内容がありますか?
他社では役割分担が明確で、デザイナーはデザインのみを担ったりしますが、弊社のデザイナーは、デザインするだけではなく、直接お客様とやり取りしたり、進行管理や時には予算の管理までおこなったりします。アートディレクターやクリエイティブディレクターもしかり。ディレクションするだけではなく、自ら手を動かしてデザインすることもあります。
最近はWEBデザイナーも増え、デザイナーという職業が身近になってきている印象ですが、どういった人が向いているのでしょうか?
昔と比べたらいろんなソフトがあったり、下手したらスマホのアプリで写真の加工ができたりとか、年賀状も自分で作っちゃう人もいっぱいいますし。そういうのもデザインの1つではあるんですけど、我々がやっていることはビジネスなので、予算やスケジュールが決まっていたり、クライアントの思いがある中で、いかに具現化できるか、そのデザインや施策で売り上げが伸びるかどうかなどいろいろ考えないといけません。
一見、デザイナーというとかっこよくて華やかというイメージがあると思いますが、決してそうではなくて、地味な作業も多々ある中で、そういった経験を一歩一歩積んでいき、デザイナーでやっていこうという強い信念がある人であれば、なれる職業だと思います。
とはいえお客様からオーダーがあったアイデアだけを形にするだけではなくて、こちらからもいろいろ提案をしていかなくちゃいけないので、頭のなかで柔軟に面白い発想ができる人は特にデザイナーに向いているのではないでしょうか。
道具に頼らず“手を動かすこと”が大切
やはりデザイン関係の学校を出ないと、就職は難しいですか?
弊社の場合でいうと、デザイン関係の専門学校や大学、短大を出てなくて、ちょっと社会経験をしたけど「やっぱりデザインがしたい」というような人も入社しています。もちろん独自で勉強をしたのでしょうけど。弊社はデザインの学校を出ていなくても、社内で研修をするので、未経験でもデザイナーになることはできます。
研修では今まで我々が関わって終わった仕事をもう1回なぞりなおす感じで、仕事で使うアプリケーションの操作方法を覚えます。本当に基礎的なところですが、期間は1か月から、かかる人は2か月くらいかかります。まずはソフトをしっかり使えないと先輩からの指示にも応えられないので、学校で習ってきたとしても、入社したら全員まずそれをやります。
デザインをしていく上での苦労はどういった点でしょうか?
デザインと一纏めに言っても、弊社でやっているのは主に販促、セールスプロモーションツールで、他にも雑誌などのエディトリアルや大手広告代理店で手掛けるマス広告など、世の中には様々なデザインがあります。
セールスプロモーションは一般消費者の方に向けて企業が発信して、デザインも含めたそのプロモーション施策によって売り上げ左右される本当に大事なものです。企業の要望やイメージを形にする作業になるので、ときにはデザイナーも「え、こんなデザインでいいの?」みたいなものも正直あったりします。
ただ、やっぱりクライアントさんありきですし、なによりもモノが売れることが重要なので、我々も売れるためのアイデアは出しますが、自分の好きなようにデザインができるかといったら、決してそうではありません。
学生の頃は、課題は出ますけど、好きなようにやれるじゃないですか。でも仕事となるとそこには予算も締め切りもあって、そのなかでより良いものを作っていかなければいけないですし、好きなようにはできません。ただ、学生のときは自由にできていたのが社会人になると自由がなくなってシビアにはなりますが、世の中に出ていくものを作っているわけなので、逆にそこがやり甲斐になると思います。
「秀でたデザイナー」になるためには、どういったことが大切なのでしょうか?
まずは「手を動かす」ことです。商品が売れるにはデザインだけを考えていても仕方がないので、企画から考えていくような感じです。今の若い子たちはお客様からオーダーがあったら、いきなりパソコンに向かったりしますが、我々の時代のスタートはMacもなく、手で案やレイアウトをひたすら描いていくような時代でした。
ですからやはり若い子たちには「まずは手を動かしなさい」と言います。結局、Macは道具でしかないんです。いろんな便利なことがそこででできるのでデザインしたような気になっちゃうんですけど・・・実は本質が全然できていない、ということも結構あったりしますね。
自ら手を挙げてチャレンジできる人材に
小林さんは採用にも関わっているとお伺いしましたが、採用するうえでどういった点を重視されていますか?
