新卒一年で辞める方は少なくありませんが、早期退職をすると、転職で不利になる可能性が高いです。しかし、辞めたい理由によっては、転職したほうがよい場合があります。今回は、早期退職のリスクや、新卒一年で辞めたほうが転職に成功するためのポイントなどを解説します。
新卒一年で辞める割合は意外に多い
新卒一年で会社を退職する人は、案外少なくありません。
厚生労働省が2022年10月に公表した資料によると、2019年3月新規学卒就職者のうち、1年目で離職した割合は、高校卒が16.3%、大学卒が11.8%、短大卒が17.8%でした。
つまり、10人に1人以上の割合で新卒一年で辞めており、新卒一年で辞めるケースは珍しくないことがわかります。
とはいえ、新卒一年で会社を退職しても全く問題ないというわけではありません。 相応のリスクも存在するため、リスクを理解したうえで、退職するか否かを慎重に決める必要があります。
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します」
新卒一年で会社を辞めたいと思う主な理由3選
ここでは、新卒一年で会社を辞めたいと思う、代表的な理由を3つ紹介します。
● 仕事内容や配属のミスマッチ
● 労働条件への不満
● 労働環境への不満や悩み
新卒一年で会社を辞めたいと思った時、「自分には忍耐力がないのでは」「どの企業でもうまくいかないのでは」と自信がなくなってしまう方もいるでしょう。
しかし、多くの新卒が、ここで紹介するような理由で会社を辞めたいと感じているものです。
以下では、それぞれの理由について見ていきましょう。
1.仕事内容や配属のミスマッチ
入社前のイメージと入社後の実態にギャップがあり、仕事内容のミスマッチが原因で仕事を辞めたいと悩む新卒は多く存在します。
実際に人員配置がうまくいっていない場合もありますが、新卒一年目でよくあるのが、仕事に対して過度に期待してしまっているケースです。「仕事は楽しくやりがいがあるもの」というイメージで入社すると、理想と実際の乖離ゆえ、仕事が自分に合っていないと勘違いしてしまいがちです。
また、希望の部署に配属されず、仕事のモチベーションを失ってしまうケースもあります。
2.労働条件への不満
残業が多い、労働時間のわりに給与が低い、土日に休めない、などの労働条件に不満を抱えて、退職を決める新卒も少なくありません。
特に、給与の低さを理由に、転職を検討する新卒は多いです。実際に受け取るのは、額面の給与から所得税や社会保険料といった費用が差し引かれた金額であるため、新卒はギャップを感じてしまう傾向にあります。
みなし残業が採用されている場合は、残業時間が多いにもかかわらず、残業代を受け取れないことに不満を抱くこともあります。
3.労働環境への不満や悩み
人間関係や社風に不満があったり、ノルマの厳しさや周囲からのプレッシャーに苦しんだりと、労働環境が原因で退職に踏み切るケースもあります。
職場の雰囲気は、入社しないとわからないため、入社後にギャップを感じてしまう場合が多いです。
特に、新卒一年目という立場ゆえ、上司に相談するのをためらってしまうことがあります。相談できないまま、不満や悩みが積み重なり、辞めたいという気持ちにつながってしまいます。
新卒一年で退職すると転職が難しいとされる2つの理由
新卒1年目で辞めたいと思っても「転職が厳しい」「新卒一年で辞めるのは甘えだ」などと周囲から言われ、反対されることも多いでしょう。
実際、新卒一年で退職することには以下のようなリスクがあります。
● 転職時に熱意や忍耐力が足りないと思われやすい
● スキルや実績をつけるのが難しい
必ずしもそのとおりになるとは限りませんが、リスクを十分に理解したうえで、退職に踏み切ることが大切です。
ここでは、新卒一年で退職すると転職が難しいとされる2つの理由について解説します。
1.熱意や忍耐力が足りないと思われやすい
新卒一年で辞めたという事実が、転職活動時に「仕事への熱意が足りない」「忍耐力がない」などのマイナス評価につながる可能性は、ゼロではありません。熱意や忍耐力が不足していると判断されると、志望理由やキャリアビジョンなどをいくら説明しても、説得直がなくなってしまいます。
