近年は、就活の選考に自己PR動画の提出を求める企業が増えてきました。エントリーシートや面接だけでなく、動画作成の対策も必要になってきます。
本記事では、企業が自己PR動画を選考に用いる理由や動画作成のポイントについてまとめました。
「自己PR動画による選考」を行う企業が増えている
近年、動画形式での自己PR提出を指定する企業が増えています。現時点では、それほど一般的な方法ではなく、大手企業では伊藤忠商事やANA(客室乗務員採用試験)、業界としては大手マスコミ関係などで採用されている方法です。
しかし接客サービスの「質」を重視している企業や、新しい採用方針を積極的に取り入れている企業においては、動画での自己PRを求める企業が増えています。
自己PR動画が導入されるようになったワケ
企業が1次選考の代わりに自己PR動画を導入するようになった背景には、採用活動の効率化や、書類だけではわからない人柄を知るためといった企業側の思惑があります。
企業が自己PR動画を導入するようになった背景やその理由についてまとめました。企業側の意図を把握し、PR動画の作成に活かしましょう。
採用活動を効率化できる
自己PR動画を選考に導入することで、企業は採用活動を効率化できます。
通常であれば数百人、数千人の就活生を面接する時間やスペースの確保が必要です。また、面接官のスケジュール調整にも時間を割くことになります。面接会場のスペース確保も場所を探したり社内で調整したり、場合によっては場所代が発生することもあるでしょう。
しかし、自己PR動画を活用することで、それらの手間が省け、経費削減につなげられるのです。
企業への志望度がわかる
企業への志望度がわかりやすいという理由から、動画を選考に導入する採用担当者もいます。うまく話すことができない就活生でも、一生懸命に話す姿勢から、どれくらいの熱意があるのかが確認できるからです。
小道具の活用や、見せ方の工夫によって「何とかして採用担当者の印象に残ろう」「志望への熱い想いを届けたい」といった熱意を伝えようとする就活生もいます。動画であれば、対面の面接や書類ではできない志望動機のアピールをみることが可能になるのです。
書類よりも人柄がわかる
動画は書類よりも人柄がわかるという点も、選考に導入されている大きな理由のひとつのようです。
応募人数の多い企業ほど、書類選考である程度、面接へ進む就活生を絞る必要があります。そのため、書類選考段階では、企業が求める人物像だと思っていても「面接で会ってみたらイメージが違った……」というケースもよくあるでしょう。一方で、本当は企業にとって必要な人材だったとしても、書類選考で落としてしまうこともあるようです。
企業にマッチする人物像であるかどうかについては、自己PR動画を確認したほうが、書類選考よりもわかりやすくなるということでしょう。
自己PR動画の概要
自己PR動画と言われても、聞き馴染みのない就活生も多いことでしょう。また「動画作成自体、やったことがない」という方も大勢いるはずです。そこで本章では、自己PR動画の概要を簡単に解説していきます。どのような内容を動画にすべきなのか、どの程度の長さの動画を作れば良いのか説明するので、参考にしてください。
自己PR動画で話す内容
ESや履歴書などを通して「自己PR」をすることは、これまでも就活における基本でした。自己PRの動画動画内で話す内容は、履歴書などに記載するような内容で構いません。
人が適切なスピードで話した際、30秒で伝えられる文字数は150〜250字とされています。この文字数を目安に、まずは「台本」を作ってみましょう。
自己PR動画の長さ
自己PR動画の長さは、企業によって指定が異なります。30秒程度と短い動画の提出を求める企業もあれば、3分ほどとある程度内容が充実した動画の作成を求める会社もあるでしょう。
一般的に、志望者が多い企業(人気企業や大企業)は、提出する動画の時間が短い傾向にあります。志望者が多いということは、それだけ採用担当者が確認しなければならない動画の本数も多く、確認作業に時間を要するからです。
動画内での時間配分としては、30秒の動画の場合は結論を述べるのに5秒、根拠となるエピソードを10秒、具体例を10秒、最後に再度結論を述べる時間として5秒が理想だといえます。「結論:根拠:具体例:再度結論=1:2:2:1」の割合をめざしましょう。
