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インタビュー

「このサービスが必要ない世の中が理想」セクシャルマイノリティ専門人材紹介会社/木島瑞歩さんインタビュー

#人材紹介 #セクシャルマイノリティ #LGBT #LGBTフレンドリー企業

昨今、SNSやメディアで「LGBT」という言葉を目にする機会が増えました。LGBTとは、セクシャルマイノリティ(性的少数者)を表す言葉の一つ。「LGBTQIA+」という、さらに多様なセクシャリティを表す言葉もあります。

以前に比べ、性の多様性が広く認知されつつあると感じますが、未だに誤解や偏見も少なくないのが現状です。セクシャルマイノリティの人が周囲の理解を得られず、生きづらさを感じるのは働く上でも例外ではないそうです。

木島瑞歩さんはそんな人たちのために、セクシャルマイノリティ専門の人材紹介会社を立ち上げたばかり。ここに至った経緯や、今後の目標を語っていただきました。

■プロフィール
木島 瑞歩(きじま みずほ)
1990年1月12日生まれ、東京都出身。
中学、高校はバスケの強豪校で厳しい環境の中を過ごす。
大学卒業後は約2年間、警察官として刑事課にて勤務。
美容クリニック専門の人材紹介会社へ転職、キャリアアドバイザーとして4年半の勤務後、大手美容クリニックの人事課に採用責任者として入社。
退職後、2021年6月にセクシャルマイノリティ専門の人材紹介会社「株式会社toiro」を設立。
現在はセクシャルマイノリティの理解促進に向け、人材紹介をはじめ幅広いサービス展開を予定。

人の人生の重要な場面に関わりたい

木島さんのキャリアは警察官からのスタートということで、そこから人材業界に足を踏み入れたきっかけや経緯をまずはお聞きしたいと思います。

警察官として刑事課で勤務していたのですが、かなり激務だったんです。残業が多く、警察署に泊まり込んだりしていて、家には月に1〜2回程度しか帰れないほどでした。それで体調を崩してしまったのが退職のきっかけです。

警察官は事件の被害者や、被疑者といった、人生にそう何度もないような場面に立ち会う機会が多い仕事です。心に傷を負うなど、人のネガティブな意味での転機に接することが多くて。仕事で関わった人に感謝されることもありましたし、良くないことばかりではなかったんですけどね。

人材紹介も人の人生の転機に立ち会う仕事なので、誰かの前向きなターニングポイントに関わりたいという考えで人材業界に入りました。入社したのが美容クリニックを扱う会社だったのは、警察官時代に作業着を着ていたり、ノーメイクでいることが日常だったので、その反動ですね(笑)。

よく、刑事ドラマでは刑事がスーツを着ていたりしますが、実際は現場が荒れていることも少なくないので、動きやすさ重視の作業着を着ていることが多いんです。おしゃれや美容とは程遠かったので、その知識を深めたいなとも思って。

なんで性別は男女しかないんだろう

人材紹介会社でキャリアアドバイザーを務めて、その後は大手美容クリニックの人事に転職されたんですよね。そこから起業されていますが、セクシャルマイノリティに関心を持ったのには、どこかできっかけがあったんでしょうか。

人材紹介会社にいる時に起業を考え始めたのですが、そこから美容クリニックの人事に転職したのは、人材を紹介する側とされる側の両方を経験しようという考えがあって。人事としての転職は起業準備の一環で、1年半勤めてから退職し、今年の6月に会社を設立しました。

キャリアアドバイザーをしている時に思ったのが、美容クリニックの転職って、看護師さんのような有資格者だと結構受かりやすいんですよね。ご紹介すれば受かるというような。人材紹介会社を利用しなくても、看護師さんがダイレクトにクリニックに応募しても受かるんじゃないかなという…。それで自分の存在価値を考えたというか、徐々にモヤっとした気持ちを抱えるようになったんです。ただ間に入って、求人を紹介しているだけのように思えて。

