現在の仕事を続けながら転職活動をする際、入社日の交渉が気になるという方もいるのではないでしょうか。内定が決まって退職する際、予定よりも退職が長引いてしまうこともあります。日にちの交渉は可能ですが、状況によっては内定に影響してしまうかもしれません。
本記事では、交渉のタイミングや、実際に交渉するときの例文、注意点などを解説します。
転職先の入社日は交渉できる?
転職活動をしていると、入社日の交渉はできるのか気になることもあるかと思います。その前提として、入社日の決め方について確認しておきましょう。
入社日の決め方は2種類
入社日の決め方は、求人募集ですでに入社日が決まっているか、または、内定時に入社日が決まっていないという2つのパターンがあります。
それぞれの内容を解説します。
募集時に入社日が設定されている
求人募集の段階で、すでに入社日が決められているケースもあります。大手企業の求人などでよくあるパターンです。
必ずその日に入社できるよう、逆算して退職のスケジュールを立てなければなりません。退職するまでにどのくらいの期間が必要かを把握し、早めに現在の職場に退職の意向を伝え、引き継ぎのスケジュールを組む必要があります。
内定時に入社日が決まっていない
求人募集の時点では、入社する日が定められていないケースもあります。求人広告に「入社日応相談」という記載がある、または、入社する日について言及していない場合です。
企業側の意図としては2通りあり、人員不足で一日でも早く入社できる応募者を採用したいために記載しないケースもあります。この場合は、応募者がすぐにでも入社可能な状態であることが、採用基準となっているかもしれません。
もうひとつは、人員拡大や新規事業立ち上げなどで求人募集するケースです。そのような場合は入社日を応募者の都合に配慮しており、一般的に内定から1か月後の入社を想定しています。
企業によってはさらに待ってもらえることもあり、交渉が可能です。内定が出たあと、企業と調整して日にちを決めます。
内定の時点で会社に在籍している場合、早めに退職について伝え、退職日を決めてください。そのうえで転職先と入社日の調整を行います。
また、すでに離職している場合は、内定を出した翌月のはじめから入社するケースが多いでしょう。他に希望があれば、早めの相談を意識しましょう。
入社日の交渉は可能
募集時に入社日が定められていない場合、交渉をすることは可能です。理由を伝えて丁寧に交渉すれば、希望を受け入れてもらえることが多いでしょう。
入社日は内定が出てから1か月~3か月以内が一般的で、自分から希望する場合もその期間の中で交渉することをおすすめします。
一方、企業側が入社日を設定している場合で期日に入社できないときは、交渉が難しい可能性があります。設定した期日で社員の受け入れ準備を進めているためです。入社日の交渉は内定に影響するリスクもあるため、注意しましょう。
入社日を交渉するタイミング
入社日の交渉が可能な場合、交渉をするタイミングは企業によってさまざまです。面接時に聞かれる場合もあれば、内定をもらった時点で交渉することもあります。
入社日の交渉について、考えられるタイミングをみていきましょう。
基本的に面接時あるいは内定前に行う
入社日の交渉は、基本的に面接時もしくは内定前に企業が入社日の確認を行います。採用活動では、内定前に入社についての諸条件を決定するのが一般的であり、入社日についても、企業は面接時もしくは内定前に確認を行うのが通常であるためです。
とくに欠員を補充する募集では、入社日が重視されることも少なくありません。そのため、面接時に入社日を聞かれることもあります。入社日があらかじめ指定されている場合も、面接時もしくは内定前にあらためて確認されることが多いでしょう。
面接時に入社日を聞かれた場合の答え方
面接時に入社日を聞かれた場合、すでに退職済みか在職中で答え方は異なります。
退職済みの場合、転職先への入社時期は最短で決めることになるでしょう。自分に特別な事情がない場合は、企業の希望に合わせることになります。面接時に入社時期について聞かれたときは、「御社の希望に合わせて入社可能です」というように伝えるとよいでしょう。
事情があって企業の希望に応えられない場合は、具体的な理由を伝え、お互いに納得できる入社日を調整することになります。
在職中の場合は、引き継ぎなどもあり最短での入社、または、企業の希望する日に入社することは難しいことが多いでしょう。
一般的な入社時期は、内定後1か月〜3か月以内になります。しかし、退職交渉が難航した場合、入社日までに退職できない状況になる可能性も否定できません。
