不動産業界に転職するなら、年収がどの程度か知っておくことは大切です。職種別の平均年収と高年収の企業を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
また、不動産業界に転職するコツや年収アップのポイント、業界内の年収体系についても紹介します。
不動産業界の平均年収は高い?
不動産業界の平均年収は他の業界よりも高めですが、固定給自体は他の業界よりも低めといわれています。
不動産業界の給与は歩合給が占める割合が高く、物件を販売するたび、あるいは賃貸契約を締結するたびに企業内既定のインセンティブが発生するため、固定給が高くなくても年収が高くなる傾向にあるようです。
また、資格に対する手当が充実しているのも、不動産業界の平均年収が高い理由の1つです。
不動産業界で働くには宅地建物取引士や不動産鑑定士などのさまざまな資格が必要とされていますが、多くの不動産会社ではこれらの資格ごとに手当を設定しています。
そのため、インセンティブが発生しなかったときでも、ある程度の月収を確保できるようになっていることが多いです。
不動産の職種別平均年収
令和3年の賃金構造基本統計調査によれば、不動産会社に勤務している方の所定内給与は32.6万円、年間賞与は109.4万円で、平均年収は500.7万円でした。
全産業(民間企業)の所定内給与は30.7万円、年間賞与は87.6万円、平均年収は456.4万円であることと比べると、平均月給、平均年収ともに高めの水準にあることがわかります。
ただし、不動産業界と一口にいっても、職種ごとに年収の状況は異なります。営業・仲介と管理、開発、事務に分けて職種ごとの平均年収を紹介するので、ぜひ職種選びの参考にしてください。
不動産営業・仲介の平均年収
不動産営業や仲介の仕事は、平均年収は400万円ほどとされています。ただし、求人案件には400万円程度と記載されていても、販売・仲介した案件ごとにインセンティブが発生するため、実際の手取りは400万円超になることが多いです。
販売数や仲介数によって年収が大きく変わる職種であるため、同じ会社の同年代の間でも年収の差が大きい傾向にあります。
営業力に長けた方であれば高年収が目指せますが、あまり営業を得意としない方は割に合わないように感じるかもしれません。他の職種を目指す、あるいは固定給が多い業界を目指すなども検討してみましょう。
不動産管理の平均年収
不動産管理とは、ビルやマンションの管理業務全般を指します。定期点検や保守、トラブル時の対応に加え、中長期的な修繕計画の立案なども担当します。
不動産管理の平均年収は約420万円です。インセンティブが発生しにくい職種のため、固定給の割合が高い点が特徴です。
大手不動産会社の多くは、グループ内に管理会社を有しています。不動産の知識や業務実績によっては、管理業以外にも担当できることもあり、業務の幅が広がります。
不動産開発の平均年収
不動産開発とは、マンションや商業施設などの開発を担当する職種です。いわゆるデベロッパーやゼネコン、サブコンと呼ばれる企業に勤務し、開発業務にあたります。
不動産開発関連の平均年収は600万円ほどと、不動産業界の中でもトップクラスの水準です。特に財閥系のデベロッパーやゼネコンは年収が高く、その分、就職難易度も高めです。
また、不動産開発に関連する業務で求められることが多い資格として「不動産鑑定士」が挙げられます。
不動産鑑定士の資格を取得していると、資格手当が付与されるだけでなく、不動産鑑定を独占的に行うため、有資格者しかできない仕事を担当でき、年収も約650万円と高額になります。
不動産事務の平均年収
不動産業界では総務や人事、法務などのバックオフィス業務が多数求められています。これらの不動産事務の平均年収は約350万円です。
不動産事務の業務はインセンティブが発生することがないため、営業・仲介や管理、開発と比べると年収は低めの傾向にあります。そのため固定給の高さが年収にダイレクトに影響を及ぼします。
不動産企業の年収ランキング
不動産業界の年収は職種によって大きく変わりますが、企業によっても変わります。不動産関連企業の中でもとりわけ平均年収が高いといわれる5社を紹介します。
- ヒューリック株式会社
- 東京建物株式会社
- 住友不動産株式会社
- 三井不動産株式会社
- 三菱地所不動産会社
なお、いずれもデベロッパーと呼ばれる不動産開発に携わる企業です。高年収を目指すのであれば、デベロッパーを視野に入れた就活・転職活動を進めていきましょう。
1位:ヒューリック株式会社
ヒューリック株式会社の平均年収は1,708万円です。初任給は修士卒が29万円、大卒が25.5万円となっています。
なお、ヒューリック株式会社では有給取得率が比較的高めで75%ほどです。また、ホワイト企業は一般的に残業時間は月20時間程度に収まっているとされていますが、ヒューリック株式会社では約37時間と長めの水準になっています。
2位:東京建物株式会社
東京建物株式会社の平均年収は1,389万円です。初任給は修士卒が26.2万円、大卒が24.6万円となっています。
東京建物株式会社の有給取得率は50%ほど、残業時間は月平均23時間程度です。フレックスタイム制度もあり、各自のライフスタイルやライフステージに合わせて働きやすい環境と考えられます。
3位:住友不動産株式会社
住友不動産株式会社の平均年収は1,363万円です。初任給は修士卒が28万円、大卒が25万円となっています。
住友不動産株式会社の有給取得率は50%ほど、残業時間は月平均22時間程度です。また、独身寮や社宅が完備されており、不動産業界だけに住宅環境は充実していると考えられます。
4位:三井不動産株式会社
三井不動産株式会社の平均年収は1,274万円です。初任給は修士卒が29万円、大卒が25.5万円となっています。
住友不動産株式会社の有給取得率は60%ほどです。また全国に営業所があり、採用人数が多い点も特徴です。
5位:三菱地所株式会社