そんなことを感じている時に、パンテーンのCMで衝撃を受けたんですよ。トランスジェンダーの方が就活する上で、どんなことに悩んだかについてフィーチャーしたCMで。CMをきっかけに、体は男性で性自認は女性だという方が長い髪で面接に行って帰らされたこととか、履歴書の性別欄で男と女のどちらにマルをつけるかで悩む人がいることを知って。面接に行って、性のことをカミングアウトしただけで帰らされる人もいるとか、ちょっと衝撃で。

人材紹介って、そういう困っている人のためにあるサービスじゃないといけないんじゃないかなと思って。それでセクシャルマイノリティ専門の人材紹介をやってみたいという思いが芽生えてきたというのが現在この事業を行っている理由の一つです。

セクシャルマイノリティに向けた人材サービスを行う企業は私が知る限りでは日本では3社ほどしかなくて、しかも企業の中でメインの事業ではなかったりする会社もあるので、なら私がやろうという思いもありました。

あとは、以前から疑問に思っていたことがあって。例えば髪の色や言語・国籍などには種類や選択肢があるのに、なんで性別は男女しかないんだろうって、ずっと違和感があったんですよね。男性か女性かだけのカテゴライズではなくて、もっと色んな性の多様性があることが本来の正しいあり方なんじゃないかなっていうのが自分の考えにあったので。そういった考えから、社名の由来は“十人十色”から取って「株式会社toiro」にしました。

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当事者の声を届ける動きも

2021年6月に起業したばかりということですが、現在はどのような活動をされているんですか?

少しずつですが、人材紹介サービスをスタートしています。現在は主に「LGBTフレンドリー企業」と呼ばれる、セクシャルマイノリティに理解を示す企業を扱っています。

求職者の登録用簡易サイトがあるのですが、そこで登録していただいた方と電話面談、その後、コロナ禍なのでzoomでのオンライン面談を行い、ヒアリングをしています。希望職種などをお伺いして、求職者と企業の間に入って、ご入職までのサポートなどを行います。

もう一つ進めているのが、「LGBTQフォトプロジェクト」というものです。こちらはファッション誌「VOGUE」の表紙や有名ブランドの広告撮影も手掛ける著名な写真家の方の協力のもと、セクシャルマイノリティの方の自分らしい写真を撮影するプロジェクトです。

撮影した写真は弊社のWEBサイトやSNS、写真集などの形で多くの方にご覧いただいて、写真を通してセクシャルマイノリティの声を聞いていただくきっかけになって欲しいと考えています。そのプロジェクトの資金を募るクラウドファンディングも行っていますので、ぜひ多くの方にお力を貸していただけると嬉しいです。

日本では現在セクシャルマイノリティは10人に1人の割合だと言われています。残りの9人はセクシャルマジョリティで、ストレートや非当事者という呼び方もあります。非当事者のような呼び方には嫌悪感を持つ方もいらっしゃるんですが。

人材紹介は狭い世界というか、当事者の内輪だけで完結してしまう閉じたビジネスです。輪の外にいる人たち、非当事者の人にこそ知って欲しい、理解を広めたいという思いがあるので、人材紹介と、先ほどお話ししたようなプロジェクトの両輪で動いていきたいと思っています。

今後社員を採用するにあたっても、まずはセクシャルマイノリティの方を採用したいです。もちろんそうでない方にも入っていただきたいのですが、セクシャルマイノリティの採用を支援する会社として、まずは弊社がその採用を行いたいですね。

性の多様性に関する理解を広めたいという理念があるので、社風も多様性を認める自由なものであるべきだと思っています。私自身もネイルをしていますし、社員になっていただく方には髪色や服装もある程度自由にしていただいていいという考えです。最低限の清潔感があれば大丈夫です。

間違った理解や過大評価も多い

人材紹介事業と、当事者の方たちの声を届けるプロジェクト、2つの軸で動き出されているんですね。まずは知ってもらうところからということですが、現状はまだ偏見も少なくなく、言葉にするより遥かに大変なのではないかと感じました。