そのような事態にならないよう、職場には転職活動に入る前に退職の意向を伝えておき、早めに退職できるよう準備を進めていくことも必要です。
内定をもらった時点で交渉する場合もある
内定まで入社日の交渉が行われていない場合、内定をもらった時点で交渉することになります。内定後に企業と労働条件の擦り合わせを行う際、入社日の交渉も行うとよいでしょう。
内定後、1か月〜3か月後を目安に希望日を交渉してください。それ以上先の入社日が受け入れられるかは、企業の事情によって異なります。
どうしても確保したい人材であるか、業務遂行のために少しでも早く人材が必要かによって、許容される入社日も変わってくるでしょう。
ただし、3か月以上先でも許容されることは稀であり、基本的に1か月~3か月の範囲を考えておいたほうがよいでしょう。
転職支援サービスを利用している場合は担当者に伝える
転職支援サービスを利用する場合、サービスによっては、担当者が転職先と入社日を調整してくれる場合があります。そのため、利用する際に担当者に入社希望日を伝えておくと、話がスムーズに運ぶ可能性があるでしょう。
転職支援サービスは企業との交渉に慣れているため、求職者では難しい交渉でもうまく進めてくれることが期待できます。在職しながら転職活動をする場合、入社日が不安なときは交渉に関するアドバイスをしてくれるサービスを利用するのもよいでしょう。
たとえば、ハレダスでは、経験豊富なキャリアアドバイザーから個人の状況に合わせて的確なアドバイスを受けることができます。
一度決定した入社日の変更交渉はできる?
入社日が決定しても、現在の職場で退職交渉が難航したり、引き継ぎがうまくいかなかったりで、入社日に退職できないという事態になることはあり得ます。
一度決定した入社日の変更交渉ができるかどうかは、企業の事情により異なります。入社日に入社する前提で社内の計画が進んでいる場合は、交渉は難しいでしょう。
企業側に特別な事情がない場合、理由を伝えて納得してもらえれば、相談に応じてもらえる可能性もあります。
変更の交渉はできても、程度によっては断られることもあるでしょう。半月~1か月程度の変更であれば許容される可能性はありますが、それ以上の変更は難しいかもしれません。
入社日を交渉する時期別の例文
入社日の交渉をする場合、面接時か内定後かにより、交渉の方法は異なります。ここではシーン別に、入社日の交渉の例文を紹介します。
面接時に交渉する場合
面接時に交渉する場合、企業が希望する入社日を考慮しながら、次の2点を明確に伝えます。
1. 入社希望日
2. 希望の理由
実際に面接で交渉する際の例文は、次のとおりです。
(例文1)
★面接官:いつから入社できそうですか?
☆求職者:現在の職場で引き継ぎなどを行っております。引き継ぎにはおおよそ1か月ほどかかると思われますので、内定後1か月程の期間をいただければ入社できます。
★面接官:引き継ぎにはそれぐらいの期間が必要ですね。承知しました。
(例文2)
★面接官:いつから働けそうですか?
☆求職者:現職の引き継ぎに1か月半ほどかかると思われます。もう少し早いほうがよい場合は、できる限り御社の希望日に添えるよう努力いたします。
★面接官:わかりました。たとえば、〇月〇日の入社は可能ですか?
☆求職者:引き継ぎには最低でも1か月ほどかかるかと思われますので、申し訳ございませんが、最短で内定後1か月はいただけますと助かります。
★面接官:内定から1か月後ですね。承知しました。
入社日を聞かれた際、次のような回答は避けましょう。
「まだ在職中で、退職の意向を伝えてからでなければ、はっきりした入社日がわかりません」
その時点での正直な気持ち、状況を伝えたいかもしれませんが、「わからない」という回答は、入社意欲がないのではないかと思われる可能性があるでしょう。
入社日をはっきり言えない場合でも、今後どのような段取りになるかを伝え、大体の目安となる時期を出して、「そのころには入社できるように努力します」と伝えるようにしてください。
内定後に交渉する場合
内定後に入社日を交渉する際は、電話かメールで要望を伝えることになります。どちらの方法でも、必要なことを明確かつ簡潔に伝えるのがポイントです。
ここでは、電話とメールに分けて例文を紹介します。
電話による交渉
電話で交渉する際は、まず変更のお願いをすることに対して謝罪し、入社日を変更してほしい理由と入社できる日にちを具体的に伝えましょう。
電話で交渉する場合の例文は、次のとおりです。
☆内定者:お忙しいところ恐れ入ります。〇月〇日に御社の面接を受け、内定をいただいた〇〇と申します。採用担当の〇〇様はご在席でしょうか?