また、「残業が多かった」「人間関係がうまくいかなかった」などの感情的な理由で退職した場合は、ネガティブな印象を持たれがちです。退職理由が愚痴や不満のようになり、「将来を深く考えられない人物」「失敗を周囲の環境のせいにする人物」という印象につながってしまいます。
2.スキルや実績をアピールするのが難しい
新卒1年目でできる仕事には限度があり、転職面接でアピールできるようなスキルや実績を得られず、転職活動で失敗してしまうこともあります。
新卒入社後は、数ヶ月間研修をした後、雑務や基本的な業務からスタートするケースが一般的です。そのため、転職時にアピールできるような専門的なスキルや、実力を証明できるような実績がほとんどないまま、転職することになります。
中途採用では、新卒と違って即戦力が求められており、スキルや実績を聞かれることが多いです。新卒一年で辞めると、新卒とあまり変わらない状態で、実務経験豊富な採用候補者と戦う必要があります。そのため、転職時に不利になってしまいます。
新卒一年で退職しても問題ない4つのケース
上記のように、新卒一年での退職にはリスクがあります。
しかし、退職したいと思う理由によっては、退職を決めても問題ないケースがあります。
以下のケースでは、「まだ新卒一年目だから」といって我慢していると、ますます悪い状況に陥ってしまう可能性があるため注意が必要です。
● 労働環境によって体調に支障が出ている
● パワハラやセクハラなどに悩まされている
● 会社の経営に問題がある
● 違う業界・職種に挑戦したい
1.労働環境によって体調に支障が出ている
労働環境によって体調に支障が出ている場合は、自身の身を守るためにも、職場を変えましょう。
過重労働や周囲からの激しいプレッシャーなど、いわゆる「ブラック」と言われるような労働環境に悩んでいる方は少なくありません。
体調に異変を感じながら、我慢して働き続けても、体調がよくなることはないでしょう。むしろ体調が悪化し、精神疾患や脳・心臓疾患など、深刻な状況に陥ってしまう可能性もあります。
2.パワハラやセクハラなどに悩まされている
パワハラやセクハラなどのハラスメントに悩まされており、上司や社内の関係部署に相談しても対処してもらえない場合は、退職に踏み切っても問題ありません。
我慢し続けていると、精神を病んでしまうでしょう。
精神疾患は、回復まで時間がかかるものです。その間に休職してキャリアにブランクができてしまうと、転職時に不利になってしまう可能性もあります。
3.会社の経営に問題がある
「会社の財務状況が悪く、倒産しそう」「会社が法律に触れる行為をしている」というように、会社の経営に問題がある場合は、転職活動を進めましょう。
経営状況が悪い会社に在籍していると、給与未払いの問題に巻き込まれたり、自身が顧客を騙す行為に荷担してしまったりと、さまざまなリスクがあります。
安心して働ける職場を見つけ、転職しましょう。
4.違う業界・職種に挑戦したい
今やっている仕事と自分が本当にやりたい仕事が異なり、違う業界・職種に挑戦したいという場合は、早めにキャリアチェンジするべきです。
未経験の業界や職種に転職したい場合、若ければ若いほどポテンシャルを評価されて、採用につながりやすい傾向にあります。年齢が経ってしまうと、より実績や専門性が評価されるため、未経験職種への転職は困難です。
やりたいことが明確に定まっている場合は、早いうちにキャリアチェンジに向けて行動するのがおすすめです。
新卒一年で辞めるのを避けたほうがよい3つのケース
一方、以下のケースでは、新卒一年で辞めるのを避けたほうがよいと言えます。
● 人間関係だけに悩みを抱えている
● 仕事内容だけに不満がある
● 次にやりたいことが決まっていない
会社に対する一部の不満や、一時的な感情で退職すると、後悔してしまう可能性が高いです。 理想がすべて揃った職場は存在せず、不満を少なからず抱くのは仕方がないと認識しましょう。
ここでは、新卒一年で辞めるのを避けたほうがよい、3つのケースを解説します。
1.人間関係だけに悩みを抱えている
仕事内容や待遇などには不満がないものの、人間関係がうまくいかず悩んでいる場合は、すぐに退職するのではなく、まずは上司や人事部などに相談しましょう。