三菱地所株式会社の平均年収は1,268万円です。初任給は修士卒が30万円、大卒が26万円と高水準になっています。
三菱地所株式会社の有給取得率は60%ほどで、平均残業時間は月29時間程度です。また、全国に営業所があり、採用人数が多めの点も特徴です。
不動産業界の給与体系
不動産業界の給与体系は主に次の3つに分類できます。
- 固定給のみ
- 固定給+歩合給(インセンティブ)
- 歩合給のみ
不動産業界の中でも特に営業(販売・仲介)に関わる職種は、歩合給が発生することが多いです。特に販売においては商品(戸建て住宅やマンション)が高額なため、歩合給の割合が高いと給与も高額になります。
入社したばかりで固定給が少ない場合でも、営業成績が良ければ高給になるでしょう。
なお、不動産営業に関わる企業は歩合給制を導入していることが多いですが、なかには歩合給のみという企業もあります。歩合給のみの給与体系のことを「フルコミッション」や「完全歩合制」などと呼ぶことも多いです。
完全歩合制の企業では歩合率が高く、契約につき50%ものインセンティブが発生することもあります。しかし、契約を1つも取れなかったときには無収入のリスクがあり、給与が安定しにくい点に注意が必要です。
まずは営業職に対するご自身の適性を見極め、報酬が高くなる給与体系を選ぶようにしましょう。
不動産業界で年収を上げる4つのコツ
不動産業界は他業界と比べて年収が高めですが、職種や企業によっての差が大きく、単に不動産業界で働くだけでは高年収は実現できません。
「不動産業界で働きたい」なおかつ「年収を増やしたい」とお考えの方は、次の4つのコツを実施してみてください。
- 大手企業に転職する
- インセンティブの高い企業を選ぶ
- 資格を取得する
- 高い成果を上げる
それぞれのコツについて説明します。
1.大手企業に転職する
不動産業界には大小さまざまな企業があります。年収増を目指して転職するのであれば、大手企業を目指しましょう。
例えば、先ほど紹介した高年収の企業は、いずれも大手企業です。また、旧財閥系の企業は高年収であることが多く、転職を希望する方も多くなると考えられます。
令和3年の賃金構造基本統計調査によれば、不動産会社に勤務している方の平均年収は500.7万円ですが、企業規模別にみると以下のように大手>中規模>小規模となっていることがわかります。
企業規模 |
所定内給与 |
年間賞与 |
平均年収 |
10人以上(全体) |
32.6万円 |
109.4万円 |
500.7万円 |
1,000人以上 |
33.5万円 |
140.3万円 |
542.7万円 |
100人以上999人以下 |
32.8万円 |
102.8万円 |
495.9万円 |
10人以上99人以下 |
31.2万円 |
76.8万円 |
451.1万円 |
2.インセンティブの高い企業を選ぶ
不動産業界の固定給は、他の業界と比べて高いわけではありません。しかし、歩合給(インセンティブ)が高いことで、業界全体としても高年収の水準になっています。
安定した給与を求めるのであれば、固定給が高い企業に転職するほうがよいと考えられます。
しかし、安定性よりも給与が高くなる可能性を求めて不動産業界に進みたい場合は、歩合給制を導入し、なおかつ歩合給の割合が高い企業を選ぶようにしましょう。
営業力に自信がある方なら、完全歩合制を導入している企業がおすすめです。
しかし、次のいずれかに該当する場合であれば、歩合給と固定給のどちらもある企業を選びましょう。
- 自分自身の営業力がどの程度かわからない方
- 今まで営業を担当したことがない方
- 営業力に自信はあるけれど、不動産営業をしたことがない方
歩合給と固定給のどちらもある企業なら、営業で思うような成果を得られなくても、ある程度の給与が保証されます。
ご自身の営業力がどの程度通用するのかわからない方も、まずは歩合給と固定給のどちらもある企業に転職しましょう。
ある程度働いてから、ご自身の能力に合わせて、営業力に自信がついた方は歩合給の割合が高い企業、あまり自信がない方は固定給の割合が高い企業にと、再度転職することもできます。
3.資格を取得する
不動産業界では、資格手当を支給する会社も多くあります。資格手当は毎月コンスタントに得られるため、固定給が増えるのと同じです。不動産関連の資格を取得して、年収アップを狙ってみてはいかがでしょうか。
不動産業界で働くなら、次の資格取得を目指しましょう。いずれも資格手当の支給対象となることが多いので、年収を上げる効果を期待できます。
- 宅地建物取引士
- 不動産鑑定士
- 賃貸経営不動産管理士
- マンション管理士
- 土地家屋調査士
- ファイナンシャルプランナー
ただし、企業によって資格手当の支給対象となる資格が異なります。確実に年収増につなげたいのであれば、勉強を始める前に資格手当のルールを確認しておきましょう。
4.高い成果を上げる
どの業界で働いているかに関係なく、高い成果を上げている方は、転職先でも高く評価されます。まずは現在の職場で高い成果を上げられるように励みましょう。
実績を積むことで、現在の職場で収入が増えるだけでなく、企業人としての信頼を得られるようになります。
また、ヘッドハンティングされる可能性が増えること、職務経歴書に記載する内容が増えることなども、高年収での転職につながります。
不動産業界で年収を上げるコツを理解して年収アップを目指そう
不動産業界は比較的高年収を得られる業界です。しかし、高年収を得ている方は、営業職でインセンティブが多い、大企業・旧財閥系企業に勤務している、不動産関連の資格を有しているなどの条件を満たしていることが多い点に注意しましょう。
営業力に自信がある方であれば、歩合給制を導入し、なおかつ歩合給の割合が高い企業に転職すると年収増を期待できます。
完全歩合制の企業でもよいのですが、安定した給与も確保したい方は固定給もある給与体系を選びましょう。
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