(企業の担当者に代わる)
☆内定者:お世話になっております。内定をいただいた〇〇です。本日は、入社日についてご相談したく連絡いたしました。ただいま5分程お時間をいただいてもよろしいでしょうか。
★企業の担当者:はい、大丈夫です。承ります。
☆内定者:大変申し訳ございませんが、実は退職の引き継ぎがうまく進まず延長することになりました。つきましては、恐れ入りますが、入社日を1週間ほど延期していただくことは可能でしょうか?
★企業の担当者:承知しました。そのような理由であれば仕方ありません。こちらで調整後、あらためてご連絡差し上げます。
☆内定者:ご検討をいただきありがとうございます。お手数をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。
企業側の返答は、各企業の事情や変更日の日にちによっても変わります。スムーズに承諾してもらえるケースばかりではないことも、把握しておきましょう。
メールによる交渉
メールで交渉する場合の例文を紹介します。あらかじめ入社日が設定されており、自分の都合で変更してもらいたいときの例文は、次のとおりです。
(指定された日程で入社できない場合の例文)
株式会社〇〇〇〇
人事部 △△様
お世話になっております。先日、内定をいただきました〇〇と申します。
この度は、入社日のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
本日は入社日のご調整をお願いしたく、ご連絡いたしました。
現職で、後任者への引き継ぎが想定以上に長引くことになり、1週間ほど猶予を
いただくことは可能でしょうか。
大変申し訳ございませんが、ご検討の程よろしくお願いいたします。
氏名
電話番号
E-mail
指定された日程の入社が難しいことと希望日について、必ず理由と一緒に伝えましょう。
ただし、有給消化や賞与をもらうためといった個人的な理由をストレートに伝えるのは印象がよくありません。実際に有給消化である場合でも、業務引き継ぎなどの理由を伝えておいたほうがよいでしょう。
企業からのメールで「いつごろ入社できますか?」というように希望の入社日を打診されるなど、自分から入社日を指定できる場合は、理由とともに自分の希望日を伝えてください。
例文は、次のとおりです。
(自分から入社日を指定できる場合の例文)
株式会社〇〇〇〇
人事部 △△様
お世話になっております。先日、内定をいただきました〇〇と申します。
この度は、入社日につきましてご連絡をいただき、誠にありがとうございます。
現職での引き継ぎ完了日は〇月〇日であるため、それ以降であれば入社が可能です。
上記日程でご調整いただくことは可能でしょうか。
お忙しい中恐れ入りますが、ご検討の程よろしくお願いいたします。
氏名
電話番号
E-mail
入社日の希望は「〇月〇日を希望します」「〇月〇日以降なら可能です」というように、具体的な日にちを伝えてください。
希望日の理由も必ず伝えましょう。自分の都合ではなく、業務の引き継ぎなど職場の理由を伝えることが大切です。
これらメールでの連絡は、送信後、必ず電話もするようにしてください。メールがすぐに読まれるとは限らないためです。変更の連絡はできるだけ早く伝えたほうがよいため、電話口で担当者がまだメールを呼んでいない場合はそこで内容を伝えるようにしてください。
入社日を交渉する際の注意点
入社日の交渉には、いくつか注意したい点があります。入社日が決まっている場合の変更交渉はリスクが伴うという点です。また、内定後に変更したい場合は、できるだけ早めに交渉するようにしてください。
入社日を交渉する際の注意点を解説します。
入社日の変更交渉にはリスクが伴う
入社日が決まっている場合、変更交渉はリスクも伴うことを把握しておきましょう。まず、内定前に交渉する場合は、確実に入社できる他の候補者が優先的に採用されリスクがあります。
内定後に交渉する場合は、企業の指定する期日に入社できないのであれば、内定がなかったことになり、内定者からの辞退という扱いになります。