仲のよい人ばかりと一緒に仕事できるとは限りません。働いているうちに、その人の苦手な部分が出てくるというのも、よくあることです。
ハラスメントや深刻ないじめを受けている場合を除き、仕事内容や待遇に満足しているのであれば、人間関係だけを理由に辞めるのはもったいないと言えます。
上司や人事部などに、部署異動や人員配置の変更ができないか聞いてみることがおすすめです。
2.仕事内容だけに不満がある
仕事にやりがいを見出せない、自分に適性がない、など、仕事内容だけに不満を抱えて転職するのは避けましょう。
入社してすぐの段階で、仕事内容について評価するのは時期尚早です。
今仕事がつまらないと感じていても、将来任せてもらえる仕事が増えれば、やりがいを感じられる可能性があります。向いていないと思っていた仕事も、慣れれば上手にこなせるようになるかもしれません。
特に、人間関係や待遇などに不満がない場合は、退職しないほうが賢明です。転職してから、「前の職場環境がよかった」と後悔するケースも少なくありません。
仕事内容に不満がある場合は、仕事に対する向き合い方や考え方を変えたり、一度上司や人事部などに相談してみたりするとよいでしょう。
3.次にやりたいことが決まっていない
次にやりたいこと特にあるわけでもなく、勢いで退職してしまうのも望ましくありません。
目標ややりたいことが明確ではないまま転職活動を進めても、面接で説得力のある志望動機や自己PRを説明できず、失敗に終わる可能性が高いです。
また、一時的な感情で退職を決めると、「辞めなければよかった」と後悔するリスクがあります。会社を辞めることが目標となってしまい、転職活動に身が入らないこともあります。
次にやりたいことが明確になった状態で、転職に向けて動き出すことが大切です。
新卒一年で辞める前にやるべき2つのこと
新卒一年で辞めたいと思ったら、退職前に以下の2つを行いましょう。
● 本当に退職すべきか考える
● 退職前に転職活動を進める
まずは、退職して後悔しないかをよく検討してください。そのうえで退職すべきと判断したら、すぐに転職活動に取り組み、転職先が決まっている状態で退職できるようにしましょう。
ここでは、新卒一年で辞める前にやるべき2つのことを解説します。
1.本当に退職すべきか考える
まずは、本当に退職すべきなのか、転職して今の悩みは解決するのかなどを慎重に考えましょう。
会社を辞めたいと思っている理由を整理し、自身の思い込みや一時の感情だけで判断していないかを見つめ直すことが大切です。
職場環境が悪いと思い込んでいたものの、振り返ると自分に原因があり、自分の考え方や行動次第で状況を好転させられることもあります。
上司や人事担当者などにも相談し、よく考えたうえで転職に踏み切ることが必要です。
2.退職前に転職活動を進める
よく考えた結果、退職するべきだと判断した場合は、退職する前から転職活動を進めましょう。
退職後に転職活動を始めると、次の仕事が見つかるまで収入がなくなってしまいます。転職活動が思うように進まなかった場合、貯金を切り崩しながらの生活が続き、生活が厳しくなってしまうリスクもゼロではありません。
また、「早く就職しなければ」という焦りから、よく考えずに転職先を選んでしまい、後悔する可能性もあります。
精神的にも金銭的にも余裕のある状態で転職活動を進められるよう、退職前から転職に向けて行動することが重要です。
新卒一年で辞めたほうが転職に成功するための6つのポイント
新卒一年での転職は不利と言われることが多いですが、以下の6つのポイントを意識することで、成功できる確率が高まります。
● 第二新卒歓迎の求人に応募する
● ポジティブで説得力のある退職理由を伝える
● 退職理由ではすべてを会社のせいにしない
● 十分な企業研究を行う
● キャリアプランを明確化する
● キャリアエージェントのサポートを受ける
ここでは、新卒一年で辞めたほうが転職に成功するための6つのポイントを解説します。
1.第二新卒歓迎の求人に応募する
新卒一年で辞める場合は、第二新卒歓迎の求人に応募するとよいです。