新卒は経験がないわけなので、明るくて元気、前向きに物事がいろいろ考えられるという点を重視しています。経験は会社に入ってから積めばいいので。そういった点では、新卒のハードルは高くないですね。一応学生時代の作品も見たりはしますが、もしかしたら元気に来れば入れるかもしれません(笑)
中途採用になると、これまでのキャリアが大切です。そして、弊社はけっこういろんなことにチャレンジはできるんですが、手を挙げないと機会は掴めないので、自らチャレンジしていくような人は伸びていくかなと思います。「これがやりたい」と手を挙げればうちの社長はだいたいOKを出しますが、待っているだけでは何も起こりません。
個性を可視化する「ロジック・ブレイン」
小林さんは経営企画室に所属されているとのことですが、現在力を入れているプロジェクトについて教えてください。
『ロジック・ブレイン』という面白いものがあります。社員の個性や才能を分析し、データによって最適な人材マネジメントを提案するクラウドシステムです。
簡単にいうと面接に行って面接官といろいろな話をするときは、表面の部分で話しますよね。ただ本質は違っていて、「面接のときはこんな感じだったけど、3か月くらい経ったら違うよね」ということはよくあります。
最近はどの業界、会社でも離職が増えていて、弊社もデザイン業界なので離職率がすごく高かったんですけど、このクラウドシステムを導入してからは離職率がほぼゼロになりました。
離職率を抑えるために具体的にどういった方法をとるのですか?
社内面談が重要になります。このシステムには「1on1リスト」という機能があるのですが、例えば、700人くらい入っているデータのなかで、80人は何かで悩んでいる、面接をした方がいいタイミングだ、みたいな感じででてきます。
その人達に対してどういう風に面接をするかというと、その人のベストの状態や、おそらく今はこうだろうという状態、その人がどういったことでモチベーションが上がるのか、そして、その人に対しての適切な教育や手順、マネジメントするときにはこういうことをアドバイスすると良い、みたいなことがデータで出てくるのでそれに沿って行います。
総合分析は変わりませんが、環境要因による分析は変わってくるので、面接や評価面談のときにはこういうものを見て参考にするといった感じです。100%当たっているわけではないかもしれませんが、社員の離職に悩んでいる企業は多いので、経営企画室では各企業の人事や総務の方にこのサービスを紹介しています。
ロジック・ブレインはマーケティングにも使えるそうですね!
マーケティングに使うときは、お客様の情報がいろいろと出てきます。お客様がどういう傾向なのか、営業するときのアドバイスが書いてあるんです。このタイプの方には数値で説明できる資料や簡潔で信頼性の高い資料を準備しておくとより効果的だとか、クレーム処理のときにこのお客様は顔を見て会いに行って謝った方が誠意が伝わりやすいとか、いろんなことが出てきます。
たとえば通販会社さんとかは、膨大な顧客リストがあるじゃないですか。そのなかの休眠顧客を分類して、分類に合ったアプローチをすることでそのお客様たちがまた戻ってきたりするんですよね。つまり、特性を知ることでアプローチ方法が先にわかるので、マーケティングにも使えます。
一般的なマーケティングはいくつかの手段を試しながら結果を分析するんですけど、我々はプロモーションを行う前に「このお客様はこういうタイプだろう」とある程度想定ができるので、そのタイプに向けてドンピシャなアプローチをすることでそのお客様が応えてくれます。
ちなみにロジック・ブレインは弊社で開発しているのではなく、開発会社とパートナー契約を結んで販売しています。実はこのロジックブレインの開発責任者の人は、昔に流行した動物占いのシステムを開発した人です。結局占いも統計学ですから、いろんな計算式を掛け合わせてデータを出していて、それがビジネスにも使えるということですね。
やり直しはきく、日々チャレンジを
ありがとうございました。最後にハレダス読者へのメッセージをお願いします。
今は、昔と比べたらいろんなことにチャレンジできる環境もあります。何事もまずチャレンジしないと始まらないと思うので、20代・30代は日々チャレンジをしてほしいです。やり直しはいくらでもきくので、成功体験も失敗体験も繰り返していくなかで成長していけば良いと思います。
今の若い子たちはおとなしいというか、「攻めない」「守りに入る」という印象がすごくあります。我々の業界が特にそうなのかもしれないですけど、昔だったらみんなもっと尖がっていたし、人と違うこと、変わったことは何かというのを常に探していましたが、今の子たちはあまりそうではない気がします。
ただ、デジタルプラネッツに入ってくる子たちはそういうチャレンジ精神の旺盛な子たちですけどね。臆することなく、どんどんチャレンジをしていってください。
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