【30秒/1分/3分】自己PRの文字数と例文
提出を求められる動画の長さは、企業によって異なると説明しました。しかし多くの企業では「30秒」「1分」「3分」のいずれかとなります。本章ではそれぞれの長さについて、作り方のポイントや文字数、例文などを解説します。エントリーしようと考えている企業がどのくらいの自己PR動画を求めているのか、確認しましょう。
30秒の自己PR動画の文字数・例文
30秒の動画内で、無理なく話せる文字数は150〜250字ほどです。文字数が多過ぎると早口になってしまい、採用担当者が聞き取りにくい動画となってしまいます。
動画であっても対面の面接であっても、ゆっくり落ち着いて話したほうが好印象を持ってもらえる点は同じです。まずは文字数を気にせず自己PRを書き、その後文字数に沿って調節するとスムーズでしょう。
30秒の自己PR動画の例文としては、以下を参考にしてください。
私の強みはコミュニケーション能力です。 私は大学へ入学してから4年間、携帯電話ショップでアルバイトをしていました。 携帯の販売は、手続きが少し複雑です。始めはわかりやすい説明ができず、お客様を怒らせてしまうこともありました。 しかし、独学で商品知識を身につけ「自分ならどう説明されれば分かりやすいのか」に注目して接客をしたところ、お褒めの言葉をいただくことが増えてきました。 このコミュニケーション能力を活かして、御社の営業職でも、商品の魅力をわかりやすくお伝えできるよう努力します。 |
1分の自己PR動画の文字数・例文
1分間の動画で伝えられる文字数は、300〜400字程度とされています。30秒よりもより細かなエピソードを説明できるとはいえ、字数には限りがあるので、1分に収まるように伝える情報の取捨選択は必要です。
1分間の自己PR動画の例文は、以下を参考にしてください。
私の強みは、リーダーシップを発揮できる人材であることです。 学生時代にサークル長として運営に携わった経験が、リーダーシップの育成につながったと思っています。 私がサークル長を務めていた〇〇サークルでは、場所や時間の確保が常に課題となっていました。しかし積極的に大学側に掛け合い、練習場所を確保できました。メンバーへの声かけも行い、時間を決めて活動するようにしました。 毎週末には翌週の活動をメンバーに共有するようにしたところ、連携が強化されサークルへの加入率を前年度の3倍に伸ばすことに成功しました。 課題にしっかりと焦点を当て、スピーディーに働きかけることで、周りをどんどん巻き込んでいくリーダーシップを御社でも活かしてきたいと考えております。 |
3分の自己PR動画の文字数・例文
3分間の自己PR動画で話せる文字数は、900〜1,000字とされています。ある程度まとまった文章を作ることができるため、根拠となるエピソードなどを、しっかりと伝えられるでしょう。3分間の自己PRを文章化する場合、文字数の配分は以下を目安としてください。
結論(30秒)→約150文字
根拠となるエピソード(1分半)→約450文字
結論で述べた能力を、企業でどう活かすか(1分)→約300文字
3分間の自己PR動画の例文は、以下を参考にしてください。
私の強みは積極的なところで、何事も当事者意識を持って取り組める点です。 私は大学の4年間、自宅近くにある雑貨店でアルバイトをしていました。アルバイト店員でしたが、積極的に店舗の運営にかかわり、売り上げアップに貢献しました。 アルバイトをしていた雑貨店は、規模が小さく地域密着型のお店であったため、新規のお客様が少ない状態でした。お店の近くに大きなモールが建設されてからは、常連のお客様が激減し、売上も落ち込んでいきました。 私はその店が大好きだったため、さらに多くの方にお店を知ってもらいたいと考えました。そこで私は、大学のマーケティング学科の教授にアポイントを取り、相談することにしました。 教授のアドバイスをもとに、お店のSNSを始め、商品を若い世代にPRしていくことを店長に提案しました。