第二新卒に明確な定義はありませんが、基本的には新卒で入社してから3年以内の方を指します。新卒一年で辞めて転職する場合は、第二新卒に該当するため、第二新卒歓迎の求人に応募可能です。
第二新卒歓迎の求人は、新卒と同じようにポテンシャルが高く評価されやすいのが特徴です。そのため、面接でアピールできるようなスキルや実績がない場合でも、熱意やポテンシャルが伝われば、転職活動に成功する可能性が期待できます。
2.ポジティブで説得力のある退職理由を伝える
転職時の面接で退職理由を聞かれた際は、ポジティブで説得力のある理由を伝えましょう。
転職時は、「なぜ退職したか」を聞かれるケースがほとんどです。その際に、「仕事が合わなかった」「人間関係に不満があった」などのネガティブな退職理由を伝えても、自身のアピールにはつながりません。
面接官に納得してもらうためには、以下のようにポジティブかつ具体的な退職理由を伝えることが大切です。
● 「仕事を進めるうちに、〇〇に挑戦したいという夢が見つかった」
● 「自身が思い描くキャリアプランから、転職して〇〇のような会社にすべきだと判断した」
3.退職理由ではすべてを会社のせいにしない
会社が原因で退職する場合であっても、退職理由を伝える際は、すべてを会社のせいにしないようにしましょう。
会社の財務状況や法律違反、ハラスメント問題といった会社の問題は、自身ではどうしようもできない要素です。しかし、言い方次第では「他責思考の持ち主」と思われてしまう可能性もあります。「少しでも不満を抱いたらまたすぐに辞めるのでは」という懸念を抱かれてしまうリスクも否めません。
「会社の財務状況をきちんと確認しないまま入社した自分にも非がある」というように、言い方を工夫することがポイントです。
4.十分な企業研究を行う
転職活動を成功させるためには、企業研究を入念に行うことが欠かせません。
会社のことをよく理解していない人物を採用しようと思う企業はないでしょう。
企業研究を徹底することで、その会社に入りたいという熱意を伝えられます。また、事業内容や経営方針などを絡めて、志望動機や自己PRを作成できるため、説得力のあるアピールにつながるのもメリットです。
企業研究では、以下の情報について調べておきましょう。
● 事業内容
● 企業理念・経営方針
● 従業員数
● 強み・競合との差別化ポイント
● 業界内でのポジション
● 社風
● 今後の経営計画・事業展開
● そのほか、給与や福利厚生など、調べればわかるような基本情報
実際にその会社で働いている社員から話を聞くことも大切です。
5.キャリアプランを明確化する
キャリアプランを明確化することで、説得力のある志望動機や自己PRを作成できます。
新卒一年目で辞める場合、「またすぐに辞めてしまうのでは」と思われてしまうことは避けられません。「次は長く働く」という意志を伝えても、説得力がなく信じてもらえない可能性が高いです。
面接官に刺さるような志望動機や自己PRにつなげるためには、キャリアプランを明確化し、キャリアプランを実現するために転職活動を行っていることをアピールしましょう。
6.キャリアエージェントのサポートを受ける
キャリアエージェントのサポートを受けることで、転職活動をスムーズに進められます。
キャリアエージェントは、自身に合った求人を紹介してくれたり、志望動機の作成や面接対策などをサポートしてくれたりする、心強い存在です。キャリアのプロとして、さまざまなアドバイスをしてくれます。
転職で不利になると言われることも多い早期退職の際は、キャリアエージェントを活用することがおすすめです。
新卒一年で辞める際はリスクと将来設計についてよく考える
新卒一年で辞めることや、辞めたいと考えることは、決して珍しいことではありません。辞めたい理由によっては、自分の身を守ったり、目標を実現したりするために、新卒一年で転職するほうが望ましい場合もあります。
しかし、新卒一年で辞めることには一定のリスクがあり、転職に苦労するリスクも否めません。早期退職のデメリットを認識し、将来設計についてよく考えたうえで、退職に踏み切りましょう。
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