内定承諾は、入社日を含めた条件が企業から提示され、それらの条件すべてにOKを出すことです。内定者の都合で入社日に間に合わない場合は、提示された条件がNGであり、結果的に内定者の辞退として扱われます。
内定辞退の扱いにはならなくても、入社日の変更はよい印象を与えません。「スケジュールの管理がうまくできていない」というイメージを持たれることもあります。これから入社する企業にマイナスな印象を持たれるのは、できる限り避けたいところです。
在職しながら転職活動をする場合、内定が決まってからの退職手続きがスムーズにいかない可能性も考えておかなければなりません。退職に納得してもらえず、会社から強く引き留められる場合もあります。
そのようなことにならないよう、早めに退職届を出すなどの対応が必要です。企業にはその日に入社してくるという強い期待があります。これから長く働く企業だからこそ、その期待を裏切ることのないようにしなければなりません。
内定後の交渉はできるだけ早く
内定後にどうしてもやむを得ない事情で入社日を変更してもらわなければならないときは、できるだけ早めの対応が必要です。とくに、企業の希望日よりも1か月以上遅らせてほしい場合は、早急に交渉しなければなりません。
企業では決定した入社日を前提に、さまざまな準備を進めています。そのために事業計画を変更している可能性もあり、内定者が期日通りに入社できなければ損害が生じる場合もあるでしょう。
連絡が遅くなれば遅くなるほど、その可能性は高くなり、迷惑をかけることになります。連絡方法は、すぐに連絡がついて確実に伝えられる電話が最適です。直接話すことで、謝罪の気持ちや誠意も伝わりやすいでしょう。
メールの場合はすぐに開いてもらえるとは限らず、他のメールに埋もれてしまう可能性もあります。
担当者が不在ですぐに電話連絡をとれない場合には、まずメールで変更の連絡を入れておいて、「後日あらためての連絡をしたいため、都合のよい時間を教えてほしい」という内容を記載することをおすすめします。その上で電話連絡し、謝罪の気持ちを伝えましょう。
変更の理由を説明できるようにする
入社日の変更理由は、明確に伝えることが必要です。理由は個人の都合ではなく、業務上やむを得ないもので、正当性がなければなりません。
正当な理由は、一例として次のようなものがあげられます。
● 就業規則で退職までには最短で2か月の余裕が必要とされている
● 関わっているプロジェクトの完了が遅れている
● 後任者の手配に時間がかかっている
正当な理由であれば、企業のほうでもやむを得ないと判断し、事情を汲み取ってくれる可能性が高まります。
離職している場合、内定後はすぐに入社という流れになります。待ってもらえる期間も、内定から1か月程度が目安になるでしょう。家庭の事情などで入社日を交渉したい場合は事情を説明し、調整してもらうことになります。
交渉の記録は残しておく
入社日を変更する交渉のやり取りは、履歴を残すことが大切です。お互いの聞き違いや認識のズレにより、言った言わないのトラブルが起こるのを防ぐためです。
メールのやり取りであれば記録になりますが、電話の場合は口頭のやり取りだけであるため、万が一認識の相違があると困った事態になるかもしれません。
電話で決定した事項は、あとから挨拶の意味も込めて、日付と話した内容を簡潔にまとめたメールを送っておくとよいでしょう。
入社日の交渉は慎重に行うことが大切
転職活動を行う際は入社日について確認し、決まっている場合は、それに合わせたスケジュールを組むことが大切です。決まっていない場合でも、内定後、スムーズに入社できるよう、退職届は早めに出しておきましょう。
入社日があらかじめ決められていない場合、面接時や内定後に交渉することは可能です。
入社日が決まっているときの変更の交渉ができるかは、企業の事情や変更の程度により異なります。リスクも伴うことは、把握しておきましょう。
入社日の交渉が心配という方は、交渉に関するアドバイスを行ってくれる転職支援サービスの利用もおすすめです。
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