私がSNSの運営をサポートすることになり、商品が魅力的に映るよう、さまざまなアングルで写真を撮影したり、お店のラグジュアリーな雰囲気が伝わるように背景も意識して投稿しました。 SNSのフォロワーが徐々に増え、来店してくれるお店のファンも増えていきました。その結果、半年後には地元の人だけでなく、市街からの新規来客が倍以上に増え、お店の売上をこれまでの3倍に伸ばすことに成功したのはよい経験だと思っています。 自分がしっかり当事者意識を持ち、お店の問題を自らの問題として捉え、積極的に行動を起こしていったことで解決できたのでは?と自負しております。また短期のうちに、あらゆる試行錯誤を繰り返す「スピード感」の重要性も身にしみて感じました。 この経験を通じ、私はマーケティングの仕事に興味を持つようになりました。マーケティングによってさまざまな課題を解決できることを肌で感じただけでなく、積極的に取り組むことで、事業を好転させていく楽しさを理解できました。 中小企業をターゲットにマーケティングコンサルティングをおこなっている御社に入社後は、自分の強みを活かし、クライアントに積極的にかかわっていきたいと思っています。顧客が抱えている課題やニーズを聞き出し、適切な対応策をスピーディーに提案していくことで、顧客満足度の向上につなげていきたいです。 |
自己PR動画作成のポイント
自己満足のための作った自己PR動画は、選考には不向きです。選考を通過するためには、冒頭に結論を話すといったテクニックや、笑顔や話し方など、画面から伝わる雰囲気の作り方がポイントになります。
動画を見ている採用担当者の記憶に残るような、人柄が伝わる印象的な自己PR動画作成のポイントをまとめました。
最初の15秒にこだわる
自己PR動画は最初の15秒が肝心です。採用担当者は複数の動画をチェックする必要があるため、動画の冒頭で印象に残るかどうかが評価を左右するでしょう。
コツは結論ファーストで、ダラダラと話さないようにすることです。原稿を作るときは、一文を短くするようにこころがけましょう。
また、話が終わった後、いきなり動画が止まってしまうと、いつ話が終わったのかがわかりにくくなってしまいます。よって、動画の結びにも注意が必要です。
志望動機が伝わる内容を話す
自己PR動画で重要なポイントは、動画を見ている採用担当者に志望動機が伝わるかどうかです。淡々と志望動機を話すのではなく、熱意が伝わるような話し方を心がけ、パネルやテロップなどを活用して分かりやすい内容にしましょう。
一方、構図にも配慮が必要です。バストショットが映るようにすると、上半身の動きで企業への熱い想いを表現できるでしょう。頭の上に卵ひとつ分の余白を残すような構図にすると、見栄えもよく採用担当者の印象に残りやすくなる可能性があります。
撮影方法や見せ方で独自性を出す
履歴書やESなどの自己PRと違い、自己PR動画は撮影方法や見せ方で採用担当者へ与える印象を大きく変えることが可能です。また書類の自己PR欄よりも表現の自由度が高いため、自分の強みを分かりやすく伝える手段がいくつもあります。ここでは自己PR動画を撮影する際におすすめの撮影方法を3つ解説します。
フリップ戦法
「戦法」といっても、難しいことはありません。動画で話す内容を分かりやすくまとめた「フリップ」を作成するだけです。スケッチブックなどで十分なので、話の要点を簡潔にまとめたフリップを作成し、それを持って動画を撮影してみましょう。
採用担当者は、動画の音声を耳で聞くだけでなく、フリップを読むことで視覚からも情報が得られます。内容がより伝わりやすく、記憶にも残りやすいのでおすすめです。
フリップには、以下のような情報を記載しましょう。
- 大学、学部、学科、氏名
- 学業の自己PR
- 学業以外(課外活動)の自己PR
- 入社後の抱負
オリジナル小道具戦法
オリジナルの小道具を使って、動画を撮影する方法もおすすめです。基本的な流れはフリップ戦法と同様ですが、「オリジナル小道具戦法」は、自己PR内容が端的に分かる「実物」や「写真」といった小道具を使った撮影方法です。
学生時代に打ち込んだスポーツなどで使うアイテムや、アルバイトで何か表彰されたときのアイテムなどを活用すると、説得力がグッと増します。
プレゼン風戦法