おっしゃる通り、すごく難しくて大変なことだと思います。人材紹介においては、企業のトップの方が50代くらいの方だったり、世代的にも偏見を持つ方が多かったりします。ネガティブな見方をしている方もいますし、テレビなどのイメージで“ゲイの方はクリエイティブ”という認識をしている人もいたり。

セクシャルマイノリティでもそうでなくても色んな人がいることには変わりがないのに、間違った理解や過大評価をされていることも少なくありません。同じ性別、性自認でも性格や趣味嗜好がそれぞれ違うのと同じことなんですけどね。

また、企業のトップは理解を示しているけど、現場の方までその考えが浸透していないこともよくあって。働く上で普段接するのは幹部などではなく現場の方なので、そこで理解してもらえなければ意味がないんですよ。

先ほどもお話しした「LGBTフレンドリー企業」を名乗っている企業がありますが、中にはイメージ戦略の一環なだけで、全く実態が伴っていないこともあったりします。

弊社としては、例えばSNSで多くのフォロワーを持つ、セクシャルマイノリティのインフルエンサーの影響力をお借りすることで理解を促していくなど、様々な取り組みで現状を変えていきたいですね。

誰もが普通に生活できる世の中に

大変な取り組みがまだ始まったばかりですが、個人的にもこれからどうなっていくのか楽しみです。では最後に、今後の目標についてお聞かせください。

まだ始まったところなので、人材紹介においてこれから扱う業種や職種を幅広く、オールマイティにご紹介できるようにしていきたいというのが一つありますね。

あとは先ほどもお話ししたように、まずは弊社がセクシャルマイノリティの方を積極的に採用したいと思いますが、そうすることで当事者の目線で求職者に寄り添えるようになっていきたいという思いもあります。ただ、代表である私が非当事者であるということにも意味があると思っていて。

当事者の方たちが自身のセクシャリティについて赤裸々にカミングアウトしながらでないと、理解が進まない、そういったところにもすごく違和感を感じていて。普通はそんな個人的なことを知らない人に話さないじゃないですか。そういったところにも違和感があるんですよね。

それに対して非当事者は見て見ぬふりをするような…“セクシャルマイノリティの人がなんかやってるな”みたいな。響くのは同じ当事者の立場の人だったりして。だからこそ、非当事者の私にできることもあるのかなと。“いや、私たちと同じ普通の人だよ”ということを、非当事者から非当事者に訴えかけることも必要なのかなとも思います。

また、ゆくゆくは不動産事業も始めたいと思っています。女性同士、男性同士のカップルが部屋を借りる時に審査が下りなかったりするんですよ。人材紹介を基盤にしつつ、住居に関してもサポートできるようにしたいです。

まず3年以内には人材紹介の基盤をしっかりと作って、転職する際に弊社のサービスを思い浮かべてもらえるようにというのが当面の目標です。

そして10年後には…立ち上げたばかりですし、こんなことを言うと誤解されるかもしれないですが、弊社のようなサービスが全部なくなっていたらいいなと。それは他の事業をしたいとかではなくて、セクシャルマイノリティに特化した人材紹介会社がなくても、普通に求職者の方が自分で応募して採用されるようになったりとか。不動産も普通に契約できるような世の中になっていったらいいなと。

そのために、今進めていることのほかにも、例えばどこかお店を貸し切ってセクシャルマイノリティの求職者と企業の人事の方が実際に話すことで理解を深めるイベントを行うなど、様々なアプローチを試行錯誤していきたいです。

木島瑞歩さんのリンク集
クラウドファンディング:https://camp-fire.jp/projects/view/442372
公式Twitter:木島瑞歩@toiro

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Written by

トヨダヒロミ

トヨダヒロミ

大阪府出身。雑誌や広告を制作する編集プロダクションに約7年勤務したのち、フリーライターに。インフルエンサーなどの新しい肩書きや働き方に関心を寄せている。