フリップボードや写真をパネルに拡大して用意する「プレゼン風戦法」もおすすめです。実際に成し遂げた成果などが、グラフでわかるものや具体的な成果物などがあると、説得力が増します。自分を採用することのメリットが相手に伝わるように工夫してみてください。
他の就活生との差別化に繋がるため、オリジナリティを印象付けるアイテムはどんどん活用していきましょう。
笑顔で元気にハキハキと
動画とはいえ、通常の面接と同様、笑顔で元気よくハキハキと話すことが重要です。特に動画では対面で会うときより、話す内容が伝わりにくくなっているため、通常より声のトーンも気持ちも高めで臨むとよいでしょう。
自分では「少しオーバーかもしれない」と思う程度でも、動画ではそこまで大袈裟に見えないことも多々あります。逆に、いつも通りの話し方では採用担当者に暗い引用を与えてしまう可能性があります。
スマートフォンで撮影する場合は、インカメラを活用して自分の表情をチェックしながら話してみたり、カメラを友達に構えてもらって採用担当者に語りかけるつもりで話してみたりするのも効果的です。
自己PR動画作成でよくある質問
企業に自分をPRするための動画作成には、これといったマニュアルはありませんが、最低限のマナーを守る必要はあります。しかし、動画を作成した経験や、それを第三者に見てもらった経験がある人はほとんどいないでしょう。
ここからは、就活生が企業に提出する自己PR動画を作成する際、気になるポイントをまとめました。
服装はどうすればよい?
企業から指定がある場合は、指定された服装で撮影するようにしましょう。
自己PR動画は個性を発揮することが重要なため、私服での撮影を推奨している企業も少なくありません。ただし、だらしない恰好は避け、身だしなみには充分気をつけましょう。
一方、企業から指定がない場合は、通常の面接と同じようにスーツで撮影するのがベストです。特に公務員や金融関係など、普段からスーツを着ることが多い企業においては、スーツでの動画撮影が望ましいでしょう。
必要な機材は?
最近のスマートフォンは高品質な動画撮影ができるため、収録のための特別な機材は必要ありません。
スマートフォンで撮影する場合は、横向きにして撮影するのがベストです。動画がブレないように、しっかりと固定し安定させてから撮影しましょう。
企業が自己PR動画で見たいのは、撮影技術ではなく、ありのままの就活生の姿です。よって、特殊な編集作業は必要ありません。こだわりがある人は一眼レフなどで撮影してもよいですが、動画の容量には十分注意しましょう。
撮影場所はどこが適切か?
自己PR動画は自宅で撮影するのがおすすめです。その際、周囲の雑音や部屋の明るさ、自分の声が聞き取りづらくなっていないか確認するために、試しに何度か録画してみるとよいでしょう。
採用担当者の視界に就活生以外の余計なものや色が入ってくると、動画の内容が頭に入りにくくなります。そのため、自己PR動画を撮影するときは、白かグレーの無地の壁を背景にできるとベストです。
自宅に白やグレーの壁がない場合は、模造紙の活用や、大学の教室などを使わせてもらう方法も検討しましょう。
「1分」と指定されたときはどうする?
企業によっては動画の長さを指定することもあります。1分か30秒で指定する企業がほとんどのため、タイムテーブルに沿った原稿を作って撮影に臨みましょう。1分なら300字、30秒なら150字程度の文字数がベストです。
30秒~1分で伝えられることには限りがあるため、話している内容よりも声のトーンや表情のほうが印象に残りやすくなります。よって、声のトーンは普段自分が思っているより高めに、表情もいつもより笑顔になるよう意識しましょう。
自己PR動画のコツをつかんで合格を勝ち取ろう
自己PR動画も基本的には通常の面接と同様に、明るさや元気のよさ、人柄が伝わる話し方・見せ方をすることが重要です。特に動画は対面よりも話の内容が伝わりづらく、普段より気持ちを高めておくことはもちろん、面接会場ではできない演出にこだわってみることも大切でしょう。
動画を見た採用担当者が「いち社会人として一緒に仕事していく姿をイメージできるかどうか」を意識してみてください。
もし自己PR動画作成でわからないことがある人は、ハレダスのお仕事相談会で相談してみましょう。